2011.03.23 Wed
米ファニメーション、アニメの吹き替えに海賊版字幕ファンサブを利用していることが発覚
以下の文章は、TorrentFreakの「Anime Distributor Dubs Using ‘Pirated’ Subs」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:Anime Distributor Dubs Using ‘Pirated’ Subs
著者:Ernesto
日付:March 20, 2011
ライセンス:CC BY
2ヶ月前、米アニメディストリビューターのFunimationは、アニメファンによる著作権侵害対策として、1,337名のBitTorrentダウンローダーを訴えたと発表した。一方、Funimationの吹き替え室を撮影した映像から、彼らが『海賊版』字幕を使用していることが明らかとなった。
何度も目にしてきたことではあるが、著作権は諸刃の剣である。片側を鋭く研ぐ者がしばしば、もう片側で自らを傷つける。
1月、米アニメディストリビューターのFunimationは、アニメ『One Piece』の第481話を共有したとみられる1,337人のBitTorrentユーザを訴えた。Funimationは被告となった人々に、損害賠償の支払いとBitTorrentでダウンロードしたすべてのコンテンツを破棄することを求めている。
BitTorrent創成期より、アニメトレント界隈は常に活発なコミュニティであった。しかし、Funimationは線引きをすべき時期がきたとして、彼らのユーザを訴えることにしたのだろう。また、Funimationは以前よりファンサブサイトには非常に批判的でもあった。ファンサブサイトでは、アニメファンが字幕を作成、共有し、しばしばアニメの海賊版コピー(またはトレントファイル)も配布されていた。
そんな中、Funimationの吹き替え室の映像から、同社が『海賊版』字幕を使用していることが明らかになった。これまでのいきさつを考えると、いささか偽善的とも言える。
Funimationによる海賊版字幕の使用は、Anime News Network(ANN)のメンバーの指摘によって発覚した。America's Greatest Otakuという番組の映像に映り込んでいたという。
番組の翻訳そのものは公式のもの(訳注:CrunchyRollにてつけられていたもの)であるようだが、字幕スタイルは明らかに『海賊版』番組の字幕を提供するHorriblesubs独自のものである。さまざまな要素から考慮しても、このスタイルがたまたま一致したということは考えにくく、Funimationが同社の吹き替え室で『海賊版』ソースの字幕を使用していたと考えるのが妥当であろう。
吹き替え室の映像の字幕
Horriblesubsの字幕
では、これによりFunimationは何らかの違法行為を行ったことになるのだろうか?そうとは限らない。
フォーラムで議論がしばらく続いた後、ANN CEOのTempestがこの議論に加わり、この状況をうまくまとめている。彼はライセンス契約にも詳しい人物だ。彼によると、Funimationが『海賊版』字幕を使用していることは疑いないが、彼らが適当な権利を得ていないということはありえないだろう、という。
一般的にライセンス契約の際には字幕使用の権利についても含まれており、コンテンツの原権利者による翻訳であれば、FunimationはHorriblesubsの字幕であっても使用する権利を持つ。唯一の問題は、Horriblesubsが使用しているフォントについて、Funimationがきちんとラインセンスをとっているかという点である。
しかし、もちろん、この思わぬ発覚は、法律云々と言うよりは、BitTorrentやファンサブに批判的でありながら、『海賊版』字幕を使用するアニメディストリビューターの偽善的態度の問題である。彼らが潰そうと躍起になっているまさにそのコミュニティなしに、製品の品質は保たれないというのだから、なんともはや。
ちょっとわかりにくかったのだが、翻訳そのものはファンサブ側が行ったわけではなく、同番組(「そらのおとしもの」)を正規に配信するCrunchyRollの字幕を書き起こして、字幕ファイル(ファンサブ)が作成されたという流れみたい。正規のものを加工して作られたファンサブとはいえ、今までファンサブ憎しとやってきたFunimationが、吹き替え時にそのファンサブを使っていたというのは仁義としてどうなのよ、という話なのかな。
ANNのTempest氏のまとめがわかりやすかったので以下に。
- Fuminationは吹き替え録音時に、HS(Horriblesubs)のビデオ/字幕を使っている。
- その理由およびそれが恒常的に行われていたのかは不明。
- Funimationはライセンシーである。通常こうしたライセンスにはCR(CrunchyRoll)の字幕スクリプトについても契約に含まれていると思われる。
- Funimationはライセンスおよび米著作権法17条によって、HSのビデオ/字幕を使用する権利を持つ。
- #3および#4から、Funimationの行為は(フォントを除き)違法ではない。
- 問題のフォントが(ハードコードではなく)ファイルとして添付されていたとしたら、HSはフォントを配布する権利を有していないと思われる。Funimationがフォントについて適当なライセンスを受けていないのであれば、同社は意図せずフォントの著作権を侵害したことになるだろう。
- Funimationがフォントのライセンスを得ているかどうかはわからない。
さすがに長すぎて議論全体を見れてはいないのだけれども、通常、字幕ファイルは表示のタイミング等を調整しているため、対応するビデオファイルにのみ使用できるので、ビデオもHorriblesubsからのものだ、と考えたのかな。Horriblesubsは、字幕ファイルへのリンクと併記するかたちで海賊版ビデオのトレントへのリンクをはっている。
と、ここまで書いたところで、GIGAZINEもこのTorrentFreakの記事をネタにした記事を書いているようで。GIGAZINEのはちょっと勘違いされそうな記事だけど、何もFunimationが有志が翻訳したファンサブを流用してDVDとか作ってるわけじゃないからね。ファンサブの翻訳自体が、CrunchyRollの正規配信の翻訳を流用して作成されている。そういうファンサブを吹き替えブースで使ってたってことに対して、いかがなものか、というところでしょうか。
にしても、なんでファンサブを使ってるんだろう。CrunchyRoll版のは見たことないんだけど、そっちは字幕表示のタイミングとかgdgdなのかな。
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