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Q4 外国人の子どもの学習

外国人の子どもの学習についての問題を憲法学と公共政策から考えてみるよ日本にはたくさんの外国人が住んでいます。大人もいれば子どももいて、日本語の話せる人とそうでない人がいます。日本語を話せない外国人の子どもたちも学校で勉強したいと思うはず。でも、それができないとしたら…

A.「憲法学」からの答え

A.「憲法学」からの答え

日本に住んでいる外国人の子どもたちの中には、日本人と一緒の学校で日本語を勉強したい、あるいは日本語で勉強したいと思う人もいるでしょう。「児童(子ども)の権利に関する条約」という条約があり、日本も締約国になっています。この条約によれば、子どもたちの生存と発達を確保するため、締約国は最大限の努力をすることが義務づけられています。すべての子どもたちに、いかなる差別もなしにそれらの権利を保障することが求められています。では、日本の政府や自治体は何をすべきでしょうか。

日本語が話せない外国人の子どもが日本の学校で日本人と一緒に勉強することは、相互の文化の理解のためには大変いいことですが、その場合、それぞれの国の文化や国語の勉強が十分できない恐れがあり、かえって外国人の子どものためにならないという意見もあるでしょう。日本語が話せない外国人の子どもたちのためには、その国の政府や人々が独自の学校をつくるべきだという見解もあるでしょうし、現にその種の学校も存在しています。日本語や日本文化の学習はそのような外国人学校でそれぞれの国語と並行して行えばいいとも考えられます。

しかし、現実にはそのような外国人学校をつくっているのは、相当数の自国民が日本に住んでいる国に限られています。また、外国人学校は大都市にしかありませんし、そのような学校に通うのは費用等の点でも負担が大きいのです。日本の国はそのような学校を支援すればいいとの意見もあるでしょうが、制度的に難しい問題があります。費用のほとんどかからない日本の学校に通わなければ勉強する機会が奪われてしまう外国人の子どもも少なくありません。しかるべき時に適切な教育を受けることは、子どもの将来の生存のために必要不可欠のことです。子どもは、国籍等によって差別されるべきではありません。これらのことを考えると違った答えも出てきそうです。〔平野武・憲法〕

A.「公共政策学」からの答え

A.「公共政策」からの答え

学ぶ権利は「児童(子ども)の権利に関する条約」ですべての子どもたちに保障されていますが、その実現は必ずしも十分ではありません。日本に住む外国人は、以前は在日コリアンのかたの割合が多かったのですが、近年ではブラジルやペルーなど中南米出身のかたも増え、多様です。日本の学校に通っていて、日本語の指導が必要な子どもたちは約2万2千人、その母語は60ヶ国語以上といわれています(2006年)。日本語を話せず、出身国や文化を共有する仲間が少ない子どもたちが学ぶためには、どんなサポートが必要でしょうか。

子ども自身にとっては、まず、学習の基盤となる日本語の習得や日本文化の理解があげられます。言葉や文化の厚い壁が不登校や早期退学につながることもあります。家族にたいするサポートも重要です。就学の権利や支援についての情報提供の機会はもちろんですが、経済的な事情があったり親が不法就労の状態にあったりすると、よりきめの細かい支援が求められます。また、親がもつ文化や言語を継承することも大事で、難しい課題です。

国や自治体の施策も重要です。浜松市のように独自に教育支援計画を作っている自治体もあります。学校のとりくみも増えてきています。しかし、柔軟できめの細かいサポートが求められるこのような分野では、NPO法人や市民活動団体の活動が大きな役割を果たしてきました。日本語教室、就学相談や情報提供をはじめ、リーガルサポートや生活情報の多言語翻訳など親をふくめた家族への支援、フリースクールなど居場所やコミュニティづくり、日本人との文化交流など、さまざまな活動を展開しています。国や自治体、学校と連携しつつ、国、自治体、また社会にたいする政策提言や課題提起も行ってきました。子どもだけでなく、ひとびとが多様な文化や価値観をお互いに尊重しながら共存できる「多文化共生社会」という理念がその基礎にあります。このように、さまざまな存在が連携協力し、社会の大きな目標や理念にむけた政策を実現していくことが、こんにちの公共政策のありかたでもあります。〔土山希美枝・地方自治〕

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