No566 (2011/04/05)
節電に対する素朴な疑問
東電の電力供給エリアでは供給電力不足を回避するために計画停電を行っているようですが、住人ではない私にはその実態はわかりません。ただとても不思議に思っていることがあります。TVのニュース番組を見ていると節電のためといって夜間の電飾看板や店内照明を落としている飲食店の光景がよく見られるような「気がする」のですが、これは私の勘違いでしょうか?

上の図は東電のHPから拝借したものですが、常識的にはここに示すように電力需要のピークは午後の早い時間に現れ、その後は夜に向かって次第に減っていくものです。工場によってはこの需要のピークを避けて夜間にシフトして操業しているという事も聞きます。つまり、夜間供給電力は現状でも十分余裕があるということでしょう?なのになぜ、夜間の電飾や照明が落とされるのか、私の素朴な疑問です。
No565 (2011/04/05)
情報隠蔽が混乱を招く
相変わらず、政府の情報管制が続いています。気象庁が放射性物質の拡散状況を分析していたにもかかわらず、一切公表してこなかった問題について、昨日の会見で枝野は「国民の中に混乱を招かないため」だったと述べました。類推するに、こうした政府の方針を受けて
日本気象学会も会員研究者に対してこの問題に対して研究・発表を行わないように理事長新野宏が文書で指示したものだと考えられます(財団法人日本気象学会は気象庁内にあります。)。
今回の原発事故関係の官邸、経済産業省(原子力安全・保安院)、東電などによる基本的な事故に関する情報の隠蔽、あるいは放射線障害に対する正確な情報が公開されていないことによって、被災者や国民の間に事故の捉えかたに大きな開きがあることが混乱を招いているのです。
政府はたびたび「基準値は超えていてもすぐには影響の出るレベルではないから安心」と繰り返し宣伝し、マスコミも「政府による正しい情報に従ってください」とこれを追従しています。
放射線被曝による晩発的な疾病の発症において、閾値は存在しないというのが現在の世界的な認識です。自然科学的には基準値あるいはもっと言えば許容値というもの自体が存在しないのです。
この
体制によって定められた基準値あるいは許容値というものは放射線障害に対する受忍限度を示したものであり、体制がここまでの障害は我慢せよと勝手に押し付けているだけのことです。冗談ではありません。自らの健康に対する判断を国家が管理するなどとんでもない話です。低放射線被曝による晩発的な障害の発症には閾値はなく、
障害発症の確率は積算被曝線量に伴って増大するのです。
放射線被曝の影響、特に晩発的な影響の評価が難しいのは、実際に放射線に晒されている間に身体症状が現れないことであり(もし急性症状が顕著であれば、それは死に直結します。)、しかも数年後、数十年後に現れる影響は確率的だということです。仮に、同じ被曝線量を受けた人を診察したとしても、将来あなたは発症し、あなたは発症しないという個別の確定診断は不可能なのです。
あくまでもある被曝線量を受けた例えば1万人の集団があったとしたら、誰かはまったくわからないが、その集団において二人には障害が発症する、ということしか言えないのです。その結果、低線量被曝とその障害の因果関係を定量的、直接的に証明することは困難なのです。しかし、因果関係を証明できないことは安全であり、影響が無いこととはまったく意味が異なるのです。
現在政府は、食べたとしても(急性の)身体症状が出る心配はないから安心という一方で農産物などの出荷制限をかけるという措置をとっています。これはまったく理解不能であろうと考えます。生産者とすれば、なぜ身体症状が出ない安全なものが出荷できないのか、という当然の反発をするでしょう。
反対に、消費者は晩発的な障害を懸念して基準値以下の放射能レベルであっても、例えば福島県産の農産品は放射能に汚染されている可能性が高いので購入しないようにします。これまた
自己防衛のための当然の危険回避行動であって、「風評被害」などと呼ぶものではありません。
放射能レベルが基準値以上であるか、以下であるかということに本来科学的な合理性は無いのですから、こうした
混乱を避けるためにはまず行うべきことは、全ての汚染状況を公開することです。そして、放射線について、晩発的な影響も含めて全ての正確な情報を国民に提示することです。その上で国民が自らの判断でこれに対処するしか方法はないのです。
人が自分の納得した行動をすることは本質的な権利であり、公の名の下に情報を隠蔽して体制の定めた基準に従わせることで秩序を保つというのは戦時国家、あるいはファシズム体制です。
今回の
福島第一原発事故で、図らずも行政や民主党政権の行動様式は「よらしむべし、知らしむべからず」という愚民政策を基本としており、戦前戦中の国家体制と変わるところがないということが明らかになりました。このような国の政府がお隣の国に向かってとやかく言うのは誠におこがましい話です。まず自ら律せよ!
