「WBC世界フェザー級タイトルマッチ」(8日、神戸ワールド記念ホール)
トリプル世界戦の最後に登場したWBC世界フェザー級王者・長谷川穂積(30)=真正=が、挑戦者で同級1位のジョニー・ゴンサレス(29)=メキシコに4回58秒TKO負けを喫し、初防衛に失敗した。2度目の陥落劇。長谷川は進退について明言を避けたが「次やるには相当な覚悟がいる」と、引退もあり得ることを示唆した。西岡利晃(帝拳)と粟生隆寛(帝拳)は、ともにKO勝ちで防衛に成功。
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衝撃のバンタム級王座陥落から1年。長谷川が再び、リングに沈んだ。
「オレが弱かった。それだけ」。さばさばとした表情で、2度目の陥落を振り返った。バンタム級王座を連続10度防衛した“絶対王者”が、フェザー級王座は1度も防衛することなく、わずか3カ月余りでその座を明け渡した。
「悔しい気持ちはありますけど、負けたからには自分が弱かった。次やるには相当な覚悟がいる。簡単に『やります』と言って(再起)できるほど甘くはない。しばらく考えます」
淡々と、引退を示唆する言葉を口にした。長谷川の世界戦をプロモートする帝拳ジム・本田明彦会長は、再起について「なくはない」と明言を避けた。
ゴンサレスの強打をスピードで空転させ、優位に試合を進めたが、一発のパンチで暗転した。4回、まともに右フックを顔面に被弾し、後方に吹き飛ぶようにダウン。「(右フックは)見えなかった。何が起きたか分からなかった」。ロープにつかまりながら立ち上がったものの、足元がおぼつかず、レフェリーが試合を止めた。
強い思いを胸に臨んだ一戦だった。3月11日に東日本大震災が発生し、日本中が未曽有の危機に陥った。兵庫県西脇市出身の長谷川は、自身も中学2年の時に阪神・淡路大震災を経験している。「自分の場合は家のタンスが倒れたぐらい。比べものにならない」と話すが、神戸の惨状は目の当たりにしている。
「こんな時にボクシングなんかしていていいのだろうか」。初防衛戦を1カ月後に控え、激しいトレーニングをこなしながらも、迷いは消えなかった。「正直、練習に集中できない」。複雑な心中を吐露したこともある。それでも「被災地の方が1人でも楽しみにしてくれているなら」と、リングに上がることを決意した。阪神・淡路大震災から復興を遂げた神戸から、復興メッセージを発信すると誓った。
勝利を届けることができなかった。「力を感じてもらうことができず、申し訳ない」と唇をかんだ。倒れても、必ず立ち上がる‐。新たな“復興メッセージ”があると、信じたい。
【写真】長谷川穂積が初防衛失敗 4回TKO負け/泰子夫人「あきらめず頑張ってくれるはず」/辰吉、長谷川の精神的ダメージ気遣う/ゴンサレス、2階級制覇達成に胸張る/粟生、KO初防衛「強い選手とやりたい」
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