鋭い舌鋒は、食料品やガソリンの買い占めに奔走する"節操のない"人々にも向けられた。
「個人個人が必要以上に買い占めに走ってたら、本当に必要な所に回らなくなる。よく海外ではモラルのある日本人が称賛されるけど、現実には自分だけ逃げたり物を買い占めたりする奴らがいる。そのことが俺はすごく悔しい!」
生粋の日本人以上に"サムライ"なラモス氏は、最後にこう語った。
「みんなでもう一度、日本を立て直そうよ! 生き残ってる俺たちが、犠牲になった人たちの分まで頑張らなかったら、その人たちの魂が安らかに眠れないよ」
母親と表現者との狭間で
一方で、いち早く東京を離れる決心をした著名人もいる。
「震災から3日後の3月14日深夜、私は仕事で訪れていたソウルから帰国しました。それから丸1日、福島原発事故の収拾が長引いた場合に放射性物質が11歳になる息子に及ぼす影響について情報を集め、どうするべきかを考えました」
そう語るのは、芥川賞作家の柳美里(ゆう・みり)氏(42)だ。柳氏は現在、首都圏にある自宅を出て、大阪の友人の実家に一時避難しているという。
「放射能の問題だけではなく、自宅近くのスーパーで食料品を入手するのが困難という現実に直面し、これで放射能汚染が水や海水や土壌にまで拡がったら・・・。そう悩んだ末に、3月16日、大阪に"疎開"することを決めました」
首都圏を脱出する決断をした柳氏。放射能汚染に対する不安がつきまとう東日本から離れて関西に向かったのは、母親として我が子を危険に晒すわけにはいかないという信念ゆえの行動だった。だが一方で、文筆業に生きる人間としての葛藤もあったという。
「表現者としては、すぐにでも被災地に駆け付け、自分の足で歩き、自分が見聞したことを書いて、世に問いたい気持ちでいっぱいでした。ですが、母親としては、それは叶わぬこと。私一人なら逃げない。でも、私には子供がいる。何があっても守る責任がある。ちゃんと食べさせて、ちゃんと眠らせて、外に出て遊ばせてやりたい。それができない以上、私は自宅を出ざるを得ません」
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