No564 (2011/04/04)
拝啓、社民党福島みずほ様
まだ福島第一原発事故は始まったばかりですが、福島後を見据えた日本のエネルギー戦略が早くも議論され始めています。
さすがに民主党政権、あるいはこれまで原発を推進してきた自民党も、福島第一原発事故を受けて、今後も『積極的』に原発推進ということは言えなくなってきています。当面、原子力発電所増設の新規事業計画は凍結される公算が強いのではないかと考えます。ただ、それはあくまでも『当面』世論をかわすためである可能性が強く、本質的なエネルギー政策の転換と、既存原子力発電所の段階的廃止を訴え続けていかなくてはならないと考えます。
さて、ポスト福島第一原発事故のエネルギー政策をにらんで、社民党の福島みずほ氏が菅直人に申し入れを行いました。私は、原発政策においては社民党を無条件に支持しています。
2011年3月30日
内閣総理大臣 菅 直人 様
社会民主党党首 福島みずほ
脱原子力と自然エネルギーへの政策転換を求める申し入れ
―福島第一原子力発電所事故をうけた社民党の緊急提案―
福島第一原子力発電所の事故被害は日々拡大を続け、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と並ぶ史上最悪の事故となる可能性も指摘されています。周辺住民をはじめ多くの国民の生命が危険にさらされ、世界各国の人々にも不安を与えています。東京電力や原子力安全・保安院、原子力安全委員会、政府対策本部の、後手に回る対応や事故情報の開示不足が、人々の落胆と不信感を招いています。
事故の鎮圧に向け24時間体制で取り組む現場の努力に敬意を払いつつ、社民党も事故の一日も早い収束に向け、政府に対し可能な限りの協力をお約束いたします。
その上で、こうした事態をうけ、社民党は、今こそ原子力安全規制を抜本的に強化し、原子力依存からの脱却と自然エネルギー推進へと政策転換を行う時であると確信します。社民党はこれまで、一貫して脱原発政策と、原子力発電所等の安全性確保を主張してきた立場から、以下、提案いたします。
記
1. 福島第一原子力発電所事故の一刻も早い収束に全力を尽くすこと。
@ 人々の不安・不信を払拭すべく、事故情報の徹底開示を行い、我が国と世界の総力を動員して事故の早期収束に全力を尽くすこと。
A 食品、水道水等の規制値や緊急作業員及び一般公衆の被曝限度をこれ以上は緩和せず、被曝のリスクの説明を改善するとともに、被害の最小化に全力を尽くすこと。
B 予防的な視点に立ち、国民および周辺諸国民の生命・財産に対する被害を最小限に抑えることを、最優先の政策目的に据えること。
2. 安全・安心確保のために原子力施設の停止に踏み切ること。
@ 福島第一原子力発電所の廃炉を速やかに決定すること。
A 中部電力・浜岡原子力発電所をはじめ地震や津波被害の危険性が極めて高い原子力施設を、廃炉を視野に即時停止すること。
B 老朽化が指摘される原子力施設は、延命させずに当初の設計寿命もって廃炉にすること。
C 今回の事故の経験をふまえ原子力安全指針・基準を抜本的に強化したうえ、独立性の高い安全規制機関による徹底した安全点検と安全対策を講じること。同時に、国民参加の論議の枠組みを作り、国民の合意が形成されるまで、すべての原子力施設を停止すること。
D 核燃料サイクル技術が確立しない中で、事故の相次ぐ高速増殖炉もんじゅや、六ヶ所村核燃料再処理施設を停止すること。プルサーマル計画も即時撤回すること。
E 中国電力・上関原子力発電所をはじめ新規の建設・増設計画をすべて凍結すること。
F 原子力施設・技術の海外展開計画をすべて凍結すること。
3. 福島第一原子力発電所事故の真相究明体制を早急に確保すること。
@ 事故の事後処理については、経産省・資源エネルギー庁任せにせず、政治主導で行うこと。
A 事後の福島第一原発事故の徹底検証のために、情報保全を確実にするとともに、経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会、東京電力から独立した検証委員会を、事故収束後速やかに設置すること。
