裏切りの魔城 ~黒き森の魔女~
さてさて、昨日に引き続き第二幕。
前回、自分の意思で魔族へと堕ちた勇者の幼馴染リーナ。
彼女が魔王に進言した作戦とは?
というか、悪堕ちスキーな皆様なら想像はつくでしょう。
それではどうぞ~。
前回、自分の意思で魔族へと堕ちた勇者の幼馴染リーナ。
彼女が魔王に進言した作戦とは?
というか、悪堕ちスキーな皆様なら想像はつくでしょう。
それではどうぞ~。
~黒き森の魔女 エリス~
出会いは最悪だった。町に流れる噂を真に受けた勇者が、ボクを退治しようとやってきた。でも彼、ユウガさんはボクの話をちゃんと聞いてもらえた。そしてボクを仲間にしてくれた。ずっと森の中に引きこもっていたボクを、外の世界に連れ出してくれたんだ。あの時からボクはずっとユウガさんのこと・・・。
その話を聞いたのは一ヶ月くらい前のこと。一緒に旅している戦士のオイゲンさんが酔った勢いで教えてくれた。
―――ユウガさんには将来を約束した女性が故郷で待っている―――
ショックだった。ボクが初めて恋した人には、もう相手がいたなんて・・・。一晩泣いて、でも諦められなかった。何とかしてボクを見て欲しい。今はボクが一緒にいられるんだから・・・。
その頃からヘンな夢を見るようになった。始めのうちは全く覚えていなかったのに、最近は鮮明に思い出せる。ユウガさんが誰かと幸せに暮らしているのを遠目に見ている、ただそれだけ。相手の顔はぼやけててわからなかったけど、きっと顔も知らないユウガさんの恋人さんなんだろう。目が覚めると、いつも涙が止まらない。悲しくて、悔しくて、妬ましかった。そんなことを思ってしまう自分が、たまらなく嫌だった。
そんなある日、とある城下町でレイラという女占い師に出会った。その気さくな物腰に、ボクは思わず悩みを打ち明けた。レイラさんは黙って話を聞いてくれて、泣き出してしまったボクを優しく見ていてくれた。
「ボク、どうしたらいいんだろう・・・?」
「一度、告白してみたらどう?悩んでるくらいなら、ね?」
「そんなこと・・・できないよ・・・。」
俯きながら答えると、また涙が溢れてくる。
「じゃ、誘惑してみたら?」
「え・・・?」
意外な言葉に顔を上げ、レイラさんの瞳を見た。その瞳が紅く光る。そして、ボクの意識は闇の底に沈んでいった。
気が付くと、ボクは仲間と待ち合わせている宿屋の前に立っていた。いつ、レイラさんと別れたのか。どうやってここまで来たのか、思い出せなかった。別れる前に何か言われたような気がするが、何を言われたのか思い出せない。そして、ボクの手には紙袋がひとつ。その中身は、憶えていた。
「これを着て、今夜・・・ユウガさんと・・・。」
虚ろに呟いて、宿屋の扉を開ける。
仲間たちと食事をすませると、ボクは部屋で夜が更けるのを待ち焦がれていた。その身を包むのは一枚の黒い下着。それは薄く透けるような生地で、身体のラインを余すところなくさらけ出していた。ボクは鏡の前で笑みを浮かべていた。恥じらいよりも、期待のほうが大きかった。
「うふふ・・・今夜こそ、ユウガさんをボクのモノに・・・。」
ユウガさんの部屋を訪ね、思い切りいやらしく誘惑してみた。そして、拒絶された。
―――ボクは逃げ出した。この世界の何もかもが信じられなくなった。
部屋を、宿屋を飛び出したボクは、夜の街を当てもなく走っていた。走り疲れて道端に座り込んだボクに、一人の女性がマントをかけてくれた。
「・・・あ、う・・・。レイラ、さん・・・ふええええぇぇぇぇ・・・」
レイラさんの胸に顔を埋めるようにして、ボクは泣き続けた。
ひとしきり泣いた後、ボクはポツリと呟く。
