裏切りの魔城 ~紅き魔将~
皆様、お久しぶりです。
前回の更新から約二週間、ようやく更新できます。
今回はRPG的なファンタジー系の作品です。
相変わらずエロ要素は薄いですが・・・。
まずは序章。続きで本編『紅き魔将』になります。
予定では数回に分けて連続投下しますのでお楽しみに。
それではどうぞ~。
裏切りの魔城 ~序章~
それはあまりに突然だった。長すぎた平和は、世界を護る力すら奪ってしまっていた。世界は魔王の手によって、果てしない闇と混沌の只中へと叩き落とされていた。
魔王軍が侵略を開始した直後、世界中に魔物が溢れだした。各国がその対応に追われるうちに、魔王によって世界の5分の1が支配されていた。しかしその後、散発的な襲撃はあるものの、大規模な侵略行動は鳴りを潜めていた。各国は偵察隊を送り込むも、ことごとく消息を絶ちこう着状態になっていった。
そのころから、世界各地で勇者と呼ばれる者たちが現れ始めた。彼らの多くは人よりも少し腕が立つだけの人間だったが、中には常人よりも遥かに優れた能力を持つ者もいた。世界中の人々が彼らに期待したが、誰一人戻ることはなかった。
そうして続くこう着状態に人々は疲弊していく。希望は絶望に変わり、人々の心は荒れ果てていった。中には自ら魔王軍に降る者まで現れるようになり、疑念と不安から争いが絶えなくなっていった。
そんな中、一人の青年が住みなれた町を離れ旅に出る。彼の名はユウガ。幼少のころから卓越した剣才を見せ、町中の人から期待される勇者候補であった。彼は将来を誓い合った幼馴染の少女リーナを町に残し、魔王を倒すために世界へと足を踏み出した。
戦士オイゲン。魔法使いエリス。治癒術士ハンナ。旅の途中出会った頼れる仲間とともに、世界を駆け巡る勇者ユウガ。その旅の果てに待つものを彼は知らない・・・。
~紅き魔将 リーナ~
『行ってらっしゃい』
そうユウガに言ってから、どれほどの時間が過ぎたのだろう。私は今、魔王の棲む城の中にいる。ユウガが旅に出てから10日ほど経ったあの日、私は町の外れにある旅の占い師を訪ねていた。
「それで、占うのはその男のことでいいのじゃな?」
「はい・・・。彼が無事に戻ってくるかを・・・。」
笑顔で送り出したはいいが、不安でたまらなかった。小さいころ、身体の弱かった私をいつも支えてくれていた彼を、見送ることしかできなかった。
「そんなに大事なのかな、その男のことが。」
「はい。とても、とても大切な人なんです。」
彼が戻ってきたら、私たちは結婚式を挙げることが決まっていた。信じてはいるが、不安は尽きなかった。
「では、この水晶玉をよ~く見るのじゃ・・・。」
「・・・・?!えっ・・・」
一瞬目の前が光ったと思ったら、身体が動かせなくなっていた。ぼんやりと水晶玉を見つめるだけだった。
「さあ、行くかのぉ。魔王様がお主を待っておるでの・・・。」
一瞬、軽い浮遊感を感じたと思った直後、辺りの景色は一変していた。薄暗い室内、わずかにロウソクの光が辺りを照らしていた。気が付くと、辺りにあの占い師の姿はなかった。手足が縛られているわけではなく、逃げ出そうと思えば逃げることも出来そうではある。
しかし、目の前にいる存在がそれを許さなかった。
「お前がリーナか?」
「あなたが・・・魔王なのね?」
聞くまでもなく、その男の纏う空気が全てを物語っていた。鍛え抜かれた身体、端正な顔立ち、深い闇を映したような黒い瞳・・・。私は思わず見惚れてしまっていた。
「どうした・・・?想像と違って驚いたかな?」
「え、ええ。もっと厳ついイメージだったから・・・。」
不思議なことに、まるで恐怖を感じなかった。むしろ親しみやすさを覚えるほどに。しかし、目の前にいるのはユウガの敵、魔王その人なのだ。
「なぜ、私をここに?何が目的なの?」
「目的か・・・。ただ単にお前を気に入ったから、という訳ではない。お前の中に眠るその力、そのままにしておくのは勿体無いと思ってな。」