4. 原子力安全規制行政の大胆な改革に着手すること。
@ 原子力安全・保安院を経済産業省から切り離し、原子力安全委員会と統合して独立性の高い安全規制機関に改組(日本版NRCの設立)すること。
A 現在の委員とその選任過程を徹底的に見直すこと。
5. エネルギー政策の抜本的転換に向けて措置をとること。
@ 原子力に頼らないエネルギー政策への抜本転換の検討を開始し、とりわけ自然エネルギーの大胆な促進をはかること。
A エネルギー政策について、経産省・資源エネルギー庁任せにせず、政治主導で政策転換を図ること。
B 東西周波数変換装置の容量拡大、既存電力会社の地域独占の廃止、発送配電分離、総括原価方式の見直し、自然エネルギー電力の系統優先接続等、電力供給体制の完全自由化を図ること。
C 自然エネルギー政策を経産省主導から政治主導に転換し、環境税、排出量取引制度、自然エネルギー電力の固定価格買取制度を早急に導入すること。
D 風力発電や太陽光発電、太陽熱・地熱利用、バイオマス利用の推進や燃料電池などの新技術開発等を促進するとともに、そのための大胆な投資と適切な政策目標の設定をはかること。
以上
しかし、残念ながら社民党は科学的な分析能力のある政策立案者がいないために、人為的CO2地球温暖化脅威説を疑わず、原子力の代わりに自然エネルギー発電の導入を党の方針としたままです。
実は、だめもと(笑)で福島氏には何度か自然エネルギー導入促進を止めるようにメールで進言したことがあるのですが、まったく無視され続けています。今回の菅直人への申し入れでも相変わらず自然エネルギー発電の導入促進を挙げています。
もう一度改めてお願いします。人為的CO2地球温暖化仮説と自然エネルギー発電に対して、科学技術的に徹底的に再検討することを強く望みます。さもなければ、社民党も科学的な裏づけのない原子力発電を無謀にも推進してきた自民党や菅民主党と同レベルの過ちを繰り返すことになります。
No563 (2011/04/04)
放射能生体蓄積量のまやかし
さて、TVや新聞報道でもこのところさすがに内部被曝の問題が紹介されるようになりました。しかし、ここでまたしてもとんでもない説明が横行しています。
最近の報道でよく聞くようになったのが放射性物質の半減期あるいは生物学的半減期です。これについては既に
No.547『外部被曝と内部被曝』で説明したとおりです。今回の説明で必要な部分を再掲しておくことにします。
半減期
放射性物質の半減期とは、放射性物質が原子核崩壊を起こし、その量が半分になるまでの時間のことである。放射性ヨウ素T131の場合についてその減少の様子を次の図に示す。放射性ヨウ素T131の半減期は約8日であるから、8日後には1/2になり、16日後には(1/2)
2になり、24日後には(1/2)
3・・・・と減少していくことになる。
生物学的半減期
生物体を構成する物質はある期間で代謝する。生物体を構成する物質の半分が入れ替わる期間を生物学的半減期と言う。体組織の部位や物質の種類によって生物学的半減期は一定ではない。
実効半減期
放射性物質の半減期と生物学的半減期の双方の効果から、体内に一度に取り入れられた(追加の定常的な摂取が無いとした場合)放射性物質の残留量が半分になる期間を実効半減期と呼ぶ。
1/(実効半減期)=1/(半減期)+1/(生物学的半減期)
主な放射性核種 | 半減期 | 生物学的半減期 | 実効半減期 | 蓄積部位 | 主な放射線 |
ストロンチウム Sr90 | 29年 | | | 骨 | β線 |
ヨウ素 I131 | 8日 | 180日 | 7.7日 | 甲状腺 | β線 |
セシウム Cs137 | 30年 | 70日 | 70日 | 全身(筋肉・生殖器) | β線 |
プルトニウム Pu239 | 24100年 | | | 肺など | α線 |