「どうして・・・ボク、こんなに一生懸命なのに・・・。」
悔しい。そして、彼に女として見て貰えなかったことが腹立たしかった。
「もう嫌だよ・・・こんな思いするくらいなら、心なんていらないよ・・・。」
自暴自棄になって吐き出した弱音。しかし、それを聞いていた一人の人物が囁く。
「じゃ、貰ってあげるわ。あなたの心。」
「え?どういう・・・んんっ?!」
見上げたボクの唇を奪うレイラさん。唇を離すより先に、意識が遠くなっていく。
「闇の世界へようこそ・・・。」
頭の中で誰かが囁く。
『ボクを見てくれないユウガを許せない!』
「何を言ってるの?ボク、そんなこと・・・。」
『あんな鈍感男、死んじゃえばいいんだ!』
「いや、やめて・・・。どうしてそんな・・・。」
昔の記憶が蘇る。ボクの魔法で町が燃えたあの夜。町を追い出されて、森の奥で暮らし始めたボクを、町のみんなは魔女と呼んだ。
『みんな、みんな嫌い!しんじゃえ!・・・ううん。殺してあげる。』
「あ、え・・・?みんな、みんなボクのこと嫌いなんだ・・・。だから、ボクがどうなっちゃっても、いいんだよね・・・。」
だったら、ホントに魔女になってしまおう。
『うふふ、なんて楽しいの!魔王様にお仕えすることがこんなに楽しいなんて・・・。』
「あは、そうだ。魔王様にお仕えすれば、きっと楽になれる。何も悩まなくて済むんだ・・・。」
魔王様への隷従の言葉を紡ぐ。
「魔王様・・・ボクは、エリスは魔王様のモノ。魔王様のためなら何でも・・・」
もうボクは何も悩まない。ボクは魔王様のモノ。これからずっと・・・。
気が付くと、目の前にはレイラさん・・・ううん、リーナ様がボクを見つめていた。艶やかな笑みを浮かべながら、確かめるようにボクに問う。
「あなたは私のモノ。そうよね、エリス?」
何を言っているのだろう。
「はい、リーナ様。エリスはリーナ様の、そして魔王様のモノ。ボクの全ては魔王様のために。」
聞かれるまでも無い。ボクは魔王様の下僕。リーナ様の道具。それ以上でも、それ以下でもない。
「よろしい。ではエリス、あなたはこれからもユウガと共に行きなさい。」
「なぜですか?!ボクはあんな男と一緒に居たくありません!」
出来るならリーナ様のお傍で・・・。
「これは命令よ、エリス。あなたはあの男の動きを逐一伝えなさい。報告の仕方はわかるわね?」
「・・・はい。リーナ様、出過ぎたことを言って申し訳ありません。」
「構わないわ。あなたには期待しているの。あの男に絶望を与えるためにも、やってくれるわね。」
「はい・・・。お任せください、リーナ様。」
こんなボクにリーナ様が期待してくれている。そのことがとても嬉しかった。
「ところで、もう1人の女については何かあるかしら?あの娘もあなたと同じに、ね?」
「ハンナのことですか?あの娘、性的なことに関心があるみたいですよ?禁欲的な生活してたから、その反動かも。」
「そう・・・。ふふ、彼女がどう変わるか楽しみね。欲望のままに生きる悦びを教えてあげなきゃね?」
「はい。そして、魔王様とリーナ様に仕えることの素晴らしさも。」
ハンナも早くこっちに来ればいいのに・・・。で、ユウガの苦しむ姿を一緒に楽しむの。ああ、わくわくしてきた。でも、まずはリーナ様の命令通り、ユウガたちに怪しまれないように旅を続けないと・・・。
リーナ様と別れ、宿屋に戻る。あわてた様子のユウガに、あれは冗談だったと伝える。すると彼はホッとしたようだった。なんて馬鹿な男なの?こんなのに惚れてたなんて、我ながら情けない。さあ、行きましょう?絶望の未来へ、ね・・・。
いかがだったでしょうか?。
