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東日本大震災に思う

2011年4月11日

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 先月、東日本の広い範囲を大地震が襲いました。地震が多い日本では、鎌倉時代に書かれた随筆『方丈記』にもその記述が出てきます。様々な天災を体験した著者の鴨長明は「恐れのなかに恐るべかりけるは、ただ地震なりけり」と表現しています。今回の震災の被害を目の当たりにして、国民は、日本が巨大な断層の上にある島国だということを改めて認識したと思います。

 さて、皆さんに関心をもってもらいたいことがあります。巨大地震と、地震に伴う津波により、死者が2万人を超すかもしれないという推測が世界中に報道されました。すると、横須賀基地や佐世保基地などから米軍が救援のため出動しました。韓国、ニュージーランド、シンガポール、ドイツ、中国、ロシアなどの国も次々に支援を申し出て、救援チームや物資を日本に送りました。

 これら、日本に支援を申し出た国の中には、資源の奪い合いなどから日本とは険悪な関係にある中国、ロシアも含まれていたのです。仮想敵国とさえ考えられていた国々です。人命の大切さを第一に、複雑な国家関係を超越した平和的活動でした。

 今回の件で私は、10年前に東京のJR新大久保駅で起きた人身事故を思い出しました。線路に転落した日本人男性を救うため、見ず知らずの、日本人カメラマンのほか韓国人留学生がレールに飛び降りましたが、間に合いませんでした。近づいてきた列車により、全員が命を落とした痛ましい事故でした。救助に飛び降りた2人の行動は犠牲愛の象徴だと思います。

 異国人や見知らぬ人のために行った救済は、本当の「愛の行動」と言えましょう。今回の震災で、こうした行動をできる国が多いことに感銘を受けました。

 「愛の行動」の精神を発揮すれば今後、国際間のいかなる戦争をも放棄できるはずです。そうすれば、「世界は一つ」という平和運動が展開されるものと信じます。ここにこそ休戦ではなく非戦の時代がくるのではないでしょうか。第1次、第2次世界大戦を経験した私は、その日が来ることを願っています。

筆者プロフィール

日野原重明(ひのはら・しげあき)

1911年山口県生まれ。医師。

聖路加国際病院理事長。同名誉院長。120万部を超えるベストセラーとなった「生き方上手」(91年)をはじめ、著書多数。診察の傍ら、小学校での「いのちの授業」ほか、各地で講演を行う。

ミュージカル「葉っぱのフレディ−いのちの旅」の原案執筆、企画し、2010年7月にはNYで自ら舞台にも立った。

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