「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

2011年3月31日(木)

人生いろいろ クルマ作りもいろいろ

第85回:ダイハツ工業 ムーヴ【開発者編】その3

1/5ページ

印刷ページ

 みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。

 読者諸兄は最近“外食”をされましたでしょうか?

 そういえば震災以来、昼メシ以外は一切外で食べていないや……という方も多いのではありませんか。

 何しろ“こういう時”ですから、会社絡みの宴会やパーティーの類は片端からキャンセルになっています。実は先週もマガジンハウス社の「Tarzan」創刊25周年記念パーティー(何と、赤坂のお色気食堂フーターズで開催の予定でした。さすがはマガハ……)や、某高級車の潜在顧客を対象としたシークレットパーティー(こちらは美術館を借りきっての開催予定でした。さすがは……おっと、シークレットなのでここで主催者の名は言えませんが)があったのですが、どちらからも直前に、延期を知らせる内容の丁寧な手紙が届きました。

 ずいぶん念入りな準備をしたでしょうに、行間から無念さが伝わってきます。手紙には色々と書いてありましたが、要するに「まぁこういう時ですから……」ということです。

 首都圏に於ける飲食店の落ち込みぶりは目を覆わんばかりの“惨状”です。抗いがたい“自粛モード”の波に翻弄されているからです。過日の「日経ビジネスオンライン」でも特集していましたが、これはもはや、地震・津波・原発に次ぐ、「第4の災害」と呼んでも差し支えないような状態です。「売り上げ半減」などは当たり前で、中には客足9割減などという悲惨な店も存在します。シャッターを下ろして、“状態が改善するまで”臨時休業を決め込む店もありますが、いったいいつになったら改善するのでしょう。先が見えません。

 この原稿を書いている最中にも東京電力が前言撤回のドタバタ劇を演じています。身内同然であるはずのIAEA(国際原子力機関)天野之弥事務局長からは「終結には程遠い状況」と断じられ、お仲間だったはずのフランスのIRSN(放射線防護原子力安全研究所)からは「先行きは不透明」と詰られ……。予断を許さぬ厳しい状況は当分続きそうです。

 しかし、たとえシャッターを下ろしていても、家賃は情け容赦なく発生します。従業員の給料も遅らせる訳にいきません。彼らには彼らの暮らしがある。食材はもちろん、酒屋への支払い、観葉植物のリース代、水道光熱費……。

 飲食店は、当たれば粗利の大きな“儲かる商売”ですが、客が来なければ話になりません。実際に盛業だった店が、早くも家賃の支払いに窮するケースも出始めている。かなりヤバい状況です。

 馴染みにしていた店が潰れてしまっては堪りません。1年後に残っていたのは体力のある大手のチェーン店ばかり……なんてことになってしまったら最悪です。それこそデートもままならなくなる。

 これは被災地だけでなく、全国的な問題です。日本を“味気ない街”ばかりの国にしてしまっては絶対にいけない。ですから食事に出かけましょう。ばんばんデートもしましょうよ。宴会だってそろそろ良いじゃないですか。うつむいて縮こまっているばかりでは何も始まりません。

 フツーに仕事して、フツーにメシ食って、フツーに酒を飲んで……。“経済を回す”なんて気負う必要はありませんから、いつも通り、極力フツーに振る舞いましょう。私もフツーにデートを……いえ今は大変な時期ですから、より多くの女性と積極的にデートに出かける所存であります。それが経済の復興へと繋がるのです。え?お花見禁止ですって?けっ、構うもんですか。あたくしゃやりますよ。ついでに花火も上げてやろうか。

 それにしても東京電力の広報はなんともお粗末な……。同社の清水正孝社長が「日本広報学会」の会長であらせられるとは、ブラックジョークにしてもタチが悪すぎる。

 さてと、前置きはこれくらいにして本題に入りましょう。ダイハツ工業・「ムーヴ」の開発者編。技術本部 軽製品企画部チーフエンジニア 須藤秀彦氏のインタビュー、今回がいよいよ最終回です。

*   *   *

フェルディナント(以下、F):今回のムーヴは、やはり“燃費”がテーマになると思うのですが、アイドルストップやエンジンルーム拡大のほかに、燃費の向上に関して力を入れたのはどのあたりでしょう?

ダイハツ工業 技術本部 軽製品企画部チーフエンジニア 須藤秀彦氏

須藤(以下、須):燃費をよくするのって、すごく背反が多いんです。基本的にエンジンの回転を下げてやれば燃費はよくなります。それは分かっている。でも単純に下げるだけだと室内に音がこもったりとか、低い周波数の振動が出たりとかしてしまう。このへんの処理には時間がかかりました。
 あとはそうだな、タイヤを例に上げましょうか。低燃費タイヤというのはなかなか対応が難しい。低燃費のタイヤって表面が硬いものですから、そのまま付けると乗り心地が悪くなるんです。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。






Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント3 件(コメントを読む)
トラックバック

こちらで記事について議論しています

著者プロフィール

フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチ 48歳です。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。


このコラムについて

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

日経ビジネスからのご案内