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東日本大震災:被災地で窃盗相次ぐ/笑顔の絵、被災者励ます /宮城

 ◇被災地で窃盗相次ぐ

 ◇店や民家荒らされ 「自警団作る余裕ない」

 東日本大震災で自宅などに大きな被害を受けた被災者がさらに追い込まれている。流された貴重品が奪われたり、自動販売機をこじ開けるなどの窃盗が相次いでいるためだ。被災者は心身ともに疲れ果てているのに--。県警は卑劣な犯行を防ごうとパトロールを強化する。仙台市若林区荒浜では21日も行方不明者の捜索が行われた。大津波に襲われた女川町の避難所では子供たちが描いた絵が張り出された。「笑顔」が被災者の心を勇気づける。

 東日本大震災の被災地で空き巣などの窃盗被害が相次いでいる。

 「もう踏んだりけったりですよ」。東松島市の鮮魚店の男性定員(40)は空っぽの店内を見渡し、力なく笑った。震災2日後、男性が店に戻ると、店内の魚やたばこなどがすべて奪われていた上、店前の自動販売機もこじ開けられ、飲料もなくなっていたという。

 県警捜査3課によると、震災後の通報や届け出は20日現在で330件を超える。コンビニエンスストアなどの商店のガラスが割られて食料品が盗まれたり、住民が避難所にいて不在の民家から現金や貴金属類がとられているケースや、壊れた車からガソリンを抜き取る手口も確認されている。地域別では主に津波被害の深刻な沿岸部が狙われているという。

 津波による無人地帯が広がる仙台市若林区の荒浜地区では、警察や消防団が不審者への声かけや、進入車両に身分証の提示を求めるなど、被害防止に力を入れる。だが、同地区近くの市立七郷小学校に避難している自営業の男性(54)は「それだけでは足りない。でも、自宅から貴重品を持ち出したくても、ガソリンがなくて帰れない。地域で自警団を組織したくてもできないのが現状で、皆やきもきしている」と話す。

 一方で、「暴徒に破壊され、無法地帯になった」「外国人の犯罪集団が乗り込んでいる」など、根拠が薄く、不安をあおるようなうわさも流れている。県警捜査3課は「パトロール警戒は強化している。良心に従い、冷静に行動してほしい」と呼びかけている。【松谷譲二、渡辺暢】

 ◇笑顔の絵、被災者励ます

 ◇子供たち描く--女川の避難所

 「がんばろう女川」「新しい女川を作ろう」--。東日本大震災で大津波に見舞われた女川町の避難所に、生き延びた子供たちが描いた絵が張り出された。笑顔あふれる絵と、復興への意気込みを表現する言葉が厳しい避難生活を送る被災者を励ましている。

 女川町は15メートルを超える大津波に襲われた。町人口の4割にあたる約4000人の安否が不明で、壊滅した中心部は3、4階建ての建物が横倒しで転がり、がれきの山が広がる。

 絵を描いたのは町内の小学生。各小学校の教諭らが自主的に、避難する児童らを教室に呼び集めて指導し、町内の避難所数カ所に張った。約1400人が避難する同町総合体育館の出入り口に張られた、小学1年の女児が描いた絵は、大人や子供が笑顔で手をつなぎ、「力をあわせて また にこにこの女川にもどそう!」と書かれている。

 女川第一小で指導した同小教諭の伊藤貴志さん(31)は「大好きだった女川の思い出を描こうと呼びかけた。津波を描く子もいて、地震がもたらす心への影響が心配にもなったが、絵が被災者を勇気付けてくれればうれしい」と話した。【遠藤孝康】

毎日新聞 2011年3月22日 地方版

 
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