私は驚いた。目の前にいる男は、私を誘っているのだ。
「私の・・・力?私にそんな力ありません。だから帰して下さい。」
「確かにあるのさ、お前自身が気付いていないだけで。連れてきた以上帰すわけにはいかないな。使い道などいくらでもあるし、時間が経てば気が変わるかもしれんからな。」
「そんなこと・・・あるはずが無いでしょう!」
結局、帰してもらえるはずもなく、それ以来この魔城の中で日々を過ごしていた。それはひどく穏やかで、危害を加えられることもなく、何の不自由もない日々。とはいえ、行動に制限があり、退屈な日々でもありました。
そんな中で唯一の楽しみは、部屋に置かれていた魔導書。基礎的な物から難解な物まで揃えられ、一日中魔導書に向き合う日々。いままで魔術の勉強などしたことのない私にとって、それはとても興味深く、好奇心をそそられるものでした。
私は部屋に在ったものを読み終えると、新たな魔導書を求めて城の中を探し回った。そうして見つけたのは、古びた一冊の魔導書。黒ずんだ表紙を開くと、古代文字と幾何学模様がびっしりと書かれていた。始めはあまりに難解で独特な表現に苦しんだものの、読み進めるうちに気にならなくなっていました。
その魔導書に書かれていたのは今で言うところの邪法、禁呪と呼ばれるものでした。大規模破壊や殺戮、洗脳に魔物化にいたるまで・・・。今までの私なら興味を持つことさえなかったでしょう。しかし私は、こうして得た知識を活用したいという想いを抑えられなくなっていた。それは、心の支えだった彼のことさえ忘れてしまうほどに・・・。
私はある決意を胸に、魔王のいる謁見の間を訪れていた。これまでに手にした知識を実際に使うためには、人間であることを辞めてしまうしかない。そう結論付けた私に、迷いや躊躇いはなかった。
「ふふ、いい顔になったな。ここに来た・・・ということは先日の話、考え直してくれたのかな?」
「・・・はい。私は手に入れた魔導書の知識を使ってみたい。そのためなら、貴方に従ってもいいと思って・・・。」
玉座に座る魔王に対して、一段低い位置から見上げるように話す。最初に会ったとき以上に、その強大さを肌で感じていた。
「いずれはあの男、勇者ユウガとも戦うことになる。私は奴を倒さねばならん。それでも私に従うか?」
「・・・はい。今の私にとって彼への想いよりも、私の力を試すことのほうが優先です。たとえ彼と戦うことになったとしても、今の自分の気持ちに嘘は吐きたくありません。」
それは本心だった。今まで病弱で人の世話になり続けていたせいか、誰かの役に立ちたいという思いが強かった。初めて自分を、自分の力を求めてくれる人の役に立てる。たとえそれが世界の敵であったとしても。
「フフ、いいだろう。さあ、ここまで来い。お前の力を覚醒させ、我が同胞として再誕させてやろう。」
「はい・・・。よろしくお願いします、魔王様・・・。」
興奮と羞恥、それを上回る歓喜で頬を上気させながら、魔王の傍へと歩み寄る。すると軽く抱き寄せられ唇を奪われた。
「んんっ?!ん・・・」
ちょっと驚いた。しかし、私はすぐに魔王様の舌を受け入れ、自らの舌を絡ませた。それだけでたまらなく心地よかった。次の瞬間、私の中に何かが入り込んできた。
魔王様が唇を離すと、私は目を開けて周囲をうかがった。足元には複雑な魔法陣、そこからはどす黒い霧が溢れ出していた。
「抗うな、全てを受け入れろ。黒く染まる悦びを享受するのだ・・・。」
魔王様の言葉に小さく頷いて、瞳を閉じる。私の中を駆け巡る暗い意思の力を感じた。その力の奔流が私の全てを押し流していく。
「ふあああ・・・♪キモチイイ・・・・。」
人間としての自分。その全てが押し流され、黒く塗り潰されていく。
夢や希望は、欲望へとすりかえられた。
悲しみの記憶は、憎しみに彩られていく。
人としての喜びは、愚かな記憶として処理された。
・・・そして、愛した人への想いは、憎悪と侮蔑に変わる。
