終わり見えない福島原発事故、反原発の動きに勢い
[東京 8日 ロイター] 東日本大震災で被災した東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所の事故は依然として出口の見えない状況が続く中、日本国内では、これまであまり目立っていなかった反原発の動きが勢いを増している。
政府は2030年までに、総発電電力量に占める原子力発電の割合を現在の30%から50%に高めることを目標にしているが、国内の原発議論が過熱すれば、その達成は難しくなるかもしれない。
福島原発の様子は連日新聞やテレビ、インターネットで報道され、放射性物質の流出を封じ込めようとする取り組みを世界中が固唾(かたず)をのんで見守っている。1986年に起きたチェルノブイリ原発事故以来、最悪の事態に陥っている今回の事故。日本国内では、現在運転中の原発54基の安全性と、政府の増設計画を疑問視する声が増えている。
福島県選出の自民党の吉野正芳衆院議員は6日、記者会見の質疑応答で「原子力を推進してきた立場の1人として、原子力政策をこのまま推進していいかどうか、大いに迷っているところだ」と心情を吐露。「きちんとした検証を踏まえて政治家として判断していかなくてはならないと頭では分かっているが、ただ、体ではもう要らないという立場だ」と述べた。
中国電力(9504.T: 株価, ニュース, レポート)は先月、山口県の上関町で進めている原発の敷地造成工事を一時中断すると発表。上関原発は2018年の運転開始を計画しているが、福島原発の事故を受けて「ムードが変わった」と反原発活動家の1人は指摘する。「原発は安全だという強硬論を繰り返してきた市長たちと議員らは沈黙している。市民も原発は危険だと言うようになった」という。
資源の乏しい日本では、政府はこれまで長く、原子力の重要性を強調してきた。昨年発表されたエネルギー政策では、2030年までに少なくとも14基の原発を増やす計画を明らかにしている。
また有権者も、原発が国内総電力の約30%をまかなう状況にあることに加え、温室効果ガス削減にも寄与するということで、概して原子力エネルギーの役割を支持してきた。
しかし、福島第1原発の事故で多くの地域住民が避難を余儀なくされ、雨水や海水、農産物や魚介類への放射能汚染の懸念が高まるに従い、風潮は変わってきたようだ。
菅直人首相は先週、原発増設計画の見直しを検討する意向を示した。
4月10日投開票の東京都知事選でも、原子力政策に関する議論が1つの大きな争点になっている。有力候補者である前宮崎県知事の東国原英夫氏は「ゆくゆくは原発依存を減らさなくてはならない」とし、東海地震の想定震源域上にある静岡県の浜岡原発については、運転中止も含めた見直しを検討すべきだとの考えを示した。
ただ、原子力の安全性をめぐり、日本国民の世論が一気に反原発に向かうには、依然として長い距離があるように見える。現状では、原発を抱える多くの地方自治体が、政府や事業者からの交付金や負担金に依存している。
同じく4月10日投開票の福井県知事選では、共産党公認で新人の宇野邦弘候補が、3選を目指す無所属現職で原発推進派の西川一誠候補と票を争う。宇野氏の元には、原発停止を涙ながらに訴える有権者が訪れる一方、地方財政の破たんを懸念する声も寄せられるという。
福井県内には国内最多14基の原発が稼働しており、これまで長い間、学校やスポーツ施設、道路の建設などに原発交付金を使ってきた。
宇野氏は電話取材に対し「有権者は心の奥底では、原発はないほうが良いと思っているが、雇用などほかの要因を考え、必要悪だとみなしている」と述べた。
© Thomson Reuters 2011 All rights reserved.
義援金の配分には課題が多い
日本赤十字社の近衛忠輝社長はロイターとのインタビューに応じ、同社に寄せられた義援金を被災者への配分するには乗り越えなくてはならない課題が多いという。 記事の全文 | 特集ページ