皆様の予想通りの展開でしたか。
次回も・・・な感じです。
肉体的な変化はあとのお楽しみということで。
それではまた次回の更新で会いましょう。
出会いは最悪だった。町に流れる噂を真に受けた勇者が、ボクを退治しようとやってきた。でも彼、ユウガさんはボクの話をちゃんと聞いてもらえた。そしてボクを仲間にしてくれた。ずっと森の中に引きこもっていたボクを、外の世界に連れ出してくれたんだ。あの時からボクはずっとユウガさんのこと・・・。
その話を聞いたのは一ヶ月くらい前のこと。一緒に旅している戦士のオイゲンさんが酔った勢いで教えてくれた。
―――ユウガさんには将来を約束した女性が故郷で待っている―――
ショックだった。ボクが初めて恋した人には、もう相手がいたなんて・・・。一晩泣いて、でも諦められなかった。何とかしてボクを見て欲しい。今はボクが一緒にいられるんだから・・・。
その頃からヘンな夢を見るようになった。始めのうちは全く覚えていなかったのに、最近は鮮明に思い出せる。ユウガさんが誰かと幸せに暮らしているのを遠目に見ている、ただそれだけ。相手の顔はぼやけててわからなかったけど、きっと顔も知らないユウガさんの恋人さんなんだろう。目が覚めると、いつも涙が止まらない。悲しくて、悔しくて、妬ましかった。そんなことを思ってしまう自分が、たまらなく嫌だった。
そんなある日、とある城下町でレイラという女占い師に出会った。その気さくな物腰に、ボクは思わず悩みを打ち明けた。レイラさんは黙って話を聞いてくれて、泣き出してしまったボクを優しく見ていてくれた。
「ボク、どうしたらいいんだろう・・・?」
「一度、告白してみたらどう?悩んでるくらいなら、ね?」
「そんなこと・・・できないよ・・・。」
俯きながら答えると、また涙が溢れてくる。
「じゃ、誘惑してみたら?」
「え・・・?」
意外な言葉に顔を上げ、レイラさんの瞳を見た。その瞳が紅く光る。そして、ボクの意識は闇の底に沈んでいった。
気が付くと、ボクは仲間と待ち合わせている宿屋の前に立っていた。いつ、レイラさんと別れたのか。どうやってここまで来たのか、思い出せなかった。別れる前に何か言われたような気がするが、何を言われたのか思い出せない。そして、ボクの手には紙袋がひとつ。その中身は、憶えていた。
「これを着て、今夜・・・ユウガさんと・・・。」
虚ろに呟いて、宿屋の扉を開ける。
仲間たちと食事をすませると、ボクは部屋で夜が更けるのを待ち焦がれていた。その身を包むのは一枚の黒い下着。それは薄く透けるような生地で、身体のラインを余すところなくさらけ出していた。ボクは鏡の前で笑みを浮かべていた。恥じらいよりも、期待のほうが大きかった。
「うふふ・・・今夜こそ、ユウガさんをボクのモノに・・・。」
ユウガさんの部屋を訪ね、思い切りいやらしく誘惑してみた。そして、拒絶された。
―――ボクは逃げ出した。この世界の何もかもが信じられなくなった。
部屋を、宿屋を飛び出したボクは、夜の街を当てもなく走っていた。走り疲れて道端に座り込んだボクに、一人の女性がマントをかけてくれた。
「・・・あ、う・・・。レイラ、さん・・・ふええええぇぇぇぇ・・・」
レイラさんの胸に顔を埋めるようにして、ボクは泣き続けた。
ひとしきり泣いた後、ボクはポツリと呟く。
「どうして・・・ボク、こんなに一生懸命なのに・・・。」
悔しい。そして、彼に女として見て貰えなかったことが腹立たしかった。
「もう嫌だよ・・・こんな思いするくらいなら、心なんていらないよ・・・。」
自暴自棄になって吐き出した弱音。しかし、それを聞いていた一人の人物が囁く。
