忍耐強い日本を読み解くキーワードとは(上)

 日本人は、特有の忍耐と克己、冷静さと落ち着きで危機を乗り越え、困難なときほど助け合い、他人に配慮するという国民性を発揮している。列島は揺らいだが、日本人は揺らがなかった。AP通信は「大混乱の中でも略奪や盗みはほとんどなく、腹を立てたり不親切だったりする日本人が見られないことに、西洋の記者が驚いている」と報じた。(3月17日付本紙既報)

 大地震に遭遇した日本人が示した、冷静かつ控え目な対応スタイルが、全世界の関心を集めている。災害に対処する日本人の心理状態が気になるなら、日本の社会心理学者・南博(1914-2001)が書いた『日本人の心理』(ソファ社)を読んでみることを勧める。敗戦後の日本社会と日本人を冷静かつ客観的な目で見詰めるために書かれたこの本は、1953年に初版が出て以来かなりたつが、今でもルース・ベネディクト(1887-1948)の『菊と刀』(1946)と並び、権威ある日本人分析書に挙げられる。

 日本人が、いかなる不幸に見舞われようともうろたえたり悲嘆したりしないのは、その心の中に色濃く漂う生への虚無主義的態度で説明される。日本人は昔から、歌や文学作品などを通じ「現世を無常と認識し、軽く眺めることが重要」と教え込まれてきた。人生への無常観は、日本の支配者たちにとって、民衆の不平不満を「眠らせる」効率的な統治原理だった。江戸時代の武士や第2次世界大戦中の神風特攻隊に、命を野の草と同じように感じさせたこの「無常観」は、今日の日本人の中にも、不幸に対し消極的態度を取る心理的免疫法という形で残っている。

 日本人にとって、不幸に処するとき最も容易な「悟り」は、何も言わず、ひたすら耐えることだ。日本人が「無限に耐える」ことができるのは、昔から支配者たちが下々に「問答無用」を強調し、忍耐と服従が最高の美徳だと説教してきたからだ。江戸中期の禅僧・白隠(1685-1768)の梵讃(ぼんさん=仏・菩薩〈ぼさつ〉をたたえるサンスクリット語による詩句)にも「この世は忍耐の世であって、とにかく思い通りになるものではない」という一文がある。何をさせても「はい」と言って服従する習慣を培っていけば、やがて「忍耐」という習性が生まれ、心は安らかに、気立ては穏やかになるというわけだ。南は「絶対服従の結果であるこうした諦念は、何か理由があってのものではなく、無条件な諦念あるいは無気力といえる」と指摘した。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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