2011年2月16日 21時7分 更新:2月17日 0時27分
国土交通省が16日発表した高速道路の新料金制度は、民主党がかつて「人気取り」と批判していた、旧自公政権時代の「普通車休日上限1000円」の料金割引を事実上、踏襲した。「実質値上げは、党の看板政策でもある高速道路の無料化方針に反する」との民主党内の声に配慮したためだ。
だが、平日の普通車上限2000円の新設や現行の時間帯割引の存続など、新旧制度を混在させたため、より多くの財源が必要になり、前政権が確保していた2兆円の割引財源を当初の予定より4年以上早い3年以内で食いつぶす事態に。料金体系も複雑となり「持続可能な簡素な制度」(馬淵澄夫前国土交通相)とはほど遠い結果になった。
池口修次副国交相は16日の会見で、財源を使い切った後の高速料金について「金がないと決めつける必要はない。(今後)税金を投入してでも値下げをと、国民が望むかもしれない」と発言。「財源が切れるまでに、国交省が設置する有識者会議で検討したい」と語った。長期的展望が全くないことを認めた格好で、料金制度を巡る議論は今後も迷走を余儀なくされそうだ。
新料金制度と、民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)の柱である「無料化」を合わせると、年約8000億円が高速道路に費やされる計算。物流コストの削減や、大型トラックの市街地通行の緩和によって、ドライバー以外にも間接的なメリットはあるものの、物流大手関係者は「展望なき高速道路行政のままでは、コスト削減を狙った新規投資はできない」と語る。
財政難の中、「無料化を優先して進めるべきだ」との世論も広がっておらず、15日には、担当する大畠章宏国交相まで「マニフェスト見直しのベスト3に入っている」と表明。民主党が9月をめどに実施するマニフェスト全体の見直し作業で、高速無料化が取り上げられるのは必至だ。
また池口副国交相は「新料金で影響が出るフェリー会社への支援策も、4月までに検討する」との考えを示した。高速道路とフェリーの乗り継ぎ割引などを検討しているとみられるが、新たなばらまきにつながる可能性もある。【寺田剛】