◆咬合関連症
顎関節症や咬合関連症は、虫歯、歯周病に次ぐ第3の歯科疾患です。
それでは、どのような症状を併発することが多いかといいますと、まず頭痛、肩こり、手足のしびれに始まり耳閉感、耳鳴り、めまい、聴力低下などの耳症状(コステン症候群)、また顎関節の音や痛みなどに続いて開口障害、さらに腰痛、膝関節痛などに波及することがあります。そして歯科処置による咬合咀嚼機能改善によりそれらの症状が減少することが最近の研究により解明されてきました。

これらの関係が明らかになったのは、ここ数年で、聴力測定装置オージオメータを歯科処置前後に使用し、そのデータの比較検討をおこなった結果、聴力には噛み合わせの状況に対応し即時変化する特性があることが判明しました。つまり左右において噛み癖側に聴力の低下が見られ、咬合バランスを整えることで聴力の左右差が減少しさらにそのパターンにおいても均等化する傾向があるため聴力を咬合のセンサーと考えるに至ることができました。
咬合咀嚼機能が口腔内環境によって左右されること(痛みなどのため噛めない)は言うまでもありませんが、実際、歯科疾患などによる咬合咀嚼機能の動的変化を、咀嚼運動に関連した生体反応(聴力の変化)を利用して計測するなどの試みは、今までなされたことはありませんでした。
聴力変動の機序として、顎関節頭は側頭骨に隣接しており、聴覚機関はその中に存在しています。長期にわたる、偏位咀嚼による偏った咀嚼運動により、
1. 関節頭からの咬合圧による物理的刺激が、側頭骨内部の聴覚器官に直接影響をあたえることが、聴力低下を含む(咬合関連聴力低下や、顎関節症耳症状)となる原因と考えられる。
咀嚼運動に関連する筋肉は、咬筋、側頭筋、内、外側翼突筋があり、
2. 偏位咀嚼はそれに関わる筋肉運動の差をもたらす。東北大学および岐阜大学などによる、fMRIの実験により、咀嚼状況の変化が筋肉運動量の差となり、即時に脳血流に与える影響が報告されており、脳血流の左右差などによる聴覚機関の活性度の差も咬合関連聴覚低下の原因の一つと考えられています。
これらの2つの原因により、偏位咀嚼が聴力低下を発生させ、咬合バランス改善により聴力値の改善が起こることは、我々の、(オージオメータ)による臨床報告から数多く示されています。