【東日本大震災】ジャンパー(原発事故処理作業員)から「福島」への助言
2011/04/05 00:21更新
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原子力発電所で深刻な事故が起きると、高い放射線量が計測される場所に飛び込み素早く任務をこなす「ジャンパー」と呼ばれる男たちがいる。東京電力も今回の福島第1原発事故の処理作業に当たるジャンパーの募集を始めた。そんな折、1986年4月の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故(原子炉爆発)の処理作業に当たったジャンパーがロイター通信にその「地獄の体験」とこれから福島に向かうジャンパーたちへのアドバイスを語った。
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記事本文の続き ■チェルノブイリで23回出撃
男性は、現在シンガポールの研究所に勤務するウクライナ系米国人の科学者、セルゲイ・ベリヤコフさん(55)。ベリヤコフさんは家族の反対を押し切り、86年7月から8月にかけて40日間、事故後のチェルノブイリに滞在。この間、ジャンパーとして23回、現場に「出撃」し、「6回、(退却が遅れて)地獄(死)の入り口を見た」という。
ジャンパーとは、跳びはねるように危険な場所から瞬間移動する能力を持つ者という意味でこう呼ばれている。チェルノブイリ原発事故では、約800人のジャンパーが動員された。東電は現在、原発技術者などをあっせんするバートレット・ニュークリア社(米マサチューセッツ州)を通じて、まず10人のジャンパーを募集。求めているのは原子力産業の経験者で、ロイター通信によると5000ドル(約42万円)の日当を保証しているとされる。
ベリヤコフさんは86年当時、ウクライナ大学の助教授だったが、陸軍で化学兵器の処理を学んだ予備役でもあったため「義務感から事故処理を志願した」。現場では、主に原子炉をコンクリートで覆って「石棺」にする作業に当たったが、放射線量を示す計測器の数値は恐怖そのもだったという。「被曝(ひばく)線量の上限は240ミリシーベルトに定められたが、誰も守れやしなかった。40日間ほぼ1日おきに作業してこの数値を守ろうとしたら、せいぜい1日2分ぐらいしか働けない。現実を無視したお題目だけの上限設定だった」
■状況熟慮し理性的に考えよ
東電は今回、事故現場での作業員の被曝線量限度を特例として100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたが、チェルノブイリ原発事故では大多数のジャンパーがこの数字を大幅に上回る放射線を浴びていたとみられる。
「数十人いた同じ作業班のメンバーで、知っているだけでも5人がその後10年以内に40歳を前にして死亡した。今、こうして自分が生きていられるのは神の恵みとしか思えない」とベリヤコフさんは振り返る。
福島で活動することになるジャンパーたちへは「一歩一歩でいいから勇気を振り絞ることだ。そして勇気とは、自然に備わったものではない。状況を熟慮し、何を成すべきかを論理的に考えてこそ生まれる。臆病風やヒーローになろうとする思いも敵と心得るべし」とアドバイスする。
ベリヤコフさんは当時の日当については明かさなかったが、作業後、ソ連政府から18日間のインド旅行を贈られたという。同行したジャンパー全員にとって初めての海外旅行だった。
「私はチェルノブイリでの40日間、プレッシャーを朝食代わりに“食べて”いた。これくらいの胆力がないならジャンパーは務まらない」
◇
≪ぎりぎりの生還 レンズは見ていた≫
宮城県南三陸町を襲った十数メートルの大津波は3月11日午後、町の防災対策庁舎を一瞬のうちにのみ込んだ。町で写真館を経営していた佐藤信一さん(45)が町を見下ろせる志津川小学校から、津波が押し寄せる様子を撮影していた。
周辺に津波が押し寄せ、まもなく水位が増して庁舎全体を覆う。アンテナなどにしがみついて避難する人たちの周りを激流のように海水が流れ、やがて水位が下がるとほとんど鉄骨だけとなった庁舎が現れた。ぎりぎりで耐えた佐藤仁町長(59)ら10人が奇跡的に生還した。
◇
≪集中捜索で79遺体収容 原発20キロ地点の検問開始≫
東日本大震災の被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸部を対象に4月1日から3日まで実施された行方不明者の集中捜索で、自衛隊統合任務部隊司令部(仙台市)と海上保安庁は4日、計79人の遺体を収容したと発表した。
福島県警は4日、警視庁の応援を得て、福島第1原発(双葉町、大熊町)から半径20キロに当たる地点での交通検問を始めた。これまで実施していた30キロ地点での検問を変更。県警は「20キロ圏内は侵入禁止区域ではないが、避難指示は継続されているため、立ち入り自粛の呼び掛けを徹底する必要がある」としている。
また、JR東日本は4日、東北新幹線那須塩原-福島の運転を12日ごろ再開できる見通しになったと発表した。一ノ関-盛岡は予定より1日早い7日、残りの福島-一ノ関も今月(4月)下旬に再開する予定。
一方、日本財団は4日、宮城県石巻市で東日本大震災により家族が死亡したり、行方不明になった被災者に支援金の支給を始めるなど、生活再建を支援する動きも始動した。
◇
【東日本大震災の被害者数】(4月4日午後4時現在)
死者数 1万2175人
行方不明者数 1万5489人
避難者 16万5768人
※警察庁まとめ
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