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説明不足、危険過小評価も 原子力保安院に厳しい視線

(04/10 08:33、04/10 08:54 更新)

東京電力福島第1原発の状況について記者会見する、経産省の西山英彦官房審議官(左)=7日午前、経産省

東京電力福島第1原発の状況について記者会見する、経産省の西山英彦官房審議官(左)=7日午前、経産省

 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故を受け、国民への情報発信を担う原子力安全・保安院の会見が発生1カ月で100回を超えた。相次ぐ爆発や放射能漏れなどについて不十分な説明が多く、保安院の情報開示への消極姿勢が浮き彫りになっている。体制刷新のため経済産業省からの分離案も浮上するなど、保安院に対する風当たりは強い。(東京報道 森栄一郎)

 「どれくらいとは、なかなか表現が難しいですが…。危険の可能性は、少しでも可能性があれば封じておくという考え方です」

 保安院の6日の会見で、西山英彦大臣官房審議官は福島第1原発の原子炉格納容器に窒素を入れなかった場合、水素爆発が起きる危険の程度について明言を避け続けた。その後窒素注入が始まったが、7日の会見でも明確な回答はなかった。

 データの過小評価や状況説明の不十分さもある。例えば、1号機の燃料損傷の程度について、東電が「約70%」とするのに対し、保安院は「3%以上」。放射線量が多い原子炉に近づけず状況確認が難しいものの、東電と大幅に異なる説明が、保安院に対する不信感の一因となっている。

 保安院の対応は当初から「逃げの姿勢」が目立った。1号機の原子炉建屋が爆発した3月12日も「(爆発は)私たちが確認したものではない」(中村幸一郎審議官)と、まるで人ごと。避難住民の被ばくを「汚染の可能性」、炉心溶融については「燃料破損の可能性は否定できないとお答えしている」と、実態をぼかすような表現を多用してきた。

 こうした対応のまずさから経産省は13日以降、広報官を保安院ではなく本省の西山大臣官房審議官に交代。本省の報道室長の経験がある西山氏をスポークスマンにし「国民にメッセージがしっかり届くようにする」(海江田万里経産相)狙いだ。

 だが西山氏の本職は通商政策局担当。審議官級の事務官では数少ない保安院経験者ながら、企画調整課長を3年間務めただけで「原子力へのかかわりは乏しい」(関係者)。専門用語の説明は丁寧になった半面、福島原発の最悪のシナリオを問う声に「手元に材料がない」と避けていた。

 今月初めに低レベル放射能汚染水を海に放出したことについては、「放射性物質がどれだけ出ているのか隠している。東電や経産省は悪人だ」(農林水産省幹部)と身内の霞が関からも批判が出ている。

 保安院は原子力行政のアクセルとブレーキの両面を担う点が問題視されてきた。このため、今回の事故を機に経産省から保安院を分離する案も浮上するが、的確な情報開示が進むか、電力会社や原発メーカーとの癒着も指摘される体質の改善につながるか不透明だ。

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