事件【主張】汚染水放出 「非常手段」の説明尽くせ2011.4.6 03:44

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【主張】
汚染水放出 「非常手段」の説明尽くせ

2011.4.6 03:44

 低濃度の放射性物質を含む汚染水の海への放出が東京電力福島第1原子力発電所で始まった。

 2号機のタービン建屋にたまっている高濃度の汚染水の保管場所を確保するためのやむを得ない措置だが、事前の説明が不足している。

 何しろ捨てられる汚染水の量が膨大だ。1万1500トンにも上る。東京電力や原子力安全・保安院などは、放出の可能性を事前に告知できなかったのか。海の生態系への影響がない放射能量であっても、説明が省略された印象を与えると不安や不信感が深まりかねない。

 原子炉を安全な「冷温停止」に落ち着かせる作業は、汚染水に復旧工事を阻まれるなどして長期戦を余儀なくされている。東電はこれからも急を要する局面に遭遇することがあろう。そうしたときほど、詳しい情報を求められることを忘れてもらっては困る。

 原子力事故は分かりにくい。だからこそ、政府は事故現場で進められている取り組みの目的をはじめ、その位置づけや見通しの大枠をしっかり国民にアナウンスすることが必要だ。

 現場での最優先課題は原子炉の冷却だ。これに失敗すると汚染拡大の水蒸気爆発などにつながる。だから、本格的な冷却システムが回復するまで、汚染水の原因となることを承知の上で、水の注入を続けざるを得ないのだ。

 原子炉の中ではウラン燃料が崩壊熱を出し続けている。だが、この熱は時間とともに少なくなっていく。現在の発熱は、注水開始時の2分の1以下になっているはずだ。こうしたこともグラフなどを使って伝えてほしい。

 油断は禁物だが、最悪の事態の可能性は日ごとに低くなってきている。注水量も当初よりは少なくなっている。

 2号機付近から海に漏れ続けている高濃度の汚染水を一日も早く止めたい。今回の低濃度汚染水の海洋大量放出容認は、そのための非常手段である。海には汚染物質を拡散させる力があるが、長引けば漁業への風評被害が深刻化する。放射性物質の海洋モニタリングに力を入れてもらいたい。

 4基の原発が損傷した今回の事故の収束には、月単位の時間がかかる。それを考えると「現場よ頑張れ」の声が自然にわき上がってくるような、適切かつ誠実な対応の積み重ねが不可欠だ。

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