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きょうの社説 2011年4月6日
◎震災義援金 早急に善意生かす仕組みを
企業や学校、町会、スポーツ・文化団体から個人に至るまで、東日本大震災の被災地に
義援金を寄せる人たちが過去の災害を上回る規模で広がっている。北國新聞社に寄せられた総額も4日までに計7億5千万円を超え、石川県に届けた。ボランティアに行けなくても、現地の惨状を思いやり、生活再建の役に立ちたいという熱い志は被災者の大きな励みとなろう。被災地では着の身着のままで避難し、当座の生活資金に困っている人も少なくない。多 くの善意を一刻も早く手元に届けたいが、現地では自治体の手が回らず、義援金を配分する仕組みはまだ整っていない。阪神大震災では発生から約2週間で配分が始まっただけに、もどかしさが募る。 兵庫県が窓口となった阪神大震災と違い、今回は複数県が被災した戦後最大の広域災害 である。義援金を渡す側、受ける側の調整なども簡単ではない。配分の最終的な判断は被災自治体にあるとしても、届ける側の自治体なども傍観していては責任が果たせない。震災直後から職員派遣、物資供給などで自治体間の調整を進めてきた全国知事会などはもっと積極的に関与してよいのではないか。 義援金は国の防災基本計画に基づき、被災した県ごとに配分委員会を設置し、被害の大 きさや世帯の構成などに応じて支給額を決める。だが、被災自治体では今なお被害が確定できていない。正確な行方不明者数さえ分からず、原発事故の影響で立ち入りできない地域もある。 公平を期すため、被害の全体像を把握したいとの自治体の思いは理解できるが、従来の 手順を厳密に踏んでいたら、義援金の配分は遅れるばかりである。第1弾については手続きを簡略化し、配ることを優先する判断があっていい。励まされる被災者の姿によって義援金の輪をさらに広げることにもなろう。 今回の震災では石川県に避難した住民は相当数に上る。被災地からきている大学生もい る。県に寄せられる義援金の対象を、そうした人たちにも広げられないか。前例にとらわれず、柔軟な支援のあり方を探っていきたい。
◎東電株価の下落 信用不安の広がりが心配
東京電力株の下落が止まらず、5日は値幅制限の下限となる前日比80円安の362円
で取引を終えた。原発危機という未曾有の厄災をもたらした以上、売られるのは当然だろうが、事故前に2100円を超えていた株価は、わずか1カ月足らずで5分の1以下になってしまった。民間の8金融機関は先ごろ、東電に対して1・9兆円を緊急融資したが、東電株のさら なる下落は、金融機関をも巻き込んで、市場全体の信用リスクを高める恐れがある。国は東電の資金繰りを支援する意思を明確に示し、信用不安の広がりを抑えてほしい。例えば、東電が持つ膨大な資産を基に、政府保証を付けた数兆円規模の基金を創設し、被害補償や事故対応の資金に充ててはどうか。 東電株の下落は、他の電力会社やガス会社などエネルギー関連株の下押し圧力となり、 これらの株式を多数保有する金融機関の株価にも多大な影響を及ぼしている。福島第1原発の事故対応は長期戦を覚悟せねばならず、放射性物質を封じ込め、廃炉に至る事業にも、放射性物質の漏出事故に伴う被害賠償にも、合わせて兆単位の資金が必要になるだろう。東電が民間企業として、厳しい局面を迎えているのは間違いない。 菅直人首相は会見で、東電の国有化を否定したが、市場では一時的な国有化論の観測が かしましい。日本航空のように経営破綻し、株が無価値になるとは考えにくいが、株主の懸念は消えないだろう。このような状況が続けば、東電株がマネーゲームの対象にならぬとも限らない。 東電は原発事故直前まで、配当金が高く、株価下落のリスクが少ない優良株の代名詞と されていた。昨年9月には、29年ぶりの公募増資で約4500億円を調達したばかりで、個人株主が発行済み株式の4割近くを持つ。東電株主の疑心暗鬼は、他の電力会社の株主にも波及し、株価の下げが目立っている。金融機関も含み損を抱え、来期の業績への影響が懸念されている。政府が明確な支援策を打ち出さないと、株価の下落は止まらないのではないか。
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