農林水産
ホタテ、サンマ 影響深刻 道内、風評を懸念
(04/10 14:45)
道内漁業は今年、東日本大震災の影響で水揚げ減に直面しそうだ。道東沖のサンマ漁は、漁船の損壊で出漁隻数が大きく減る見通し。噴火湾では養殖ホタテの稚貝が大量に流出し、主力漁協は来年の水揚げを断念した。福島第1原発事故による風評被害で、輸出が停滞するとの懸念も広がっている。
道によると、震災による道内の漁業被害は340億円。うち漁船の被害は140億円で、東北地方で建造・修理中の29隻が焼失するなどした。養殖施設の被害は160億円。噴火湾などでホタテやカキの施設が損壊し、稚貝が流出した。
7月に始まる道東沖のサンマ漁は昨年、道東や東北地方から約200隻が出漁したが、今年は隻数が大きく減る見込み。水揚げ量全国一の根室市は、今年の水揚げ高が前年比37%減の55億5千万円になると推計する。
ただ、三陸の主要港が被害を受けたため、水揚げは道東各港に集中する見通し。「一昨年まで漁業者が水揚げ量を調整していたことを考えれば、隻数の減が水揚げ減に直結するとは限らない」(釧路管内厚岸町の加工業者)との声もある。
被害額が道内市町村別で最大の91億円に達した渡島管内八雲町ではホタテの成貝が泥をかぶり、来年出荷する稚貝も9割が失われた。町漁協は「他地区からの稚貝調達は、育て方の違いなどからサイズが異なるため難しい」(大林弘志組合長)として、来年の漁獲を諦めた。現在は損壊した養殖施設を引き揚げ、出荷可能な成貝の回収を進めている。
同町のホタテ水揚げ高は2009年で44億円。今年、来年は大きく減る見込みだ。町漁協は、6月までに施設を復旧させ、再来年の出荷の準備を急ぐ考え。いぶり噴火湾漁協(胆振管内洞爺湖町)も稚貝の2割を失い、組合員で稚貝を分け合うなどの対応を検討中だ。
養殖カキ、アサリを中心に被害が30億円に上った厚岸町でも「生産量の激減は避けられない」(佐藤友三・厚岸漁協専務理事)。カキは宮城県産の稚貝購入が困難なため西日本産の購入も検討したが、病気などの懸念から断念。地元産の稚貝の増産でしのぐ考えだ。
同じく宮城県からカキの稚貝を購入していたオホーツク管内のサロマ湖周辺の湧別など3漁協も今年のカキの養殖や1年ものの出荷を断念した。3漁協で年約5億円に達するカキの水揚げ高は減少が見込まれる。
日高管内えりも町では、増殖に使うハタハタの卵の半分以上を失った。このため、6千万匹を予定していた稚魚の放流が3千万匹を割り、2〜3年後の水揚げへの影響が心配されている。南かやべ漁協(函館市)や鹿部漁協(渡島管内鹿部町)は流されずに残った養殖コンブの移植を急ぐなどして、被害を最小限に抑える作業に懸命だ。
一方、福島第1原発事故を受けて道産魚介類の輸出先各国が放射能の検疫を強化した影響などで、中国向けの鮮魚やベトナム向けのサンマの輸出が滞っている。秋サケやホタテを中心に輸出は2009年で11万7千トン。年間のピークは秋サケの出荷が本格化する秋以降で、道漁連幹部は「風評被害の影響が出るのは間違いない」と危機感を強めている。
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