枝野幸男官房長官は28日の記者会見で、東日本大震災発生翌日の12日に東京電力福島第1原発1号機で行われたベント(放射性物質を含む排気)について「東電の連絡員を通じて、早くベントを行うようにという指示を繰り返していた」と述べ、首相官邸側から早期実施を再三求めても、東電側がなかなか応じなかったことを明らかにした。1号機では12日午後に水素爆発があり、ベントの遅れが事態の悪化につながったと批判されている。
ベントは原子炉格納容器内の圧力を下げるために行われるが、放射性物質が大気中に放出されるリスクを伴う。
枝野氏によると、12日午前1時半に海江田万里経済産業相が、原子炉の冷却機能が失われた1、2号機にベントを行うよう東電側に指示。午前3時5分、1号機を優先してベントを実施するとの報告があり、枝野氏は同12分からの記者会見で発表した。しかし、実際にベントの作業が始まったのは午前9時4分で、ベントによる圧力降下が確認されたのは午後2時半だったという。
菅直人首相は同日午前6時過ぎ、自衛隊ヘリで福島第1原発の視察に向かい、11時前に官邸に戻っている。視察によってベントが遅れたとの一部報道に対し、枝野氏は、首相の視察はベント実施が前提だったことを強調。「発表した午前3時ぐらいにはベントが始まると想定していたが、首相が出発する6時台でも始まっていないので、早くやらないといけない、と繰り返し東電に求めた」と反論。「事後的な検証が必要だが、少なくともその時点では、東電から十分な説明は得られなかった」と、東電への不信感をあらわにした。
首相の視察に同行した原子力安全委員会の班目春樹委員長は28日の参院予算委員会で「海江田大臣が東電に『とにかく早くベントしろ』と言い続けていた」と強調。首相の視察については「原子力について少し勉強したいというわけで、私が同行した」と述べ「勉強」目的だったとも受け取れる答弁をした。【影山哲也】
毎日新聞 2011年3月28日 20時12分(最終更新 3月29日 3時40分)