「じゃ、貰ってあげるわ。あなたの心。」
「え?どういう・・・んんっ?!」
見上げたボクの唇を奪うレイラさん。唇を離すより先に、意識が遠くなっていく。
「闇の世界へようこそ・・・。」
頭の中で誰かが囁く。
『ボクを見てくれないユウガを許せない!』
「何を言ってるの?ボク、そんなこと・・・。」
『あんな鈍感男、死んじゃえばいいんだ!』
「いや、やめて・・・。どうしてそんな・・・。」
昔の記憶が蘇る。ボクの魔法で町が燃えたあの夜。町を追い出されて、森の奥で暮らし始めたボクを、町のみんなは魔女と呼んだ。
『みんな、みんな嫌い!しんじゃえ!・・・ううん。殺してあげる。』
「あ、え・・・?みんな、みんなボクのこと嫌いなんだ・・・。だから、ボクがどうなっちゃっても、いいんだよね・・・。」
だったら、ホントに魔女になってしまおう。
『うふふ、なんて楽しいの!魔王様にお仕えすることがこんなに楽しいなんて・・・。』
「あは、そうだ。魔王様にお仕えすれば、きっと楽になれる。何も悩まなくて済むんだ・・・。」
魔王様への隷従の言葉を紡ぐ。
「魔王様・・・ボクは、エリスは魔王様のモノ。魔王様のためなら何でも・・・」
もうボクは何も悩まない。ボクは魔王様のモノ。これからずっと・・・。
気が付くと、目の前にはレイラさん・・・ううん、リーナ様がボクを見つめていた。艶やかな笑みを浮かべながら、確かめるようにボクに問う。
「あなたは私のモノ。そうよね、エリス?」
何を言っているのだろう。
「はい、リーナ様。エリスはリーナ様の、そして魔王様のモノ。ボクの全ては魔王様のために。」
聞かれるまでも無い。ボクは魔王様の下僕。リーナ様の道具。それ以上でも、それ以下でもない。
「よろしい。ではエリス、あなたはこれからもユウガと共に行きなさい。」
「なぜですか?!ボクはあんな男と一緒に居たくありません!」
出来るならリーナ様のお傍で・・・。
「これは命令よ、エリス。あなたはあの男の動きを逐一伝えなさい。報告の仕方はわかるわね?」
「・・・はい。リーナ様、出過ぎたことを言って申し訳ありません。」
「構わないわ。あなたには期待しているの。あの男に絶望を与えるためにも、やってくれるわね。」
「はい・・・。お任せください、リーナ様。」
こんなボクにリーナ様が期待してくれている。そのことがとても嬉しかった。
「ところで、もう1人の女については何かあるかしら?あの娘もあなたと同じに、ね?」
「ハンナのことですか?あの娘、性的なことに関心があるみたいですよ?禁欲的な生活してたから、その反動かも。」
「そう・・・。ふふ、彼女がどう変わるか楽しみね。欲望のままに生きる悦びを教えてあげなきゃね?」
「はい。そして、魔王様とリーナ様に仕えることの素晴らしさも。」
ハンナも早くこっちに来ればいいのに・・・。で、ユウガの苦しむ姿を一緒に楽しむの。ああ、わくわくしてきた。でも、まずはリーナ様の命令通り、ユウガたちに怪しまれないように旅を続けないと・・・。
リーナ様と別れ、宿屋に戻る。あわてた様子のユウガに、あれは冗談だったと伝える。すると彼はホッとしたようだった。なんて馬鹿な男なの?こんなのに惚れてたなんて、我ながら情けない。さあ、行きましょう?絶望の未来へ、ね・・・。
いかがだったでしょうか?。
皆様の予想通りの展開でしたか。
次回も・・・な感じです。
肉体的な変化はあとのお楽しみということで。
それではまた次回の更新で会いましょう。
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