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きょうの社説 2011年4月7日
◎被災地の産品販売 消費も復興支援と心得たい
福島県や茨城県などの震災・原発事故被災地で収穫された一部の野菜や、水揚げされた
一部魚種から国の暫定基準を超える放射性物質が検出されたのに伴い、問題のない農水産物まで忌避され、売れ行きが落ちているのは憂うべきことである。こうした状況の中、首都圏を中心に、大手スーパーや百貨店などが被災地支援を旗印に 、東北・北関東の農産物や名産品の特別セールに動き出しているのは、当を得た取り組みである。消費者も風評に惑わされず、むしろ積極的に被災地の産品を買うことが復興支援になるのだと心得たい。 被災地の風評被害だけでなく、「消費の自粛」の全国的な広がりで景気が一層悪化する 懸念も強まっている。北陸の温泉旅館・ホテルで予約キャンセルが相次いでいるのは残念である。震災の行方不明者はなお多く、底の見えない福島原発事故が国民の気持ちを重苦しくしているが、それでも、被害を受けなかった人たちは「日常の生活」「ふだん通りの消費」を取り戻すべきときであろう。 東日本大震災による今年の個人消費の落ち込みは、阪神大震災時の2倍以上の3兆円を 上回るという予測もなされている。実際、大手百貨店4社の3月の売り上げ速報によると、関東地区では前年同月より2〜3割も減少し、消費の冷え込みをうかがわせる。北陸の百貨店で、入学祝いや春物衣料の販売などで持ち直しの動きが見られるのは明るい材料である。 流通やサービス業界などは、震災で萎縮する消費者心理を前向きにさせる努力も必要で ある。売り上げの一部を寄付金にあて、被災地支援につなげる商品や宿泊プランなどが出されているが、もう一段の工夫が求められる。 日本の国内総生産(GDP)は個人消費が約6割を占める。生産面からみると、サービ ス業や卸・小売業などの第3次産業が7割以上を占めている。個々人の消費行動が景気を大きく左右する経済構造になっており、必要以上の買い控えや出控えは景気を悪くするばかりで、被災地のためにもならないことを、この際、あらためて認識しておきたい。
◎大相撲再開へ 出直すなら協会も刷新を
大相撲を揺るがした八百長問題は調査対象の力士が引退勧告などの処分を受け入れ、一
つの区切りをつけたとはいえ、全容解明にはほど遠い。日本相撲協会が5月場所を「技量審査場所」として無料公開することになったのは、疑惑が尾を引くままでは通常開催の理解は得られないとの判断があったのだろう。だが、大相撲を再開するに当たっては力士らの処分だけでは十分でない。第三者機関が 答申した組織改革はいまだ手つかずのままである。「無料場所」で一から出直す覚悟を示すなら、理事の外部起用を増やすなど協会の体制刷新を急ぐ必要がある。 一連の八百長問題では、協会が23人の力士らに引退(退職)勧告などの処分を下し、 谷川親方を除いて22人が受け入れた。調査結果に猛反発した力士も退職金が支給される引退の道を選んだが、多くは疑惑を認めていない。グレーのままの幕引きには釈然としない思いもあるが、これが八百長調査の限界なのだろう。 疑惑の動かぬ証拠になった携帯電話のメールは、野球賭博の捜査の過程でたまたま見つ かったものである。これらは氷山の一角といえ、放駒理事長がどれほど否定しようと過去にも八百長があったとみるのが自然だろう。だが、過去にさかのぼっての責任追及は事実上不可能であり、どこかで割り切るのが現実的な判断だった。 八百長は処分を受けた力士だけの問題ではなく、大相撲がこれまで抱えてきた本質的な 問題である。その責任を組織全体で受け止める覚悟がなければ、信頼回復の一歩は踏み出せないだろう。 協会の第三者機関である独立委員会は答申で、相撲協会の現状を「内部ルールが一般社 会のルールと摩擦を起こし、組織としての統率がほとんど取れていない」と指摘した。さらに理事は各部屋を監督する立場で、部屋の師匠と兼務するのは適切でないとした。 今回、弟子が処分された責任を問われて北の湖、九重親方ら3理事が辞任した。これを 機に外部からの補充を含めた組織の抜本的な立て直しに着手してほしい。
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