2011年4月12日1時44分
東日本大震災で岩手、宮城、福島県で、標高5メートル以下に住む人口の4.7%が死亡や安否不明になったことが、名古屋大の推計で分かった。西日本で巨大地震で被害が予想される地域では、5メートル以下の人口が412万人と推計され、従来の想定を超える被害の恐れがあり、防災対策の見直しが必要になりそうだ。
名大の福和伸夫教授(地震防災)や脇田久美子技術補佐員らは、津波で浸水した地域の多くが標高5メートル以下の地域と重なることから、国勢調査に基づくデータなどから5メートル以下に住む人口を調べた。
岩手、宮城、福島の3県で標高5メートル以下の人口は計51万人。岩手県では標高5メートル以下の人口の28%が死亡や安否不明になった。宮城が3.5%、福島が2.6%だった。被害率の違いは、津波の高さや避難状況が影響したと考えられる。
研究チームは、今世紀前半にも起きると想定される東海、東南海、南海の3地震が連動する巨大地震に見舞われる地域の標高別の人口も推計した。津波被害が大きいと予想される静岡、愛知、三重、和歌山、徳島、高知、宮崎の7県で標高5メートル以下に住むのは計412万人で、東北3県の8倍だった。
東北3県で5メートル以下に住む人口は全体の9%に対して、静岡などの7県では平均で25%、徳島県では47%、和歌山県では34%、愛知県では27%になる。
東海、東南海、南海地震で、標高5メートル以下に住む人が東日本大震災と同じ割合で被害に遭うとすれば、被害者は19万人になる計算だ。被害率が福島県ぐらいなら11万人、岩手県ぐらいだと115万人に上る。しかし、国の防災対策を作る基礎資料となる被害想定では、最大でも死者は約2万8千人となっている。
福和教授は「一人ひとりが自分の住む場所の特性を考え、転居の際はより安全な場所を選ぶことが大切。その積み重ねで、10年単位の時間が経てば、より安全な国土になるはずだ」と話している。(長野剛)