
韓国の原発
韓国第1号の原発は釜山市東部の古里(コリ)原発で、1978年に運転開始。米国の技術を導入して開発を進め、現在21基が稼働、7基が建設中。釜山、慶州など東南部に集中している。2010年末の総発電量に占める原発の割合は34%。政府は30年に38―39基体制にし、発電比率を59%に引き上げる方針。
(2011年4月10日掲載)
韓国の原発輸出 暗雲 福島事故で導入国に慎重論 政権強気 反発の声も
原発を重要な「輸出産業」と位置付け、李明博(イミョンバク)大統領を先頭に世界に売り込みを掛ける韓国。しかし、東日本大震災に伴う福島第1原発事故で、原発の安全に対する信頼は一気に崩壊。原発導入に慎重になる国が出始めており、韓国の原発輸出政策も岐路に立たされつつある。 (ソウル神屋由紀子)
■大統領自ら攻勢
「韓国製原発は安全性、効率性で最高の性能を持っている。韓国企業が最高レベルの原発をアラブ首長国連邦(UAE)に建設する」
東日本大震災から3日後の3月14日。李大統領は自ら主導して受注を勝ち取ったUAEの原子力発電所の起工式で、誇らしげにあいさつした。悲願だった海外での原発建設の模様は、韓国にも生中継で伝えられた。
韓国電力公社のほか、李大統領がかつて率いた現代建設などが企業連合を組み、日米連合やフランスに競り勝った大型案件。大統領はUAE首脳に6回に及ぶ電話会談で攻勢を掛け、建設費約200億ドル(約1兆7千億円)に上る原発4基の受注をつかんだ。韓国政府によると、運営費、廃棄物処理費などを含めた受注総額は約400億ドルに及ぶという。
■目標は海外80基
原子力関連産業を「自動車、半導体、造船に続く最も有望な次世代輸出分野」と位置付ける韓国は昨年1月、「原子力発電輸出産業化戦略」を策定。2030年までに80基輸出の目標を掲げ、海外原発のメンテナンス市場にも進出することで「原発三大先進国」を目指すと宣言した。
韓国の“売り”は「高稼働率、短い建設期間、コスト安」だ。昨年の稼働率は91%で世界首位。韓国は原発をほぼ稼働させた状態で点検する手法を取っており、ほぼ年1度の頻度で原発を停止させて点検を義務付けてきた日本の68%に差をつける。
■政府内から弱音
「フランスならともかく、実績ゼロの韓国に負けるなんて」。UAE案件で日本勢を歯がみさせた韓国だが、福島事故後の受注には早くも暗雲が漂い始めている。
大震災後も「韓国は安価なエネルギー供給により大規模な装置産業を基盤に生き抜いていく国。原発をあきらめるのは難しい」(崔重卿(チェジュンギョン)知識経財相)と強調する政府に対し、最大野党・民主党の孫鶴圭(ソンハクキュ)代表は「原発を基本としたエネルギー政策は抜本的に検討すべきだ」と反発を強める。
釜山地方弁護士会は、30年の寿命を延長して稼働している韓国初の古里原発(釜山市)の運転中止を求めて仮処分を申請する方針を表明するなど、原発推進政策に異議を唱える動きも出てきた。
UAEに続く案件と注目されたヨルダンとの交渉は不成立。日本との受注競争となったトルコも、震災発生後に隣国ギリシャから計画中止を迫られている。
経済成長に伴って電力需要が増す新興国を中心に、なお原発需要は高いとみる韓国政府。だが、政府内からも「想像を絶する事故だけに、今後影響がないはずはないだろう」と弱音も漏れている。
