G20:財相・中央銀行総裁会議閉幕 不均衡是正なお難題

2011年2月20日 13時54分 更新:2月20日 14時53分

記念写真に納まる各国の財務相・中央銀行総裁ら=2011年2月19日、AP
記念写真に納まる各国の財務相・中央銀行総裁ら=2011年2月19日、AP

 19日閉幕した主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済の不均衡是正を促す「参考指針」で合意した。巨額の経常黒字を抱える中国が反発し、調整が難航。中国は人民元の大幅切り上げに慎重な姿勢を崩しておらず、不均衡是正にはなお難題が残っている。また、米国の金融緩和を主因とした新興国への資金流入や食料価格高騰の問題では各国の利害が交錯、抜本的な対策には踏み込めなかった。【パリ谷川貴史、会川晴之】

 G20が不均衡是正に取り組むのは、08年秋のリーマン・ショックの反省からだ。米国は借金を膨らませて過剰に消費し、中国や日本は対米輸出で稼いできた。米国は経常赤字、中国や日本は経常黒字が拡大したが、米国の借金体質が行き詰まり、リーマン・ショックを引き起こした。このため、各国の過剰な経常赤字や黒字など不均衡の拡大を早期に是正し、危機を防ぐ枠組み構築を目指している。

 今回のG20では、不均衡を判断するため、参考指針にどのような経済指標を組み込むかを議論。議長国のフランスが提示した経常収支や為替水準、外貨準備などの指標について、ほとんどの国は理解を示した。しかし、中国は一部の指標に反対した。高成長を続ける中国だが、輸出が有利になるよう為替介入で人民元相場を低く抑え、介入による元売り・ドル買いで外貨準備も急速に膨らんでいる。指標をそのまま受け入れれば、人民元切り上げ圧力が一段と強まりかねないためだ。

 一方、経常黒字幅の大きい日本は「議論を前進させるのが大事」(野田佳彦財務相)と合意に前向きな姿勢を示した。経常黒字国のドイツも「すべての指標を採用すべきだ」と主張した。円やユーロは、人民元と異なり、基本的に相場形成を市場に委ねている。為替水準なども参考指針にすれば、「不均衡をもたらしている」と判断されない可能性が高い。

 参考指針の議論は、昨秋のG20で米国が経常収支の「数値目標」として持ち出したのが契機だ。数値目標は参考指針より厳格なため、昨秋のG20では日本やドイツも難色を示して見送られたが、米国は対中貿易赤字の要因となっている人民元相場の大幅切り上げを求め続けている。

 中国は昨年の国内総生産(GDP)で日本を抜き、米国に次ぐ「世界2位の経済大国」に浮上。米国は中国に「経済力に見合う責任」を求めており、今回のG20開催前に、ガイトナー米財務長官がブラジルを訪問し、中国に元相場の柔軟化を求めることで協力を促すなど、中国への包囲網づくりに躍起だ。

 今回のG20では中国の孤立化の様相が強まり、中国は協調を優先して、歩み寄りの姿勢を示したとみられる。ただ、外圧が強まるほど、中国は態度を硬化させる可能性があり、中国は「元の上昇ペースは中国政府が決定する。他国の圧力には屈しない」(周小川・中国人民銀行総裁)との姿勢を崩していない。

 リーマン・ショック後の世界経済は、危機後の景気回復が遅れる先進国と、高成長を続ける中国やインドなど新興国との格差が鮮明となっている。景気テコ入れを図る先進国は米国を筆頭に大規模な金融緩和を続けているが、これが「カネ余り」を招き、もうけが見込める新興国に巨額の資金が流入している。

 昨年夏以降の米国の追加金融緩和と新興国への資金流入は、ドル安と新興国通貨の上昇を招き、新興国が為替介入で対抗する「通貨安競争」に発展したが、新興国のインフレ圧力や不動産バブルの懸念も強めている。中国などは「米国などの金融緩和がインフレの要因」と批判している。

 また、商品市場への資金流入は、食料価格を押し上げる要因となっており、新興国のインフレ圧力をさらに高めている。ブラジルなど新興国はすでに海外からの資金流入への課税やインフレ抑制の利上げに動いており、今回のG20では過度の資金流入への規制の在り方が議題となり、新興国に一定の規制を容認する方向で議論が進んだ。世界経済をけん引する新興国でのインフレやバブルは、世界経済に悪影響を及ぼしかねないためだ。

 だが、資金流入への規制の容認は、あくまで「柔軟な為替相場を維持する」のが条件。ここでも人民元相場を管理する中国への包囲網が築かれつつある。

 ただ、低成長にとどまる先進国としては、過度な資金流入への一定の規制を容認しても、金融緩和は「自分の経済の安定を図るために必要な政策」(日銀の白川方明(まさあき)総裁)であり、金融緩和自体をおいそれとやめるわけにはいかない。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は18日のパリでの講演で「自由な資本移動で(新興国)経済は相当な利益を受けている」と新興国からの批判に反論した。

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