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きょうのコラム「時鐘」 2011年4月6日
青空に白い峰が映える穏やかな日が続く。大気を切り裂くようにそびえる冬の顔から、すっかり変わった。季節ごとの美しさを見せる北陸の山々である
白い峰のふもとには、萌(も)え出した春の気配が漂う。「山笑う」と言い表すそうである。野を深い悲しみが包んでいても、自然は新しい顔を見せる。春を迎える喜びがあり、春に背く出来事もまた続く 福島・三春(みはる)町出身の知り合いがいる。原発事故で難を逃れた大勢の人を受け入れる町の一つとして時折、紙面で報じられる。次々と難題が起きて、いつ好転するのか不安が消えぬ日々である。そんな中で見聞きする三春の名。梅と桃、桜がいちどきに咲くという風流に由来する命名である、という自慢話を思い出す 名に恥じず、三春には樹齢約千年の桜の古木がある。今度の途方もない揺れにも耐え切って、今月半ばには開花の見込み、と町役場から教わった。過去の大地震にも生き抜いた命である。見事な花を咲かせて、被災者の心も癒やしてほしいと願う 自然の猛威に深く悲しみ、時に自然の恵みに癒やされもする。泣き笑いの交じる複雑な春である。 |