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上の図を生体が取り込む放射性物質量の時間変化を示すグラフだと読み替えてください。ある短い時間dtの間に環境から体内に取り入れられる放射性物質の量はq(t)×dt(上の図の斜線の面積)になります。もし、それ以後放射性物質を取り込まないとすれば、下の図のように体内に残留する放射性物質の量は減衰していきます。
ところが、既に放射性物質が生活環境に拡散している場合には、生体は環境から継続的に放射性物質を取り込み続けることになります。ここでは問題を単純化するために、生体が環境から単位時間当たり(ここでは仮に1日当たりとしましょう。)取り入れる放射性物質の量q(t)=q(一定)とし、減衰の特性を表す数値kも変化しないものとすると、生体内に存在する放射性物質量はある定常値Qに収束します。その値は次の通りです。
Q=−q/k
kは、放射性物質の減衰の特性を表す数値です。
q・dt・ek(t1-t)=0.5q・dt ∴ek(t1-t)=0.5
上式を満足する時間(t1−t)が半減期になります。放射性ヨウ素131について考えることにしましょう。
ヨウ素131の実効半減期は7.7日でした。これからkの値を求めてみます。
e7.7k=0.5 ∴7.7k=ln(0.5) , k=-0.09
(ln は自然対数, lnA=logeA)
になります。したがって生体内に蓄積し続ける放射性ヨウ素131の量は、
Q=−q/k=−q/(−0.09)=11.1q
つまり、生体内には生体が一日に取り込むヨウ素131の量qの11日分が定常的に存在し続けることになるのです。
生活環境が既に放射性物質に汚染されている場合、生体はどのように注意しても必ず少量の放射性物質を取り込み続けることになります。
例に挙げたヨウ素131の場合には、環境中のヨウ素131の量が半減期8日で減衰していきますから、qの値が急速に小さくなっていくことになります。ところが、セシウム137の半減期は30年になりますから、環境から取り込まれる放射性物質の量qは短期的にはほとんど変化しないと考えて差し支えありません。セシウム137について計算すると
e70k=0.5 ∴70k=ln(0.5) , k=-0.0099 , Q=101q
つまり、環境から1日に取り込むセシウム137の量の101日分が体内に存在し続けることになるのです。
これを考えると、現在行われている環境の放射線レベルを計測して『安全だ』などというのではなく、生活環境の土壌がどの程度放射能によって汚染されているのかを調査する必要があるのです。
No562 (2011/04/03)
再録 原発解体
福島第一原発1〜4号機は廃炉が決定しました。おそらく今回の事故がなければ、如何に原子力発電の廃炉・解体作業が手間のかかる作業であるかに思い至る方は少なかったのではないかと思います。
日本が原子力発電に着手して以来、廃炉・解体工事が完了した商業発電用の原子炉はまだありません。ただ1件廃炉実験が完了したのは日本原子力研究所(原研)東海研究所の動力試験炉(JPDR)だけです。
その後、日本国内最初の商業発電用原子炉の廃炉・解体工事として2001年12月に着手されたのが現在進行中の日本原電の東海発電所(炭酸ガス冷却型/電気出力16.6万キロワット)の原子炉です。これは日本の商業発電用原子炉としてはごく小型です。この原子炉の解体工事が開始されたときに書いた
No.026『商用原子炉の廃炉』(2001/12/04)を再録しておきます。
国内商用原子炉第一号である、日本原電の東海発電所(炭酸ガス冷却型/電気出力16.6万キロワット)の解体作業がこの12月から始まります。
この原子炉は1966年7月に操業を開始し、1998年3月に既に運転を停止しています。32年間の寿命でした(稼働率を考えると、正味の操業期間はどの程度なのでしょうか・・・?)。これから始まる解体作業は、原電の工程表によりますと終了するのは2017年、実にまる15年後になります。
