彼の去った世界、
もはや、何もかもに色が失せてしまった
けれど、約束した
約束…するよ…いつかまた、どこかで君と出会うって…
それが現実となるならば
貴方は喜んで迎えてくれますか?

悲喜

「…何日目だ?」
「…もう一月は経ってるわ」
暗い世界が広がる
天候は未だに明るいというのに、部屋そのものには暗いものが漂っている
しかたないものといえば仕方がないのだが
一月前からある男がいないのである
フラットの一員として魔王を送還した誓約者の一人
新堂勇人、それが男の名前
「あいつはどうしてるんだよ?」
口に浮かぶ「あいつ」とは話題の主役であるハヤトの事ではない
彼の事を一番に想っていた少女のお話である
「駄目よ、今は部屋にずっと閉じこもりちゅうなの」
「無理もないだろう、今まで方法を探し続けてきたのに、見つかっていないのだから」
レイドの語った事は事実である、
彼が消えてから、彼女は一途に、単純に彼の世界へ行く方法を探し続けていたのだから
彼を元の世界に帰すつもりだったのだが、今は自分が行く方法を探している
元々、彼が元の世界に戻る方法も正確には見つかってはいなかったのだ
ただ、結界を張るときに送還の光によって帰ってしまっただけのこと
そして、次はその世界へ行く方法である
帰す以上に厳しく、そして結界のある世界の中で、ほぼ不可能に近いことである
そう、不可能という言葉で表すことができるのである


「駄目…これも参考にはならない」
一心不乱に大量の書物に手を出し、方法を探しているのは少女、クラレットである
先に彼等が話題に出した少女の事である
先に記したとおり、少女はハヤトの世界に行く為に毎日のごとく、書物を研究していっているのである
手がかりは一つもない、指に乗るほどもない
記してあるのは「召喚」のことのみであり、別の世界に「召しかかる」ことは何一つ書かれていない
今まで過去にそんな現象が起きたことはないのだから当然といえば当然なのであるが
それでも少女は捜し求めた
彼といたい、その気持ちだけで
すると
「クラレット」
声が聞こえた、確実に、間違いなく
彼の声だ
いなかったはずの彼の声だった
少女は聞こえた先の声に振り向く
彼だ、確かに彼がいた、何故ここにいるのかという疑問よりも彼がいたということが何より嬉しかった
「ハヤト!!」
一目散に駆けた、嬉しさがこみ上げ、「ハヤト」という言葉以外に何も頭になかった
駆けた、彼の元へ、足がもつれるようなくらいに
だが、現実に起きたことは何もかもに残酷な現状を表した
少女は飛びついた、目の前にいる彼に、
だが、次の感触は熱を帯びた身体ではなく、冷たい木の床だった
確かに、彼に飛びついた
だが、それは望まれなかった、彼に触れることが、
すり抜けた、彼の体を…そして少女は床に倒れたのだ
「どう、して…?」
彼の顔も笑顔ではなかった、泣きそうな顔ではなかった
そして彼は口を開く
「ごめん、クラレット…俺、君とは一緒にいられない」
そう彼は悲しそうに口を開くと、体から光が輝く、いや、体が光の粒になってきているのだ
つまり、体がだんだんと消えていっているということ
「待って…行かないで・・・ハヤ…いや、いや・・・行かないでハヤト…ハヤトォォォォォォォォ!!」
そして彼の体は少女の叫びも届かず、空しく光となった

「いやぁ…」
体が不意に起きた
「…夢?」
少女の世界は布団の中だった、
布団を汗で濡らしている…涙も混じっているかもしれないが、それはわからない
ただ、分かるのは、今見たものが幻想であったこと
だが、彼女の中である感情が芽生える
自分が彼の世界に行くのも、只の自己満足ではないのか、彼にとって自分は必要ではないのか
「私なんて…要らなかったのでしょうか…」
そこまで口に出すと少女は近くのシーツを手元に集め
顔を埋め、外に聞こえないように涙を流す
「―――ハヤト…―――」


