「WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ」(8日、神戸ワールド記念ホール)
11年ぶりの地元凱旋となる、兵庫県加古川市出身のWBC世界スーパーバンタム級王者・西岡利晃(34)=帝拳=が、挑戦者マウリシオ・ムニョス(25)=アルゼンチン=を9回3分7秒KOで下し、6度目の防衛に成功した。阪神・淡路大震災から復興を遂げた神戸のリングから、東日本大震災の被災地に力強いエールを送った。WBC世界スーパーフェザー級王者・粟生隆寛(27)=帝拳=は、挑戦者ウンベルト・グティエレス(22)=メキシコ=を4回KOで下し、悲願の初防衛に成功した。
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倒しにいった。9回、西岡は覚悟を決めた。痛めていた左拳はもうどうなってもいい。終了間際、真っすぐな軌道を描いた左ストレートが挑戦者のアゴを打ち抜いた。挑戦者は腰からキャンバスに崩れ落ち、レフェリーがテンカウントをした。史上6位タイのV6は、東日本大震災の被災者に捧げるものだった。
試合1カ月前の練習中に左拳に激痛が走った。痛みは引かず、爆弾を抱えたままリングに上がった。拳を気遣い、序盤は右ジャブと左アッパーを主体に左ストレートを控えた。8回終了後の採点は4ポイント差が2人に3ポイント差が1人。これが後押しし、左ストレートを解禁した。
「今日は我慢のボクシングでした」。試合後の控室で左拳をアイシングしながら振り返り、「前半はジャブとアッパーでかわして、後半は(左拳を)痛めてもいいと思って。被災地、日本全国に元気を感じてもらえたら」と続けた。
負傷に加え、3月11日には東日本大震災が起こった。すぐに帝拳ジムが神楽坂のジム近くにホテルを確保し、神戸入りする5日までホテルからの“通勤”を続けた。試合に対する不安はなかったというが、兵庫県加古川市出身で自身も95年に阪神・淡路大震災を体験。地元神戸で自分の拳で被災者へメッセージを送りたかった。
V7戦は10月に米ラスベガスで行うことが内定している。相手はラファエル・マルケス(メキシコ)とフェルナンド・モンティエル(メキシコ)の元世界王者が候補。「とにかくいい勝ち方ができて良かった。しばらくは休みたいです」。被災地に大きな勇気を与えた34歳のベテラン王者が、今度は自身の夢を果たすために海を渡る。
【写真】西岡が9回KO勝ちで6度目の防衛/西岡利晃、ラスベガスでの次戦「ワクワクする」/魔さか4回TKO負け…長谷川、引退も/粟生、KO初防衛「強い選手とやりたい」/辰吉、一翔ら新旧世界王者が募金活動
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