このような長期間を要するのは、いかに原発が扱いづらい発電システムであるかを象徴しています。それどころか、放射性廃棄物の最終的な処分技術さえ未だに確立していない今日、この原電の工程がそのまま実行できるとは考えられず、実際にはより長期間を要すると考えるべきでしょう。
廃炉の解体処理実験は日本原子力研究所(原研)東海研究所の動力試験炉(JPDR)で行われています。1981年から解体に着手し、実際の解体は86年から開始され、96年に終了しています。しかし、解体作業が終了しても、それで全てが終わるわけではありません。原研では放射性廃棄物のうち、極低レベルのものは敷地内に埋設し、50年間程度管理する実験を行っています。その他の放射性廃棄物は処分方法が決まらないまま、施設内に保管されています。そのほかにも莫大な『非』放射性廃棄物が残されることになります。このJPDRでは、24,440トンの固体廃棄物が発生し、解体費用だけで230億円を要しました。放射性廃棄物の管理費を加えると途方もない処理費が発生することになります。
今回の東海発電所の原子炉は、商用の原子力発電所としては極小規模なものですが、それでも177,300トンの固体廃棄物が発生すると見込まれています。最終的な安全な処理方法の確立のみならず、処理費の経済的な負担を一体どうするのかも、大きな問題です。
明らかなことは、原発の発電コストは極めて高価なものであること、放射性廃物による環境汚染が避けられないということであり、私たちは、将来世代のために少しでも早く原子力エネルギーから脱却すべきであるということです。
<東海発電所 廃止措置計画の概要>
1. 廃止措置の全体計画
(1)計画の概要
・ 東海発電所の原子炉、附属設備及び建屋を解体撤去し、更地の状態に復することを基本とする。
・ 原子炉領域については、約10年間の安全貯蔵の後、解体撤去する。
・ 原子炉領域以外の附属設備等は、安全貯蔵期間開始時点から順次解体撤去する。
・ 廃止措置は、長期(約17年間)に亘る計画であるため、工程を(2)の通り分割し進めていく。
(2)工 程
第1期工事 平成13年度〜17年度(約5年間)
:準備工事、使用済燃料冷却池洗浄・排水、燃料取替機・タービン他附属設備撤去 等
第2期工事 平成18年度〜22年度(約5年間)
:熱交換器他附属設備解体 等
第3期工事 平成23年度〜29年度(約7年間)
:原子炉本体解体、各建屋解体 等
(3)着手予定時期
平成13年12月4日
(4)放射性廃棄物の処理処分方法
・ 解体で発生する放射性廃棄物は性状に応じて減容、固化等の処理後、容器に封入し、最終的には埋設処分する。
・ 埋設処分先は第3期工事(原子炉本体等解体工事)前までに確定することとし、確定できない場合は、安全貯蔵期間を延長する。
・ 第1期及び第2期工事で発生する放射性廃棄物は少量であり、既設の貯蔵設備で第3期工事を開始するまで一時保管を行う。
2.第1期工事の計画
・安全貯蔵措置
主ガス弁等の閉止などの系統隔離により原子炉領域の安全貯蔵措置を行い、期間中は安全貯蔵領域の解体は行わない。
・解体準備工事
解体工事に必要な電源設備改造などの整備工事を実施する。
・使用済燃料冷却池洗浄・排水工事
使用済燃料冷却池内の水中機器を洗浄し撤去した後、冷却池壁面を洗浄しつつ排水する。
・附属設備撤去工事
燃料取替機・タービン他附属設備撤去などを実施する。
・放射性廃棄物の処理
第1期工事で発生する放射性廃棄物は僅かであり、容器に収納し既設の貯蔵設備に保管する。
3.廃止措置に要する費用
・見積り総額は、約930億円。
以上

このように正常に運転を終了して原子炉を廃止する場合でも、解体工事を行うだけで15年間もの期間が必要になるのです。解体工事中の日本原電東海発電所の原子炉は僅か
出力16.6万kWの小型原子炉ですが、それでも解体工事費用は計画段階で930億円、固体廃棄物の量は177,300tにも及びます。
しかも、今もなお放射性廃棄物の最終処分方法は決まっておらず、最終処分施設の建設、そして長期間に及ぶ(高レベル放射性廃棄物では1000年以上)管理に対して今後一体どのくらいの費用が必要なのか、まったく見当もつかないのです。
