九州電力は、九州電力玄海原子力発電所2号機(加圧水型軽水炉、出力55・9万キロワット)について、30年以上運転するのに必要な保安規定の変更認可を国に申請した。1号機は既に運転開始から35年目に入り、日本原子力発電敦賀原発1号機は14日に国内初の40年が過ぎるなど、全国では54基のうち18基が30年以上運転する「高齢時代」に入っている。国や電力会社は、高経年化技術評価や長期保守管理方針をまとめ安全性を強調するが、長期間の運転で原子炉容器や配管内の劣化などを懸念する声もある。
「原発には基本的に寿命という概念はない。施設の安全性を評価するための基準として、国が30年や60年の期限を設定している」。経済産業省原子力安全・保安院高経年化対策室は、30~40年とされてきた「耐用年数」の考え方を否定した。
国は1996年、「高経年化に関する基本的な考え方」をまとめ、長期運転を容認。運転開始後28~29年の間に、60年間の運転を仮定した機器や設備の高経年化技術評価と、今後10年間で実施する特別なメンテナンスを盛り込んだ長期保守管理方針を提出させ、約半年かけて審査する。81年3月30日に運転開始した玄海2号機は、この手続きに入った。
認可段階で60年の運転が決まるのではなく、あくまで評価の基準で、何年運転するかは電力会社の経営判断になる。同対策室は「60年は工学的に無理のない余裕を持った数字。コンクリートは100年以上大丈夫とのデータもあり、評価は十分できる」と安全性に自信を見せる。
ただ原子炉内は、燃料の核分裂で中性子線が当たっており、金属部分がもろくなるほか、高温・高圧の水蒸気が流れている配管では内部がすり減っていく減肉現象が起こる。関西電力美浜原子力発電所3号機では2004年8月、27年以上未点検だった配管がこの現象で破損し、11人の死傷者を出す大惨事となった。
金属材料学が専門の井野博満・東京大学名誉教授は「原子炉容器は交換できない上、大規模なプラントでは点検できない場所もある。見落としでもあれば大事故の可能性もあり、延命すべきではない」と指摘。さらに、国が専門家らの意見を聞く高経年化技術評価ワーキンググループが、各社の安全技術の〝機密〟を論議することなどを理由に非公開となっており、「透明性が確保されていない」と批判する。
玄海1、2号機は01年度までに、蒸気発生器や原子炉容器の上ぶたなど主要設備を交換済みで、玄海町の岸本英雄町長は「安全面の不安はない」と話す。一方で、「運転は長くても40年程度と思っている。その後をどうするのか、九州電力が見通しを示す時期にきている」との認識を示す。
【写真】30年を超える運転の手続きに入った玄海原子力発電所2号機(左の筒型の建物)=東松浦郡玄海町
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