2011年4月10日5時41分
東日本大震災による土砂崩れと津波のため、宮城県気仙沼市の金鉱山の廃鉱から、有害物質のヒ素を含む大量の土砂が住宅地に流れ出し、一部の住民が避難していることが9日、わかった。市の調べで、付近の井戸水や沢から環境基準の最大24倍のヒ素が検出された。
鉱山側は「土砂のヒ素含有量は微量で、直接口に含まない限り健康に被害は生じない」としている。同日現在、住民から健康被害の訴えはないという。
土砂崩れがあったのは同市本吉町の大谷(おおや)鉱山の堆積(たいせき)場。親会社のJX日鉱日石金属によると、鉱石から金を採取した時、ヒ素を含む鉱滓(こうさい)と呼ばれる土砂が出る。その堆積場が3月11日の地震で液状化。土砂41万立方メートルのうち、5万立方メートルが敷地外に流出して道路を塞いだ。
付近は内陸約2キロにあるが川伝いに津波が押し寄せ、土砂が住宅地や田畑など約5ヘクタールに広がり、赤牛漁港付近の海まで流れているのが確認されたという。
ヒ素は鉱滓1キロあたり約200ミリグラム含まれるという。気仙沼市本吉総合支所が高地区(約180戸)にある井戸や沢6カ所の水を調べたところ3カ所で基準値を超え、最大で24倍に当たる1リットルあたり0.24ミリグラムが検出された。ヒ素は5〜50ミリグラムを摂取すると中毒症状を起こすという。
同社は3月下旬、鉱山保安法に基づき、経済産業省関東東北産業保安監督部東北支部に報告。近く土砂を回収し、13日に住民説明会を開く予定。
大谷鉱山は平泉の黄金文化の源泉だったと伝えられる。1905年に試掘を始め、最盛期を迎えた戦前に年間約1トンの金を産出。76年に資源枯渇で閉山した。(上田学)