「なんだこりゃ…」
ケイブリスは困惑していた。
茶飲み友達のアルフガレドから(男であることはさておき)バレンタインのチョコをもらったはいいが
その形があまりにも…だったからである。
アルフガレドは料理下手ではない。むしろその腕前はそこらのシェフなら裸足で逃げ出してしまう程である。
それがどうしてこんな不細工なチョコレートを作るのか、と
「まあ、失敗することもあるか…」
とりあえず、おそるおそる味を見てみることにする。
「ん…ちょっと苦いが食えない味じゃあないな…」
味の確認をしたので(安全確認をしたので)一口でチョコを丸呑みにする。
チョコを食べ終わったところで、少し外の景色を眺めたくなったので城のバルコニーに向かうことにした。
そこにはすでに先客がいた。魔人メディウサだ。
(こいつ、自分の使徒がオレ様の茶飲み友達なのをいいことにオレ様の城に使徒ともども
居候しやがって…図々しいというか、要領がいいというか…)
「お。ケーちゃんもひなたぼっこ?」
実のところ、ケイブリスはこの魔人が嫌いではなかった。
魔人ケイブリス…最強の魔人。普通の人間は彼に近づいただけでその瘴気にあてられ死に至る。
彼に対する周囲の態度は大きく分けて3通りである。
恐怖するもの。反感を持ちながらも従う者。嫌悪し、反逆する者。
メディウサはそのどれにも当て嵌まらなかった。大概のものが恐怖、あるいは嫌悪を持って自分に接して来ているのにも関わらず、この魔人はまるで友人のように接してくる。
「あーもしかしてカカカ…カミーラさんへの手紙の内容でも考えるの?」
「どもるんじゃねぇ!」
「ケーちゃんの真似ー♪…そっか、私は創作活動の邪魔にならないように消えるとするかな」
足早に立ち去ろうとするメディウサの手がケイブリスの視界に入る。
ところどころキズだらけである。まるで慣れない料理をしていたかのように。
ケイブリスが立ち去ろうとするメディウサの手を掴む。
「カカカ…カミーラさんへの手紙はまた今度考えることにする。」
「ふ…ふーん?い、いいんじゃない?」
「茶でも飲むか、今回は特別にオレ様が入れてやる。」
「あ、じゃあ私茶葉はヒラミレモンで温度は…」
「注文多いわ!オマエなんぞ出涸らしで充分だ!」
「じゃ、よろしくぅ」
「チッ…」
といいつつもキッチリとメディウサの注文通りに茶を入れると隣に座る。
余談ではあるが、ケイブリスはその4メートル以上ある巨体に似合わず茶には結構詳しい。
ほとんどが茶飲み友達のアルフガレドから得た知識ではあるが。
「ん…おいしい。相変わらずケーちゃん見た目によらず茶うまいねー」
「オマエは相変わらず一言余計なんだよ!っと…あー…なんだ…その…」
「ん?なに?」
メディウサが首をかしげる。
「チョコ…うまかったぞ」
「な、な、な…」
みるみる内にメディウサの顔が赤くなっていく。
…今日も魔人界は平和だった。
今更バレンタインネタです。絶対メディウサはケーちゃんにラブラブだと思うんだ。Σハッ!アレフガレドがケーちゃんの茶飲み友達なのもまさかメディウサのため!?さすが執事LV3。
…無敵結界?きっ、気にするな!ドイツ軍人は気にしない!