8回、挑戦者マウリシオ・ムニョスを果敢に攻め込む西岡利晃(右)=神戸ワールド記念ホールで
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◇WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦
(8日・神戸ワールド記念ホール)
「日本人は精神的に強いんだ」。西岡利晃はそう心に刻んでリングに上がった。震災復興のシンボルの町・神戸。粟生からつないだバトンを落とすわけにはいかなかった。
9回、1カ月前に痛めた左拳でこん身のストレートをさく裂。そして怒とうの連打、連打…。最後はタメをつくってからのモンスターレフト。パンチを振り回してくるアルゼンチンの荒武者を吹っ飛ばした。王者はコーナーポストに駆け上がり、何度も胸をたたいた。日本人の心の強さを訴えるかのように−。
「こんな大変な時に少しでも元気を与えられたかな。いい勝ち方を見せられて本当にうれしい」
兵庫県加古川市出身の西岡は95年の阪神・淡路大震災を経験。「自宅でした。はっきり覚えています。今回の地震もすごく身近に感じている。正直、気持ち的に落ち込むこともあった」。東日本大震災以後、ジムの近くのホテルに滞在。気持ちを切り替えボクシングに集中した。
これで1973年に23歳の若さでこの世を去った帝拳ジムの先輩、元WBA世界フライ級王者大場政夫さんを超える6度目の防衛。「すごく偉大な方。超えるとか超えないとか考えられない」。先輩超えに喜びはない。
この日は被災者に日本人の強さを見せるための試合。「勝ったし、倒せた。合格点です」。なにより熱い戦いができたことを喜んだ。 (森合正範)
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