福島第一原発は、1号機の出力46万kW、2〜4号機の出力は78.4万kWであり、通常の廃炉・解体作業であったとしても、一基当たり数千億円の解体費用が必要であり、全部で数兆円が必要になるでしょう。固体廃棄物の量は数100万トンにも及ぶことになります。
重大な事故を起こした福島第一原発の場合は更に難しい作業になることが明らかです。仮に幸運にもこのまま炉心の冷却に成功したとしても、スリーマイル島原発では原子炉の中を確認できるまでに6年程度の期間が必要であったことを考えれば、福島第一原発でも同等以上の期間が必要になるでしょう。しかも固体廃棄物は炉心の破損によって通常では考えられない高レベルの放射能に汚染されています。
放射能汚染レベルを考えれば10年オーダーの冷却期間をおいたとしても、作業員によって通常の解体作業が行える可能性はかなり低いのではないでしょうか。結局通常の解体作業は行われず、チェルノブイリ原発同様、冷却しながら周囲を『石棺』で覆い、数十世代(?)にわたって管理し続けることになる可能性が高いと考えます。その費用は想像もつかない額に膨れ上がることになります。
もし途中で管理を放棄すれば高濃度の放射性物質を環境中に漏洩することになるのです。チェルノブイリ原発では現在も汚染された石棺を維持するためだけに数1000人が被曝労働を続けています。石棺が建設されて25年が経過し、既に劣化が激しく更に石棺の外側を覆う工事が必要となっています。おそらく福島第一原発も同じような経過を辿る可能性が高いと考えられます。何と憂鬱な負の遺産なのでしょうか。
No561 (2011/04/03)
原発事故と日本気象学会
今回は少し原発を巡る生臭い話をすることにします。とはいえ、これが原子力事故の遠因であるとも考えていることです。
最近また有名になりましたが、1979年の米国スリーマイル島原発事故(炉心溶融)、その7年後の1986年の旧ソビエト連邦ウクライナのチェルノブイリ原発事故(核暴走・爆発事故)によって世界的に脱原発の機運が高まりました。
そのような中で、南極とハワイで大気中CO2濃度の連続精密観測を行っていたC.D.Keelingは、彼の観測結果から、大気中のCO2濃度の増加は人為的に放出されているCO2放出量の半分に相当する量が蓄積していると考えられるとしました。また、第二次世界大戦後1970年代半ばまで続いた世界的な寒冷化傾向は一転して継続的な気温の上昇傾向を示すようになっていました。
この二つの事象を繋ぎ合わせることによって『人為的に放出されたCO2の増加が大気中のCO2濃度の上昇をもたらし、大気中のCO2濃度の上昇による大気の温室効果の増大によって気温が上昇し、このまま気温が上昇すると生態系に壊滅的な打撃を与える』というシナリオに基づいて『人為的CO2地球温暖化脅威論』が作り出されました。1988年の米国議会上院エネルギー委員会においてNASAのハンセンは人為的CO2地球温暖化は確実に進行していると証言しました。
この
人為的CO2地球温暖化仮説は発電用の燃料として化石燃料を使用しない原子力発電を売り込むためには絶好の気候変動理論でした。そこで斜陽化しつつあった米国の原子力関連企業はCO2地球温暖化仮説を主張する気象ないし関連分野の研究者の強力なパトロンとなり、資金援助を行いました。こうして気象分野の研究者と原子力関連企業の間には強い利害関係が生まれたのです。
この状況は日本でも同じです。日本気象学会は、学会組織として人為的CO2地球温暖化仮説を支持し、これに意義を唱えるような研究成果に対しては論文発表だけでなく、年次大会における口頭発表までも拒否するという学問の自由を否定するという異常な行為すら厭わぬようになってしまいました。
物理学者の槌田敦氏と私は2006年以後、この問題について検討してきた結果、気温の変動によって結果として大気中CO2濃度の時間変化率が制御され、大気中のCO2濃度が変化するという関係を示し、気象学会に2編の論文を提出しましたが、日本気象学会誌編集委員会は何ら自然科学的に見て合理的な説明を示せぬまま掲載を拒否しているのです。