新たな価値観、人格が形成される。その中心にあるのは、魔王様への敬意と忠誠。
内面の変化が終わると、周囲にわだかまっていた黒い霧が全身に染み込んでくる。着ていた服は、霧に触れて溶け落ちていく。黒い霧が消えると、私の身体に変化が現れる。
日焼けの無い薄く白い肌は、さらに白く艶を増していく。
耳は尖り、髪の色は流れるような黒髪から燃えるような緋色へと変わっていく。
両手の爪が伸び、犬歯が鋭くなって一対の牙に変化する。
額に一本の線が入ると、そこからもう一つ眼が現れる。それと同時に全身には紅い紋様が浮き出し、扇情的な肉体に禍々しさを彩っていく。
全ての変化が終わったとき、私は大きく息を吐き出す。ゆっくりと眼を開けて、魔王様にその紅く輝く瞳を向ける。
「魔王様、この命、この魂、いかようにもお使いくださいませ・・・。」
忠誠の言葉を紡ぎながら恭しく跪き、その手に口付ける。
「ふふ、リーナ。今の気分はどうだ?」
「うふふ、とても素晴らしい気分ですわ。これで何の気兼ねもなく力を使えるのだと思うと、嬉しくて濡れてしまいそうです・・・。」
欲情に潤んだ瞳を向けながら、魔に堕ちた悦びを語る。
「では、勇者ユウガの処分をお前に任せよう。構わないな?」
「ありがとうございます!あの男には、これ以上ないほど惨めな末路を用意してやりましょう。」
ユウガ。あの間の抜けた男の顔を思い出すだけで、怒りと憎しみが溢れ出してくる。
「ほう、してどのように?」
「はい。それは・・・」
この時から、私は魔王様の腹心となった。いずれ来るユウガとの再会に胸躍らせながら、様々な策を巡らせる。その再会を絶望に満ちたものにするために・・・。
まずは第一幕。いかがだったでしょうか。
書いていったら長くなりすぎて連続投下することに・・・。
さて次回からは勇者の仲間たちが・・・というところで今回はお別れです。
次の更新をお楽しみに。それではまた。
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前回の更新から約二週間、ようやく更新できます。
今回はRPG的なファンタジー系の作品です。
相変わらずエロ要素は薄いですが・・・。
まずは序章。続きで本編『紅き魔将』になります。
予定では数回に分けて連続投下しますのでお楽しみに。
それではどうぞ~。
裏切りの魔城 ~序章~
それはあまりに突然だった。長すぎた平和は、世界を護る力すら奪ってしまっていた。世界は魔王の手によって、果てしない闇と混沌の只中へと叩き落とされていた。
魔王軍が侵略を開始した直後、世界中に魔物が溢れだした。各国がその対応に追われるうちに、魔王によって世界の5分の1が支配されていた。しかしその後、散発的な襲撃はあるものの、大規模な侵略行動は鳴りを潜めていた。各国は偵察隊を送り込むも、ことごとく消息を絶ちこう着状態になっていった。
そのころから、世界各地で勇者と呼ばれる者たちが現れ始めた。彼らの多くは人よりも少し腕が立つだけの人間だったが、中には常人よりも遥かに優れた能力を持つ者もいた。世界中の人々が彼らに期待したが、誰一人戻ることはなかった。
そうして続くこう着状態に人々は疲弊していく。希望は絶望に変わり、人々の心は荒れ果てていった。中には自ら魔王軍に降る者まで現れるようになり、疑念と不安から争いが絶えなくなっていった。
そんな中、一人の青年が住みなれた町を離れ旅に出る。彼の名はユウガ。幼少のころから卓越した剣才を見せ、町中の人から期待される勇者候補であった。彼は将来を誓い合った幼馴染の少女リーナを町に残し、魔王を倒すために世界へと足を踏み出した。
戦士オイゲン。魔法使いエリス。治癒術士ハンナ。旅の途中出会った頼れる仲間とともに、世界を駆け巡る勇者ユウガ。その旅の果てに待つものを彼は知らない・・・。
~紅き魔将 リーナ~
『行ってらっしゃい』