次の日、彼女は外に出て、久々の新鮮な空気を吸っていた
「こっちだよっと!!」
「待ちなさいよアルバ!!」
戦いの終わりから外ではこのように子供達が遊んでいるところが見られる
微笑ましい、といえば微笑ましい
少女から見てもそれは感じ取ることが出来た
彼女の顔は微笑んでいた、疲れきった笑みを浮かべながら
ましてやあんな夢を見た後である、疲れ以外の表情も浮かんで当たり前である
極力疲れを表さないように、彼女は歩いていた、
気がつけばその足取りは、彼がよくいたアルク川に向かっていた
無意識のうちに彼を求めているかのように
彼がいないというのに、なんとも空しいものである
それでも彼女の足はアルク川へと続いていく
何も無かった、当然といえば当然であるが
だが、何時も彼がここで釣りをしていた事を思い出す
自分が傍で彼の釣りを見ていながら
笑みを浮かべながら釣りをしていた顔を思い出す
私は彼の様に釣りもできなかった
少女は只、その景色を、いや彼の横顔を眺めていた
第三者で彼を見るようにも見えたのだが
そうして何度も何度も彼の顔を思い出す
もう会えないのかもしれないという恐怖もある
だから少女は思い浮かべる、
彼の顔を、いつまでも覚えていたいが為に、彼と繋がっているように
川は綺麗に流れ続け、彼女を写し続けた


――――い…――――
「…え?」
川で彼を思い浮かべているとき、少女の耳に入ってきた言葉
「何…?」
―――あ…―――い…――――
ああ、まただ、またどこからともなく声が聞こえてくる
少女の耳に何度も聞こえてくる声
その声には、暖かみが感じられる
「誰…?誰かいるの…?」
少女はあたりを見回すが、何一つ変わった様子は無い
まただ、またその声が聞こえてくる
―――会いたい…―――
「会いたい…?」
聞こえる、この声は…
紛れも無い、彼の声だった、聞き間違えることは無い、ずっと彼の事を考えていたから
「ハヤト…?」
―――もう―――会いたい―――
「…私も貴方に会いたい…」
声が止まることは無い、
何度も何度も少女の耳に飛び込んでくる
―――もう一度…お前に会いたい!!―――
「―――!?」
声が完全に聞こえた時
少女を大きな光が包み込んだ
ああ、これは召喚術の光と同じだ
そう分ったときには少女はその光の中枢に埋まっていた


瞑った目を開けた
未だに煙が大きく、周りの現状を把握することは出来ない
けれど、床の硬さから言って、室内であることは間違いない
衣服が少し、破けてはいるのだが、そんなことを気にしていられる場合ではない
煙がだんだんと晴れてきた
声が聞こえたときの心からの期待が叶ってくれた瞬間でもある
周りには、少女の知らないものがたくさんある
だが、そんなものに気にして入られない
彼が目の前に立っているのだから
彼女は彼に笑いかけ
口を動かした

「もう一度…約束してください、何があっても…これからはずっと一緒だって…!!」

見慣れない服の彼は少し、顔を染めながらも
「ああ、約束するよ…クラレット、これからはずっと一緒だ」
答えてくれた
夢ではない、現実に
何の原理でこんなことになったのかはわからないが
全て幸せへの片道になるのだから
何も問題は無い、いや問題があるはずが無い

「これから…よろしく、クラレット」

幸せの家は、もう決まっていた
道が険しいのかどうかはわからない
けれど、少女は諦めないだろう
その険しさが
彼と会えないという悲しみに勝ることは無いのだから



〜fin〜



後書という反省会
再会後の小説の方が再会前の小説より多そうなので書いてみました
どうやってクラレットはあの世界に行ったのかなぁ…
正直サモンナイトやってても全く分からないんですよね
っていうかそこを詳しく記されていないし…
不満といえば不満ですが、おかげでこんな小説も書けたのでまぁいいや
勇人が召喚されたとき、クラレットの「助けて」って声から事故で召喚されたって事を思い出し、
ならばやっぱりクラレットがこの世界に来るときもEDのときの「もう一度お前に会いたい!!」って声が聞こえたのかな…
そんな風に考えて見ました…地球は召喚術は使われてませんが、使えば出来るのかもしれないって考えでもあります
ってかそれじゃないとクラレット来れないよな…

そして勇人は誓約者なんですから無詠唱召喚が出来る、だからこそ「会いたい」と願ったら来てくれたと…
うん、これならおかしなところは無いはずだ…そう考えてみました
まぁ、何だ、その場合…なんで服がぼろぼろだったのかっていう説明が出来なくなるんですけどね;
それはきにしなーいきにしなーい、OK?

by楓ぱっく

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