暁の出所だった。司組長は午前5時50分ごろ、警察官約100人と刑務所職員らによる厳戒態勢の中、府中刑務所の正門から出て、出迎えた山口組幹部らとともに黒のワゴン車に乗り込んだ。
刑務所前には、『ジャパニーズ・マフィアのボス』に関心を寄せる海外メディアまでが、夜明け前からスタンバイ。総勢約60人の報道陣が“そのとき”を待ったが、大きな混乱はなかった。
司組長は山口組幹部らと、JR品川駅から東海道新幹線のグリーン車1両を借り切って、直接、神戸市の山口組総本部に入った。
司組長は有力2次団体の弘道会会長だった1997年、配下の組員が拳銃を持っていたとして大阪府警が銃刀法違反容疑で逮捕。保釈中の2005年8月に6代目組長に就任し、同年12月、懲役6年の有罪判決が確定、収監されていた。
組長不在の間、ナンバー2の若頭で弘道会会長の高山清司被告(63)=恐喝罪で起訴=が実質的に組を支配。85人の直系組長に総本部への日参を義務付けるなど統制を強化した。
警察庁は、暴力団全体の約44%に当たる3万4900人が山口組に集中していることや、警察との対決姿勢を強める弘道会による支配などに危機感を抱き「司組長出所までに組織の弱体化を!」と09年から壊滅作戦を展開してきた。
これまでに高山被告、山口組ナンバー3の入江禎・宅見組組長(66)=暴力団対策法違反罪で有罪=を含む直系組長33人を逮捕、一時トップ3不在に追い込んだ。
さらに昨年1年間、全国の警察は「直参」(じきさん)と呼ばれる2次団体組長85人のうち、統計開始後最多となる25人を摘発した。警視庁幹部は「今後もあらゆる法令を駆使して、取り締まりを強化する」という。
警察庁によると、司組長は05年8月、6代目組長に就任。関東の有力組織「国粋会」(東京)を傘下に吸収し、東京進出の足掛かりを築いたが、不在期間が長く、69歳と高齢であることから、求心力や指導力には不透明な部分も多いという。
盛大な「放免祝い」は自粛するとみられ、同庁幹部は「しばらくは目立った動きはない」と分析する。
ただ、運営体制の刷新は水面下で進むとみられ、後継体制の確立を念頭に2次団体有力幹部の登用などが予想される。捜査関係者は「組織が引き締まるのは間違いない」と話している。
(紙面から)