震災に遭った原発が止まったことで、被災した東北・関東で電力不足の不安が高まっている。枝野幸男官房長官は記者会見で「国民に最大限の節電をお願いする」と訴え、短文投稿サイト「ツイッター」などでは節電の輪を広げる書き込みが相次ぐ。ただ、九州電力によると「融通量は技術的に限度がある」という。
九州の市民の間にも、節電のため「娯楽施設は夜間閉鎖を」「大型電光掲示板の消灯を」「夜更かしはやめよう」といったメールの転送が続いている。本紙にも読者から「少しでも電力が東北にいくようにしたい」などの声が届けられた。
東電などの協力要請を受けた九州電力は12日から、15万キロワット分の電力融通を始めたが、同社によると、ネックとなるのが電源周波数の違い。西日本地区の60ヘルツに対して東日本地区は50ヘルツ。融通には変換所を通す必要があり、処理能力の関係で、これ以上の供給は難しいという。同社は「九州の需要を予測した上で余剰分を振り向けている。お客さまに節電してもらっても、即座に上乗せとはいかない」と説明する。
政府は財界を通じ、東北や関東の企業の生産を域外に移すよう要望もしたが、九電は「どれほど電力需要が増えるか見通せないが、現状で対応できるのでは」と話す。
ネット上では「直接効果は薄くても、被災者の思いを共有する意味で節電し、その分を義援金にしよう」などの声も高まっている。福岡県須恵町の荒木広子さん(42)は「人ごとのように暮らさず、寒くて何もない被災地の大変さを実感することで、助け合いの気持ちが広がってほしい」と本紙に声を寄せた。
=2011/03/14付 西日本新聞朝刊=