大相撲の八百長問題で現役時代に関与していたとして、日本相撲協会から退職勧告を受けていた谷川親方(37)=元小結海鵬=が5日、都内の八角部屋で会見し、退職届を提出しないことを明らかにした。提出締め切り日のこの日、引退・退職勧告を受けた20人のうち19人が5日までに引退届を提出。谷川親方は、たった1人による最後の抵抗となった。
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男の意地は曲げられなかった。現役時代に汗をかいた稽古場で、谷川親方は潔白を訴えた。「私は14年間の現役生活で、1度たりとも八百長相撲を取ったことはありません」。用意した文章を読み上げ、「私は自分の信念を貫き通し、退職届を提出いたしません」と宣言した。
文章を読み上げた後は、質問に3問答えただけで会見を打ち切った。約6分半という時間に思いを詰め込んだ。勧告を無視することで、さらに重い解雇や除名処分を6日の理事会で受ける可能性もある。「自らの気持ちに背いてまで、退職勧告に従うわけにはいかない」と涙をぬぐった。
退職届を出すべきかどうかは最後まで迷った。会見の連絡が回ったのは、協会の事務所が閉まる午後5時の約2時間前だった。朝、師匠の八角親方(元横綱北勝海)に「部屋が空いているから、ここでやれ。人前でちゃんと言わないとだめだ」と後押しされ、思いをはき出すことに決めた。
特別調査委員会の手法には、今も納得がいっていない。提出した携帯電話は解析されず、「進んで出したものに重要な情報はない」とあしらわれた。ビデオの検証も「特になかった」と主張している。その上で、「退職届を出すことは(八百長を)認めたことになる。二児の父として、一相撲人として、一社会人として、今までも、これからも正々堂々胸を張って生きたい」と訴えた。
処分を伝えられた4月1日には、訴訟も「当たり前」と息巻いていた。今回の決断で協会の処分に逆らう形となったが、「(訴訟は)気持ちの整理ができていないので、これから考えます」と冷静に語った。
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