2011年2月18日 21時48分 更新:2月19日 10時34分
反捕鯨団体シー・シェパード(SS)が繰り返す妨害行為のため安全確保ができないとして18日、南極海での10年度の調査捕鯨が打ち切りと決まった。「今後、捕鯨はどうなるのか」。各方面に不安が広がっている。
■影響
調査捕鯨は南極海と北西太平洋で財団法人日本鯨類研究所(鯨研)が行っている。10年度の南極海での捕獲数は、中止によりミンククジラ170頭(計画は約850頭)、ナガスクジラ2頭(同50頭)止まりで、87年の開始以来最少となった。
調査捕鯨の費用には鯨肉の販売代金と国からの補助金が充当されている。鯨研は08年度で1億6400万円の赤字に陥っており、中止が財政的に追い打ちをかけることは間違いない。鹿野道彦農相は18日、今後について「財政的な困難が予想される」と語った。中止を機に南極海調査捕鯨からの撤退論も浮上しかねない状況だ。
■反発
一方で日本人の鯨離れは進んでいる。水産庁の統計では、国内の鯨肉在庫は10年末現在で5093トンと5年前より4割も増加。捕鯨中止ですぐに鯨肉が足りなくなることはない。だが、料理店や捕鯨基地などでは不安や反発の声が上がる。
東京都千代田区の鯨料理店「くじらのお宿 一乃谷」の店主、谷光男さん(55)は「安全を考えれば打ち切りは仕方ないが、他国の食文化を尊重しようとしないSSの行動は理解できない。事態が長引けば、メニューを替えざるをえなくなるかも」と話す。
調査捕鯨基地がある山口県下関市。義理の息子が捕鯨船に乗船中という女性(55)は「出港後、家族は心配で仕方がない。息子は『SSに薬品や塗料をかけられ、船体はぼろぼろの状態』と話していた。帰国が決まって安心したが、乗組員としては歯がゆいだろう」と語った。元水産庁漁場資源課長で政策研究大学院大学の小松正之教授は「合法的な捕鯨なのに暴力で邪魔された。逃げ帰ってはいけない。日本は悪いことをしていると国際的に喧伝(けんでん)される。乗組員に生命の危機があるなら、海上保安庁に護衛を頼み、居続けることが何より大切だ」と強調した。