また、
『原子力ルネサンス』を提唱している三菱総研理事長小宮山宏(前東大総長)は東大在任中に、同大理学部教授住明正に指示して気象学会主流の若手研究者などを利用して人為的CO2地球温暖化仮説に対して異議を唱える研究者の一掃を目的に国費を投入して東大IR3S叢書『地球温暖化懐疑論批判』という冊子を作り、私や槌田敦氏を含む論者を名指しで誹謗中傷させました。また、小宮山宏は民主党政権における内閣府国家戦略室政策参与に就任するなど、原子力業界の利益代表として政府内にも食い込み、原子力発電を推進する菅直人とも強い関係を持っています。
こうした産・官・学のどろどろの癒着構造が、国民の福祉とは関わりの無い金の理論で産業構造を暴走させていることをしっかり見て欲しいと思います。
自然科学・工学分野の研究者とは科学的真理を追及する者という認識が一般的ですが、残念ながら事実はまったく違います。彼らはパトロンを得るためならば平気で嘘を言う悲しい人種になってしまったのです。おそらく、福島第一原発事故以来、TVに登場する『センモンカセンセイ』や東電の技術屋たちを見ていて、多くの方もそれにうすうす気がつき始めたのではないでしょうか?
さて昨日、このホームページの読者からまた衝撃的な情報を頂きました。
2011年4月2日 11:01
近藤様
ご無沙汰しています。**と申します。
日本気象学会幹部のでたらめぶりには呆れるばかりですが、ついに下記のような「言論統制」まがいのことをやり始めたようです。戦前の大本営発表と同じです。
日本気象学会のウェブでは見あたりませんが、メーリングリストを通じて流れてきました。私自身ソース確認はできていないので、気が引けましたが、お知らせします。

つまり、福島第一原発事故に関しては、政府から公表される唯一の情報を正しいものとして、これに従うべしと言っているのです。これでは正に戦時における大本営発表に従えと言っているのと同じです。
福島第一原発事故は空前の大事故ですから、このような時こそ専門分野の研究者の頭脳を結集した多角的な検討を行いよりよい対応を行うことこそ重要であり、むしろ日本気象学会の頭脳を総動員して関連分野の検討を行うべきものであると考えます。この新野宏(やはり東京大学・・・)の指示はまったく逆であり、日本気象学会組織が会員研究者の学問の自由を拘束するものです。何という組織なのでしょうか。
槌田−近藤論文の掲載を拒否するという人為的CO2温暖化仮説に対する気象学会誌編集委員会の対応もこうした気象学会の体質を体現したものなのだと理解できました。つまり、気象学会員であれば政府の支持する人為的CO2地球温暖化仮説こそ真実だと信じ、それに異議を申し立てることはしてはならないと。
最後に、沖縄高専の中本教授から頂いたメールを紹介しておきます。
近藤邦明さま
CC:槌田敦先生
「気象学会理事長もここまで変質してしまったのか」と嘆く気になるのが普通の気象学会員かもしれませんが、しかし普通の気象学会員でも一旦、理事や理事長などに囲まれていると御用聞き商人の習性(大本営発表を担う心)が身につくのだと想像してしまいます。
それでも気象学会会員のなかにもこの緊急時点における気象学会理事や理事長らの思想と行動を情報を外部に出してくれている人がいるのは、やはり近藤さんや槌田先生の運動が継続しているからこそです。
原発事故いらい、この沖縄高専の機械システム工学科の中の東電支持の若い准教授と私の間で、東電原発事故論争が始まりました。「こんな緊急事態にたいしてわたし(中本)自身はなにも行動をしないで、沖縄高専教員会議という地位のままで評論家然として偽善家のごとく時間を無駄にしているだけではないか?」との自責の念にもかられます。「この時点で御用学者と東電を批判するわたし(中本)は悪者だ」とする大勢の批判にたいして沈黙している他の教授先生がたも心の中では何かを感じているような気もいたします。
中本 正一朗
沖縄高専機械システム工学科教授