東日本大震災

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東日本大震災:笑顔戻る紙飛行機 宮城・名取の避難所

子どもたちの合図で紙飛行機を飛ばす被災者ら=宮城県名取市の館腰小の避難所で2011年4月3日午後8時41分、小林努撮影
子どもたちの合図で紙飛行機を飛ばす被災者ら=宮城県名取市の館腰小の避難所で2011年4月3日午後8時41分、小林努撮影

 届け、僕らの復興への思い--。東日本大震災による津波で大きな被害を受けた宮城県名取市の市立閖上(ゆりあげ)小の子どもたちが3日夜、避難先の市立館腰(たてこし)小体育館で開かれたコンサートの最後に、メッセージを書いた紙飛行機を飛ばした。地震直後、閖上小の教室では、泣いている女子を励まそうと、男子が紙飛行機を投げ、笑顔を取り戻した。「みんな元気に頑張ろう」。思いを込めた紙飛行機が避難所にも笑顔を届けた。

 地震直後、同小3階にあった6年1組の教室には、低学年の児童も避難してきた。「怖い」。女子が泣いていた。「僕たちに何かできないか」と1組の男子9人が話し合った。「紙飛行機の羽にメッセージを書いて飛ばそう」。斎藤開君(12)が、紙飛行機を作って教室後ろのロッカーにしまっているのを知っていた児童たちの意見がまとまった。

 斎藤君は、教科書などに張る付箋を使って、小さな紙飛行機を作るのが好きで、2月下旬ごろから作り始め、毎日のように完成した数を友達に報告し、ためていた紙飛行機は約50個。みんなで約30個をその場で作り、教室の中で飛ばした。

 羽には「泣くな」「大丈夫」などの言葉を書いた。子どもたちは飛び交う紙飛行機を見て泣きやみ、教室にいつもの笑顔があふれた。同小は水が引かずに翌日まで取り残されたが、斎藤君たちは交代で起きて乗り切った。斎藤君自身も津波で自宅が流されたが「自分が役に立ててよかった」と笑顔で話す。

 コンサートは、館腰小に被災者の往診に来ていた北九州市の国際NGO「ロシナンテス」理事長、川原尚行さん(45)=スーダン在住=が子どもたちに提案して実現した。他の避難所で暮らしている閖上小・中の子どもにも声をかけ、約40人が集まった。慰問に訪れた歌手らと合唱し、校歌も歌った。

 館腰小に避難している被災者にも折り紙で紙飛行機を折ってもらい一斉に飛ばした。「空に向かってみんなで前に進もうぜ」「希望を持って頑張ろう」--。力強い思いが込められた数百の紙飛行機が飛び交うと、体育館は笑い声と歓声に包まれた。同じ6年1組で、祖父を亡くした大林聖花さん(12)も地震後に紙飛行機に励まされた一人で、「ありがとう」と書いて飛ばした。大林さんも笑顔だった。「たくさん飛んでいてきれいだった。作ってよかった」【金森崇之】

毎日新聞 2011年4月4日 10時27分(最終更新 4月4日 11時33分)

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