そうユウガに言ってから、どれほどの時間が過ぎたのだろう。私は今、魔王の棲む城の中にいる。ユウガが旅に出てから10日ほど経ったあの日、私は町の外れにある旅の占い師を訪ねていた。
「それで、占うのはその男のことでいいのじゃな?」
「はい・・・。彼が無事に戻ってくるかを・・・。」
笑顔で送り出したはいいが、不安でたまらなかった。小さいころ、身体の弱かった私をいつも支えてくれていた彼を、見送ることしかできなかった。
「そんなに大事なのかな、その男のことが。」
「はい。とても、とても大切な人なんです。」
彼が戻ってきたら、私たちは結婚式を挙げることが決まっていた。信じてはいるが、不安は尽きなかった。
「では、この水晶玉をよ~く見るのじゃ・・・。」
「・・・・?!えっ・・・」
一瞬目の前が光ったと思ったら、身体が動かせなくなっていた。ぼんやりと水晶玉を見つめるだけだった。
「さあ、行くかのぉ。魔王様がお主を待っておるでの・・・。」
一瞬、軽い浮遊感を感じたと思った直後、辺りの景色は一変していた。薄暗い室内、わずかにロウソクの光が辺りを照らしていた。気が付くと、辺りにあの占い師の姿はなかった。手足が縛られているわけではなく、逃げ出そうと思えば逃げることも出来そうではある。
しかし、目の前にいる存在がそれを許さなかった。
「お前がリーナか?」
「あなたが・・・魔王なのね?」
聞くまでもなく、その男の纏う空気が全てを物語っていた。鍛え抜かれた身体、端正な顔立ち、深い闇を映したような黒い瞳・・・。私は思わず見惚れてしまっていた。
「どうした・・・?想像と違って驚いたかな?」
「え、ええ。もっと厳ついイメージだったから・・・。」
不思議なことに、まるで恐怖を感じなかった。むしろ親しみやすさを覚えるほどに。しかし、目の前にいるのはユウガの敵、魔王その人なのだ。
「なぜ、私をここに?何が目的なの?」
「目的か・・・。ただ単にお前を気に入ったから、という訳ではない。お前の中に眠るその力、そのままにしておくのは勿体無いと思ってな。」
私は驚いた。目の前にいる男は、私を誘っているのだ。
「私の・・・力?私にそんな力ありません。だから帰して下さい。」
「確かにあるのさ、お前自身が気付いていないだけで。連れてきた以上帰すわけにはいかないな。使い道などいくらでもあるし、時間が経てば気が変わるかもしれんからな。」
「そんなこと・・・あるはずが無いでしょう!」
結局、帰してもらえるはずもなく、それ以来この魔城の中で日々を過ごしていた。それはひどく穏やかで、危害を加えられることもなく、何の不自由もない日々。とはいえ、行動に制限があり、退屈な日々でもありました。
そんな中で唯一の楽しみは、部屋に置かれていた魔導書。基礎的な物から難解な物まで揃えられ、一日中魔導書に向き合う日々。いままで魔術の勉強などしたことのない私にとって、それはとても興味深く、好奇心をそそられるものでした。
私は部屋に在ったものを読み終えると、新たな魔導書を求めて城の中を探し回った。そうして見つけたのは、古びた一冊の魔導書。黒ずんだ表紙を開くと、古代文字と幾何学模様がびっしりと書かれていた。始めはあまりに難解で独特な表現に苦しんだものの、読み進めるうちに気にならなくなっていました。
その魔導書に書かれていたのは今で言うところの邪法、禁呪と呼ばれるものでした。大規模破壊や殺戮、洗脳に魔物化にいたるまで・・・。今までの私なら興味を持つことさえなかったでしょう。しかし私は、こうして得た知識を活用したいという想いを抑えられなくなっていた。それは、心の支えだった彼のことさえ忘れてしまうほどに・・・。
私はある決意を胸に、魔王のいる謁見の間を訪れていた。これまでに手にした知識を実際に使うためには、人間であることを辞めてしまうしかない。そう結論付けた私に、迷いや躊躇いはなかった。
「ふふ、いい顔になったな。ここに来た・・・ということは先日の話、考え直してくれたのかな?」
「・・・はい。私は手に入れた魔導書の知識を使ってみたい。そのためなら、貴方に従ってもいいと思って・・・。」
玉座に座る魔王に対して、一段低い位置から見上げるように話す。最初に会ったとき以上に、その強大さを肌で感じていた。
「いずれはあの男、勇者ユウガとも戦うことになる。私は奴を倒さねばならん。それでも私に従うか?」
「・・・はい。今の私にとって彼への想いよりも、私の力を試すことのほうが優先です。たとえ彼と戦うことになったとしても、今の自分の気持ちに嘘は吐きたくありません。」
それは本心だった。今まで病弱で人の世話になり続けていたせいか、誰かの役に立ちたいという思いが強かった。初めて自分を、自分の力を求めてくれる人の役に立てる。たとえそれが世界の敵であったとしても。
「フフ、いいだろう。さあ、ここまで来い。お前の力を覚醒させ、我が同胞として再誕させてやろう。」
「はい・・・。よろしくお願いします、魔王様・・・。」
興奮と羞恥、それを上回る歓喜で頬を上気させながら、魔王の傍へと歩み寄る。すると軽く抱き寄せられ唇を奪われた。
「んんっ?!ん・・・」
ちょっと驚いた。しかし、私はすぐに魔王様の舌を受け入れ、自らの舌を絡ませた。それだけでたまらなく心地よかった。次の瞬間、私の中に何かが入り込んできた。
魔王様が唇を離すと、私は目を開けて周囲をうかがった。足元には複雑な魔法陣、そこからはどす黒い霧が溢れ出していた。
「抗うな、全てを受け入れろ。黒く染まる悦びを享受するのだ・・・。」
魔王様の言葉に小さく頷いて、瞳を閉じる。私の中を駆け巡る暗い意思の力を感じた。その力の奔流が私の全てを押し流していく。
「ふあああ・・・♪キモチイイ・・・・。」
人間としての自分。その全てが押し流され、黒く塗り潰されていく。
夢や希望は、欲望へとすりかえられた。
悲しみの記憶は、憎しみに彩られていく。
人としての喜びは、愚かな記憶として処理された。
・・・そして、愛した人への想いは、憎悪と侮蔑に変わる。
新たな価値観、人格が形成される。その中心にあるのは、魔王様への敬意と忠誠。
内面の変化が終わると、周囲にわだかまっていた黒い霧が全身に染み込んでくる。着ていた服は、霧に触れて溶け落ちていく。黒い霧が消えると、私の身体に変化が現れる。
日焼けの無い薄く白い肌は、さらに白く艶を増していく。
耳は尖り、髪の色は流れるような黒髪から燃えるような緋色へと変わっていく。
両手の爪が伸び、犬歯が鋭くなって一対の牙に変化する。
額に一本の線が入ると、そこからもう一つ眼が現れる。それと同時に全身には紅い紋様が浮き出し、扇情的な肉体に禍々しさを彩っていく。
全ての変化が終わったとき、私は大きく息を吐き出す。ゆっくりと眼を開けて、魔王様にその紅く輝く瞳を向ける。
「魔王様、この命、この魂、いかようにもお使いくださいませ・・・。」
忠誠の言葉を紡ぎながら恭しく跪き、その手に口付ける。
「ふふ、リーナ。今の気分はどうだ?」
「うふふ、とても素晴らしい気分ですわ。これで何の気兼ねもなく力を使えるのだと思うと、嬉しくて濡れてしまいそうです・・・。」
欲情に潤んだ瞳を向けながら、魔に堕ちた悦びを語る。
「では、勇者ユウガの処分をお前に任せよう。構わないな?」
「ありがとうございます!あの男には、これ以上ないほど惨めな末路を用意してやりましょう。」
ユウガ。あの間の抜けた男の顔を思い出すだけで、怒りと憎しみが溢れ出してくる。
「ほう、してどのように?」
「はい。それは・・・」
この時から、私は魔王様の腹心となった。いずれ来るユウガとの再会に胸躍らせながら、様々な策を巡らせる。その再会を絶望に満ちたものにするために・・・。
まずは第一幕。いかがだったでしょうか。
書いていったら長くなりすぎて連続投下することに・・・。
さて次回からは勇者の仲間たちが・・・というところで今回はお別れです。
次の更新をお楽しみに。それではまた。