2011年2月20日 20時51分 更新:2月20日 23時23分
【エルサレム花岡洋二】エジプトからスエズ運河通過の許可を得たイラン海軍の艦船2隻が、21日にも通過する見通しとなった。エジプト当局者が20日、ロイター通信に明かした。イランの艦船がスエズ運河を通り地中海へ到達するのは、79年のイラン革命以後では初めて。エジプトが外交政策を、対イスラエル協力からイラン寄りへとシフトする可能性を示唆する動きで、イスラエルは強く反発している。
2隻はフリゲート艦と補給船。同通信などによると、20日に紅海のスエズ湾に到着し、翌日に運河を通って地中海へ抜ける。約1年間、シリアの港に停泊しながら訓練する予定という。イスラエル海軍も地中海に展開しており、緊張が高まりそうだ。
エジプトは79年、革命後のイランと外交関係を断絶し、イスラエルとは平和条約を結んだ。建前上、交戦国の艦船などではない限り、運河を通過させない根拠はないが、これまでイスラエルに配慮し、イラン艦船の通過を許可していなかったとみられる。今回の計画が浮上した段階で、イスラエルのリーベルマン外相は「挑発行為だ」として、許可しないよう求め、ムバラク政権崩壊後のエジプトの対応が注目されていた。
イスラエルのネタニヤフ首相は20日の閣議で「イランの動きを深刻に受け止めている」と強く非難。今回の艦船の動きや中東情勢をかんがみて、軍事費を増強する必要があると改めて説明した。
イスラエル紙ハーレツは「エジプトはイスラエルとの間にできた戦略的な協力関係にこだわらず、対イラン関係も築くつもりだという信号を送っている」と論じた。
イスラエルは最近では09年6月に、核兵器搭載能力のある潜水艦を訓練のため、地中海からスエズ運河経由で紅海に移した。イスラエルは紅海側にも軍港を持つが、潜水艦は配備していなかった。当時は、イランをけん制することが目的だったとみられている。
【ことば】スエズ運河
1869年にフランス人技師、レセップスが手がけて開通し、拡張工事を重ねた全長約190キロの運河。アフリカ大陸を回らずに欧州とインド・西太平洋を結べる海上交通の世界的要衝。1956年、エジプトのナセル大統領(当時)の国有化宣言によって第2次中東戦争が起きたが、その後国有化が国際的に承認された。