成人マークがついた「表示図書」は、区分陳列の対象になっている=千代田区で
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千代田区神田神保町の「廣文館書店」。成人マークがついた「表示図書」は、ひもやビニールで閉じられ、レジに近い一カ所に区分陳列されている。十八歳未満への販売と閲覧を禁じるためだ。都青少年健全育成条例は「不健全図書」に指定した作品に、この区分陳列を義務付ける。
性器を露骨に描くなど「著しく性的感情を刺激する」漫画やアニメが規制対象だったが、昨年十二月の条例改正で、強姦(ごうかん)など刑罰法規に反する行為や近親婚を「不当に賛美、誇張する」作品も加わる。業界関係者は「規制範囲があいまいで表現の自由を制限する」と反発する。
「書くなと言ってるんじゃない。子供の目に触れない所に置いてほしいだけ。表現の自由を制限するつもりはない」と、作家でもある石原慎太郎さん(78)は説明する。成立にあたって、条例の慎重な運用を求める付帯決議がついており、「運用は、いろんな方の意見を聞いて過剰なものにならないようにする」と話す。
渡辺美樹さん(51)は「大事なのは運用。芸術性に対し、行政がさまざまな口を出すことなく業界が自主規制できる形が望ましい。行政があまりに出しゃばると芸術文化は育たない」と主張する。
東国原英夫さん(53)も「あの漫画条例を行政でコントロールしなきゃいけないのか。検閲ではないか。コンテンツ産業、文化は日本経済の要。ここをつぶす気か」と、条例見直しに言及した。
さらに踏み込んだのは小池晃さん(50)。「漫画は誇張するのが一つの大きな特徴。お上が上から目線で取り締まりの対象にするもんじゃない」と、改正条項の廃止を宣言。ドクター・中松さん(82)も「クリエーターの知性は自由にすべきだ。条例改正は廃止し表現者を尊重する」とした。
廣文館の店主丸岡義博さん(65)は「今でもひどい表現の作品は返品するなど、書店として常識的判断はしている。できれば、自主判断に任せてもらいたい」と困惑気味に話す。
新たな規制は、今年七月以降の発行分から適用される。
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