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「食料をくれ!」。瓦礫の中の悲痛な叫び。

フリーランスライター畠山理仁のブログ

畠山理仁

「食料をくれ!」。瓦礫の中の悲痛な叫び。

「このままでは餓死してしまう」



「日本の大手メディアは被災地の現状を正しく伝えていません! ぜひ、現場の声を伝えてください!」

 東北地方太平洋沖大地震の発生から10日が経った3月21日朝。私の携帯電話に見慣れない番号からの着信があった。

「誰だろう?」

 そう思いながら電話に出ると、その人物は挨拶もそこそこに、ひどく慌てた様子で私にまくしたてた。

「このままでは現地の被災者たちは餓死してしまいます!」

 受話器の向こうからは尋常ならざる空気が伝わってくる。私はカップラーメンの棚がほとんど空になった東京のコンビニで、ぼうっ、と立ち尽くした。

 電話の主は、海外メディアの通訳として被災地取材を続ける瀬川牧子さん。瀬川さんは地震発生直後から、被害が甚大だった東北地方を取材で回っているという。

「日本の大手メディアは『世界各国から救援物質や食料が届いてる』などと良い面ばかり報道していますが、現場は全く違います。私が18日に入った宮城県石巻市中心部(主に警察署付近)では、食べ物がなく、瓦礫の中から冷凍食品などのゴミをあさっている住民が大勢いるんです」(瀬川さん)

 日本国内の大手メディアではあまり報じられないが、無人となった被災地のスーパー、コンビニ、ATMでは、被災住民らによる強奪が日々起きているという。

「政府からの食料は全く届いておらず、避難所でも一日一食です。しかも塩おにぎり一個だけ。それだけではお腹が空くので、住民らは津波で窓ガラスが割れた瓦礫まみれの無人スーパーに押し入って、餃子などの冷凍食品を取っています。燃料となるガソリンもほとんどないため、被災地から逃げたくても逃げることができません。津波で流されてきた車からガソリンを抜き取る行為も目立っています」(瀬川さん)

 たしかに被災地には、大手メディアが伝える「避難所でも譲り合いの精神」といった美しい現実もあるという。しかし、その一方で「報じられない現実」があるのもまた事実なのだ。

 瀬川さんは石巻市内の湾岸地区を取材中、民家に乗り上げた車からガソリンを抜き取る男性に出会った。瀬川さんが声をかけると、その男性は「(車の持ち主である)友人の了解を得ている」と静かに言った。男性が肩にかけていたショルダーバッグの中には、とけてしまった冷凍食品のエビ餃子、そしてわずかばかりの魚介類の真空パック。あたりを見回しても瓦礫があるばかりで、営業している店はどこにも見当たらない。

 そのバッグの中身を瀬川さんに見せながら、男性は強い口調でこう叫んだという。

「メディアは『各国から支援物資が届いている』などと伝えているが、報道と現実は全く違う。メディアの人に伝えてほしい。『食べ物がない。まず食料をくれ!』と」

放射線量検査は希望者のみ



 石巻市訪問前の3月13日夜、瀬川さんは福島県郡山市の郡山総合体育館を訪れていた。

「そこで目にしたのは、駐車場で上半身裸になっている男性でした。32歳のKさんは放射線被曝していることがわかり、消防士から、『熱いシャワーで体を流すように』と告げられたというんです」

 Kさんが乗ってきた白い乗用車の横には、子供服などがぎゅうぎゅうに詰め込まれた大きなビニール袋が二つ置かれていた。中に入っている衣類はいずれも放射能に汚染されてしまったものだ。

「放射能汚染されているとわかっているにも関わらず、役所はこれを『自分で持ち帰って処分してほしい』と言うんです。こんなものを車の中に入れて持ち帰れば、家族が再び放射能汚染されるおそれがある。どうしろというのか」(Kさん)

 憤りを隠せないKさんが乗ってきた車の中には、Kさんの妻、2歳の娘、Kさんの父親の姿が見えた。3人とも放射性物質を洗い流すためにシャワーを浴びており、髪はまだ濡れていたという。

 瀬川さんが言う。
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