北陸の経済ニュース 【12月8日03時32分更新】

年内再起動遠のく 志賀原発2号機、非常用発電機でまた油漏れ
 北陸電力は7日、志賀原発2号機の非常用ディーゼル発電機で、再び潤滑油が漏れ出す トラブルが起きたと発表した。4日に油漏れの原因と発表した金属弁を新型に交換したが 、直後のならし運転でまた油が漏れた。4日の北電側の報告を妥当と判断した国や、石川 県、志賀町の不信感は強く、年内の再起動は厳しい情勢となった。

 志賀原発2号機の非常用ディーゼル発電機で新たな油漏れが発生したのは、6日午後4 時半ごろ。3台の発電機のうち1台を試験的に動かしたところ、前回とは違うシリンダー から20ccの潤滑油が漏れ、シリンダー内部にも160ccの油がたまっていることが 確認された。

 北電は4日、油漏れの原因について、ディーゼル機関の停止中、シリンダー部に潤滑油 が流れ込むのを防ぐ「圧力制御逆止弁」と呼ばれる弁が摩耗し、弁の機能を果たさなかっ たことと発表した。このため、4日以降、3台の発電機にある計6個の「逆止弁」をすべ て新型に交換し、ならし運転に臨んだが、それでも油が漏れた。

 志賀原発2号機の非常用ディーゼル発電機は、北電が日立GEニュークリア・エナジー (茨城県日立市)に発注し、日立GE社は、川崎重工業(神戸市)が製造したディーゼル 機関を採用した。川崎重工業製のディーゼル機関を使っている原発は、全国で東京電力福 島第一原発1号機しかなく、過去に同様のトラブルが起きた例はない。

 北電は、新型弁が正常に機能することを確認したとしており、「逆止弁」以外にも油漏 れの原因があった可能性が大きい。北電は「現在、作業手順なども含めてあらゆる可能性 を調査中」としているが、詳細な調査を経て4日に原因を発表したばかりで、新たな原因 の特定には時間がかかることも予想される。

 新たな油漏れが起きたことで、志賀原発2号機の運転再開に向けたスケジュールは大き く狂う。

 北電は、7月10日に定期検査に入った当初、10月下旬に営業運転を再開する予定を 立てていたが、燃料棒から異物が見つかって原子炉内を清掃するなどし、再開予定が11 月中旬にずれ込んだ。

 その後、10月21日に原子炉を起動したが、今度は非常用ディーゼル発電機の油漏れ が見つかり、11月13日に原子炉を手動停止。今月4日に原因を発表した時点では、弁 を新型に交換後、9日の県原子力環境安全管理協議会などで地元の了解が得られれば、原 子炉を再起動する計画だったとみられる。

 しかし、新たな油漏れにより、9日の同協議会までに北電が再起動を申し入れることは 困難となった。県原子力防災訓練の当日に原子炉が手動停止し、原因発表の2日後に再び 油漏れが発生したことに、県関係者は「実にタイミングが悪い会社だ。もう、うんざりだ 」とあきれる。

 国も困った立場にある。原子力安全・保安院は4日、北電の報告に対し「妥当」との判 断を示しただけに「心中は穏やかではない」(関係者)とみられ、北電が次に報告書を提 出する際には、慎重の上にも慎重を期す必要が生じている。

 志賀原発2号機は1日停止すれば、代替火力の燃料費などから1億円程度の損失が発生 するとされる。二酸化炭素の排出削減を進める上でも原発稼働のメリットは大きく、運転 停止の長期化により、北電の収益が下振れするのは必至だ。

 だが、志賀2号機が定期検査に入った7月以降、ミスが続発し、今回、原因発表直後に 再び同様のトラブルを起こした北電に対する行政当局、地元関係者の不信感は小さくない 。仮に、新たな原因が判明し、年内に県、町に原子炉の再起動を申し入れたとしても、再 起動を経て営業運転を再開するのは年明け以降になりそうだ。

 北電からの報告を受けた志賀町の小泉勝町長は7日、「本当に遺憾だ。これでは町民の 信頼回復どころではない」と困惑顔で話し、あらためて原因究明を徹底するよう求めた。

 町では前回の報告を受け、立地地域の住民でつくる赤住区委員会・安全推進連絡会合同 会議を開く準備を進めていた。担当者の1人は「キツネにつままれたような話だ」と戸惑 いの表情を浮かべた。

 再度の油漏れに対し、石川県は「北電はトラブルを重く受け止め、原因究明と再発防止 対策を徹底し、県民の信頼に応える発電所運営に努めてもらいたい」(原子力安全対策室 )とする。

 県は7日、志賀町と合同で定例の立ち入り調査を実施し、合わせて再度の油漏れについ て北電から説明も受けた。県は9日の原子力環境安全管理協議会で、あらためて北電側か ら油漏れの詳細な報告を受ける予定だ。


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