世界最長実験:40年間、鋼材引っ張り 27日に達成へ

2011年2月20日 9時13分 更新:2月21日 7時24分

耐久実験が続く鋼材を納めた電気炉(右端)と木村一弘さん=東京都目黒区の物質・材料研究機構で、山田大輔撮影
耐久実験が続く鋼材を納めた電気炉(右端)と木村一弘さん=東京都目黒区の物質・材料研究機構で、山田大輔撮影

 鋼材を高温にして引っ張り続けている「物質・材料研究機構」の実験の期間が世界最長を達成する見通しになった。今から40年以上前、寿命を正確に予測し、発電所や工場などでの事故を防ぐ目的で始まった。今月27日未明、独シーメンス社が樹立した35万6463時間の記録を塗り替える。機構はギネスブックに事前申請した。

 実験は東京都目黒区にある機構で行われている。炭素と鉄を含んだ鋼材の丸棒(直径1センチ、長さ5センチ)を電気炉で400度に熱し、約2.4トンの力で引っ張る。これまでのデータから、政府の火力発電所の設計基準が改定され、微量金属の混合で寿命が約1000倍に延びることが判明した。

 実験が始まったのは69年6月、米アポロ11号が「月の石」を持ち帰る1カ月前。高度成長期で建設ラッシュにわいたが、国産の鋼材はデータ不足で、欧米製が使われた。前身の金属材料技術研究所は遅れを挽回しようと着手。炉の交換による中断などを除き、停電でも自家発電で続けた。世界で30万時間超の実験例18件のうち、破断などで中止された10件を除く全8件がここで続く。

 政府の事業仕分けで目黒の施設は廃止が決まったが、より長寿命の原発の材料開発などのため、規模を縮小し本部のある茨城県つくば市で続ける。4月8日に最後の施設公開を予定している。機構の実験責任者、木村一弘さんは「信頼性の高い国産技術の象徴として不倒の記録にしたい」と話す。【山田大輔】

top
文字サイズ変更
このエントリーをはてなブックマークに追加
Check
この記事を印刷

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド