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【連載】
「ルータとL3スイッチの違い」を正しく説明できますか?

[第2回] ルータとL3スイッチの真の役割とは!?

(2009年04月15日)

機能比較 その2
インタフェース

ルータ
さまざまなインタフェースに対応

 ルータは、L3スイッチに比べて多種のインタフェースをサポートする。多数のUTPポートを搭載しているモデルもあるが、ボックス型ならば多くて4ポート、シャーシ型のI/Oモジュールでも多くて8ポートぐらいである。光インタフェースも搭載可能だが、実装していても1モジュール当たり4ポート程度である。

 ルータは、UTPのほかにもシリアル、ISDN PRI/BRI、FDDI、HSSI、トークンリング、ATM OC3やATM OC192など多様なインタフェースをサポートしている。

L3スイッチ
UTPと光インタフェースに対応

 L3スイッチのインタフェースで最もポピュラーなのは、UTP形状のものである。UTPケーブルを使う規格としては、10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-Tがある。大きなシャーシ型の場合、1つのI/Oモジュールに数十ポートを搭載したものが多い。光ファイバケーブルを用いる1000BASE-LXや1000BASE-SXをサポートするモデルもある。これらの光インタフェースの速度は1Gbpsであり、ギガビットインタフェースコンバータ(GBIC)やSFP(Small Form Factor Pluggable) GBICあるいはmini-GBICを使用し、ネットワーク環境に合わせてインタフェースを選択できる。高価なL3スイッチでは、伝送チャネルを多重化するCWDM(低密度波長分割多重)に対応するモデルもある。

 現在は、10ギガビットEthernetで基幹ネットワークを構築するケースも増えてきており、複数の10ギガビットポートを搭載する製品も提供されている。10ギガビットEthernetインタフェースには、大きく分けてLAN向けの「LANPHY(10GBASE-LX4/SR/LR/ER)」とWAN向けの「WANPHY(10GBASE-SW/LW/EW)」がある。

機能比較 その3
メインとなる機能

ルータ
WAN接続と多数のプロトコルへの対応

 前述したように、現在のネットワークではより高速な処理が必要とされる。L3スイッチは、ルーティング機能に特化した機器が原型であると言える。したがって、処理速度について言及せずにルーティング機能だけを見れば、ルータとL3スイッチは同じである。

 だがルータは、ルーティング以外にもさまざまな処理を行わなければならない。現在のルータの主な役割としては、WANへの接続とEthernet/IP以外のプロトコルへの対応があげられる。

 例えば、東京と大阪の拠点を接続するために通信事業者の回線を使用する場合を考えてほしい。現在は広域Ethernetというサービスが提供されているが、このサービスが提供されるまでは、ATMやフレームリレーなどのサービスを利用することが一般的だった。また、ISDNなどは10年以上前から使用されているサービスの1つであり、現在でもバックアップ回線などに多用されている。これらのサービスを使用するためには、それぞれに適したインタフェースが必要となる。もともとルータはその役割を担っていたため、さまざまなインタフェースを搭載しているが、大抵のL3スイッチはEthernetのインタフェースしか装備していない。

 Ethernet/IP以外のプロトコルへの対応も、ルータの特徴的な機能の1つだ。対応するプロトコルとしては、IPX、トークンリング、AppleTalk、DLSw(Data-Link Switching)などがあげられる。現在でも、IPXを使用してデータ管理やディレクトリ管理を行っている企業は少なくない。また、銀行などでよく利用されているSNAなどでは、ホストコンピュータへの接続にDLSwなどを用いるが、これはルータでしか対応できない。

 L3スイッチの中にも、IPXやトークンリングのルーティングをサポートしているモデルはあるが、ごくわずかである。なぜなら、それほどニーズが多いわけではないからだ。そのため、ネットワーク機器ベンダーの多くは、L3スイッチに対してEthernet/IP以外を処理する機能は実装していないのである。

 そのほか、「NAT(Network Address Translation)」もルータの代表的な機能の1つである。

L3スイッチ
ASICによる高速ルーティング

 前述したように、L3スイッチはルーティングに特化した機器である。パケットフィルタなどのセキュリティ機能を搭載したモデルもあるが、やはりメインとなるのは高速なルーティングであり、ワイヤスピードで処理することが要求される。

 現在のネットワークでは、さまざまなデータがやり取りされている。IPネットワークに音声データを流すVoIP(Voice over IP)のほか、ビデオ会議のように映像をやり取りするアプリケーションも普及しつつある。これらは、遅延が許されない重要なトラフィックであるため、パケットを効率よく高速に転送する必要がある。そのような背景から、L3スイッチはルーティング専用のASICを搭載することにより、ワイヤスピードの処理が実現されているのである(図6)。

図6● L3スイッチでは、管理パケットのみをCPU(ソフトウェア)で処理し、その他の処理はすべてASIC(ハードウェア)で処理することによって高速なパケット転送を実現している

 ルーティング以外に、サポートするVLANの種類の多さもL3スイッチの特徴だ。スイッチのポート単位でVLANを分ける「ポートベースVLAN」、MACアドレスを基にする「MACベースVLAN」、送信元IPアドレスで分ける「ソースIPサブネットVLAN」、L2ヘッダのイーサタイプで分ける「プロトコルベースVLAN」などがある。

 また現在、L3スイッチに求められている機能としては、QoS(Quality of Service)機能、パケットフィルタリング機能、冗長機能などがある。

 QoS機能は、音声や動画パケットのように遅延に敏感なデータを扱う際に重要となる。通常のデータパケットと区別して、これらのパケットを優先的に転送しなければならないからだ。そこで、L3スイッチによってIPレベルでQoSを設定し、輻輳が生じた場合にも最優先でパケットを転送することが要求される。

 フィルタリング機能は、ある特定のユーザーがある特定のネットワークにアクセスできるようにしたり、特定のポリシーに従ってパケットを転送したりする機能である。アクセスを制御することは、セキュリティ対策としての効果が期待できる。

 冗長化機能は、依存度が高まり、ダウンが許されない状況となった現在のネットワークにおいて不可欠な機能の1つである。特に、ネットワークのコアに設置したL3スイッチに障害が発生した場合には、ネットワーク全体に大きな影響が出てしまうため、特にコア向けのL3スイッチでは、CPUや電源が冗長化されている場合が多い。また、2台のL3スイッチを冗長構成にするケースもある。

 以上のように、ルータとL3スイッチにはさまざまな違いがあり、それぞれ特徴的な機能を実装している。ルータは、時代遅れの機器というわけではなく、さまざまなネットワークをつなぐための重要な役割を担っていること。そしてL3スイッチは、ルータに取って代わるものではなく、肥大化したネットワークに必要な高速処理に特化した機器であるということがご理解いただけたはずだ。

 確かに、L3スイッチがさらに高機能化し、ルータの機能が移行される可能性は残されている。そのとき、ルータはどのように利用されるのだろうか。ここでは、現在、家庭向けと通信事業者/インターネットサービスプロバイダー(ISP)向けに二極化しつつあるルータの役割に焦点を当ててみよう。


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