東日本大震災の影響で、冷却機能を失い大量の放射性物質の流出危機にある福島第1原発への放水のため、三重県四日市市の建設会社「中央建設」が国内に3台しかないという“新兵器”の提供を国に申し入れたが、政府および東京電力の了承を得られず、“待機”を余儀なくされていることが20日、わかった。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の際にも活躍したポンプ車で、被ばくを覚悟の上で、名乗りを上げた同社は、反応の遅さにいらだちを隠せないでいる。
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「中央建設」が提供を決意したのは、同社が保有するドイツ・プツマイスター社製のポンプ車「M52 Multi‐Z」。トレーラータイプで、折りたたみ式の車載アームは最長52メートルにもなる。国内にあるポンプ車の中では最長のもので、国内には3台しかなく、そのうち2台を同社が保有している。
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故封鎖の際にも使用された重機と同型で、毎時約150トンの水を投入可能。機械から約100メートル離れた場所から遠隔操作できるほか、通常でも7〜10時間の連続運転を行っており、今回の放水作業には大きな効果を発揮する可能性が高いという。
同社では、17日に行われた、自衛隊ヘリコプターによる福島原発3号機への水投下の映像を目撃。「あれを見ていたら、効果は薄いと思った。うちのポンプ車を使えばもっと効率よく水を入れられると思った」と、被災地への提供を決意。同日中に、長谷川員典社長が速やかに東京電力に連絡した。
だが、東京電力にはすげなく“門前払い”された。やむなく同日夜、地元選出の国会議員を通じ、政府に提供を申し入れた。だが、政府からもいまだ返答はなく、せっかくの善意と“即戦力”が宙に浮いた形になっている。
作業に必要となる熟練のオペレーターも、被ばくの可能性もある中で、2人が「覚悟はできている」と了承。ポンプ車の可動テストも終え、さらには全国の同業者からも協力は惜しまないという電話も寄せられている。提供側の準備は万端だが、申し出から2日たっても肝心の出動許可が下りない状況。同社では「このポンプ車なら放水作業に百パーセント役に立つと思っている。こちらは決死の覚悟を決めているのに、2日も…。モチベーションが保てるかどうか」と、いらだちを隠せない様子だった。
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