検証・大震災

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検証・大震災:原発事故2日間(7止)情報不足、米国も不信感

 東電は原発の「安全神話」が崩れていく現実を直視できず、初動の対応を誤った。官邸は政治主導にこだわりながら東電や保安院との緊密な連携を図れず、結束して危機に立ち向かえなかった。それは「想定外」という言葉でけっして片づけられるものではない。

 オバマ米大統領が大震災発生の一報をデーリー大統領首席補佐官から受けたのはホワイトハウスで就寝中の11日午前4時(日本時間同日午後6時)。午前9時半から電話で参加したナポリターノ国土安全保障長官らと緊急協議し、午前10時15分(同12日午前0時15分)にいったん中断して菅首相と電話協議に臨んだ。

 オバマ氏の関心は原発の現況にあった。首相は「今のところ放射能漏れの証拠をつかんでいない」と答えたが、オバマ氏は原発の安全システムが破損した最悪の事態を想定、チュー・エネルギー長官に対応を指示した。

 米政府が不満を募らせたのは情報不足だった。クリントン国務長官が11日、在日米軍機が「原発の一つに冷却材を運んだ」と述べ、その後事実誤認と判明したが、米国では情報不足が招いた「誤情報」と受け止められた。12日未明に日本に向かった米国際開発局(USAID)派遣の捜索・救助チーム75人に放射能対策の装備はなかった。

 ◇一斉に「日本側の情報隠し」報道

 原発政策を担う米原子力規制委員会(NRC)の対応は素早かった。11日中に担当技術者2人を東京に派遣。首相官邸に常駐を希望し、派遣人数を16日までに11人に増員したが、少ない情報は「日本不信」をあおった。

 NRCのヤツコ委員長は16日の下院公聴会で「使用済み燃料プールには水がないと信じている」と証言、「水はある」とする日本側と対立。ルース駐日米大使は「福島第1原発から50マイル(約80キロ)範囲の米国人退避」を勧告した。米国防総省も在日米軍に対し、50マイル以内に許可なしに立ち入ることを禁じた。米メディアがいっせいに「日本側の情報隠し」報道にかじを切ったのはこの前後だった。日本の避難指示に疑問が出され、米政府高官は「状況評価は『深刻』から『非常に深刻』になった」と振り返る。

 米国の原発建設は79年のスリーマイル島原発事故で中止となったが、オバマ政権が昨秋、原発推進を再開したばかりだった。しかも米国には福島第1原発1~5号機と同型炉が23基稼働しており、人ごとではなかった。

 ◇日本の特異性を強調

 原発推進派のロビイストたちは、米国の原発政策への影響を食い止めようと議員らに「日本の特異性」を説明。ワシントンのロビー団体「核エネルギー研究所」のフリント上級副所長は、ホームページにリンクされたビデオで「米国の原発は物理的にも、どう運営されているかについても、日本の原発とは全く違う」と強調した。

 原子力安全・保安院が原子力政策を進める経産省の傘下にあることにも「産業界と親密な関係にある原発行政」(ウォールストリート・ジャーナル)など「米国と異なる監視体制」を指摘、日本特有の事故との印象を与えようとしている。

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2011年4月4日

 

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