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原子炉は、あなたのすぐ隣にある! −  純丘 曜彰

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じつは原子炉は、東京や大阪のド真ん中にもある。東大阪、羽田空港の向かいの埋め立て地、関空の内陸部、三浦半島の武山駐屯地の隣、そして新百合ヶ丘とたまプラーザの間。これらは「研究用原子炉」と呼ばれるもので、電力会社の原子力発電所のように、わざわざ大仰に安全性を世間に宣伝したりしないからかえって目立たないが、なにかあればあまりに住宅地に近く、まずいのはまずい。また、廃炉した、解体した、といっても、実際は汚染した解体廃棄物がそこでそのまま管理されていたりする。近畿大学で運転中の研究用原子炉UTR−KINKIは、潔いというか、腹が据わっているというか、東大阪市小若江3−4−1、町中の本部キャンパス、附属幼稚園と南グラウンドの間の区画にある。出力わずか1W。とはいえ、原子炉は原子炉。それに古い。なにも上町断層のあるこんなところでやらんでも、と、シロウト目には思われるのだが。

新百合ヶ丘とたまプラーザの間、美しが丘とすすき野に隣接する川崎市麻生区王禅寺971と1022の山の上に、武蔵工業大学(現東京都市大学)のMITRR、100kWと、日立のHTR、100kWが並んでいる。武蔵工大は、1989年年末に漏水事故を起こし、以後運転できず、2003年にようやく廃炉決定。中身は空ながら、汚染した建物の解体はまだ先のこと。隣の日立も2006年に廃炉を決め、主要施設は解体を終え、さらに将来的には更地に戻す、というものの、現状は解体廃棄物のドラム缶を抱え込んでいる。

三浦半島の武山駐屯地の隣、横須賀市長坂2−5−1にある立教大学のRURも100kW。これも2002年に廃炉が決まったが、片づけに手間取っている。そのうえその途中で、あるはずのない放射性物質が見つかるという、これまでの管理の杜撰さも発覚。

大阪の貝塚市と泉佐野市の間、泉南郡熊取町朝代西2丁目にある京都大学の原子炉は、りんくうタウンからわずか数キロ。そもそも京大の原子炉が大阪にあること自体、東電の福島原発のようだ。臨界実験装置KUCA短時間1kWはともかく、KUR5000kWは、研究用にしてはでかい。だいいち、ここは巨大な中央構造線断層帯の上。そのくせ、マグニチュード7.8、震度6しか想定していないとか。今年の5月まで定期検査で運転を停止しているが、燃料はたっぷりあり、当分廃炉する気もないらしい。

羽田空港の向かい側、アクアラインの入り口の川崎市川崎区浮島町4−1(旧末広町)の東芝原子力技術研究所はTTR−1、100kWと臨界実験装置NCA、最大200Wを持っている。TTR−1は2001年に廃炉し、主要施設は解体済み。ここが恐ろしいのは、埋め立て地であるうえに、周囲が東燃ゼネラル石油の巨大コンビナートだということ。先の千葉県市原市のコスモ石油コンビナートの大火災のようなことになったら、爆発炎上の巻き添えになるのは必至だろう。

これらの原子炉が悪いのではない。これらが作られた1960年代には周囲にはたいした問題もなかったのだろう。また、これまでそれなりに物理学や医学などの研究にも貢献してきた。しかし、小とはいえ、放射性物質を扱っている。実験をやる以上、チェルノブイリ同様、仮設外の、予想もしない結果が出てくることもありうる。地震などで被災するかもしれない。そのうえ、ひどい老朽化だ。時代も変わり、現に周囲にはあまりに多くの人々が暮らしている。いまさら予算が無いなどと言わず、自己責任で、きちんとした廃炉解体アジェンダ(工程表)を提示し実行することこそ、研究者たちの責務だ。
(純丘 曜彰 教授博士 大阪芸術大学・哲学)

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