東京電力福島第1原発で復旧作業にあたっている東電社員らの休憩・宿泊場所を確保するため、独立行政法人・航海訓練所の練習船「海王丸」が21日、福島県いわき市の小名浜港に接岸した。同日夕、乗船する作業員らのうち2人が毎日新聞の取材に応じ「誠心誠意、復旧に努める。前向きに頑張る」と語った。
海王丸は20日午前10時に東京港を出港し、21日午前9時ごろ小名浜港に接岸した。定員は乗組員を除き128人で、作業員は食事や入浴をして過ごす。27日まで停泊する予定。
21日午後4時20分ごろから、同原発で除染を受けた作業員らが続々到着。被ばく線量を測るスクリーニング検査を船の前で受けた後、次々と乗船した。
地震発生時に原発敷地内の事務本館にいたという男性は、上下とも灰色のスエット姿。「現場の士気は高かった。(発電所の)所長が『頑張ろう』とよく声を掛けてくれた。電源が通った時や給水車が来た時には、大きな拍手がわいた」と話した。
男性によると、地震で事務本館室内には大きな損傷はなかったが、津波で各施設の被害が広がったという。建物に居続ける生活が続いたが「国を守ろう、地域を守ろうとの思いだった。協力企業の皆さんも手伝ってくれた」という。「皆様には本当に申し訳ない。このような船まで用意していただき、ありがとうございます」と頭を下げた。
オレンジ色の帽子をかぶり送迎用のワゴン車から降りた男性はビニール袋に入れた荷物を抱え、やや疲れた表情ながらはっきりした口調で取材に答えた。男性は、作業の拠点となる原発敷地内の免震重要棟で支援業務にあたり、放射線量を記録するため、防護服を着て外に20~30分出る作業もした。3度の水素爆発については「振動はありましたが、重要棟では影響はありませんでした」と話し、「誠心誠意、復旧に努めています。この状況をできるだけ収めるため、これからも前向きに頑張ります」と語った。
作業員は海王丸で1泊し、22日朝から作業に戻る予定。海王丸では今後、作業員が交代で休むほか、避難所にいる市民への開放も検討しているという。【森禎行、松本惇】
毎日新聞 2011年3月21日 19時49分(最終更新 3月21日 20時11分)