東日本大震災 福島原発に助け船、中国「三一重工」どんな会社? 1億円相当を寄贈、「大キリン」作戦が始まった
3月31日午後、放射能漏れの事故を起こしている東京電力福島第一原子力発電所に1台の大型ポンプ車が到着した。現場で「大キリン」と呼ばれるこのポンプ車は、間もなく1号機への放水を開始した。
アームの全長は62m。ビルの20階に相当する高い場所からピンポイントで放水できるこのポンプ車を無償提供したのが中国の建設機械メーカー「三一重工」だ。本社がある中国内陸部、湖南省長沙市から上海、大阪を経由して約10日をかけて福島に到着した。
東京電力の窮状を察し、創業者の1人でカリスマ会長でもある梁穏根会長の鶴の一声で総額約1億円に相当する支援に乗り出した三一重工。東京電力からの第一報からポンプ車到着までのいきさつ、提供したポンプ車の概要などを同社の日本法人である「三一日本」の陳健会長と川添智弘社長に聞いた。
(聞き手は谷口徹也=日経ビジネスオンライン副編集長)
まずは日本国民の1人として今回のご厚情に深く感謝します。無償提供されたポンプ車はどのようなものですか。
陳 通常は建設現場で生コンクリートの流し込みに使う機械です。折り畳み式のアームに沿ってパイプが設置されていて、車両側から投入した生コンに圧力を加え、ホースの先から放出します。三一重工は、アームの長さが25〜72mの16種類のラインアップを展開しています。
3月17日(木)、東京電力が原子炉への注水を検討しているというニュースを聞いた三一日本の営業担当が、同社に出向いて製品のカタログを渡したのがそもそもの発端です。翌18日(金)に販売代理店を通じて「ポンプ車を購入したい」という意向を聞き、長沙の本社に連絡を取ったのです。
会長の鶴の一声で無償提供を決定
話はすぐ梁穏根会長の耳に入りました。もちろん、会長は福島原発の状況について知っていますから、即座にポンプ車を無償で提供することを決め、日本に送り届ける準備が始まりました。
せっかくならば、72mという最長のアームを持つ機種にしたかったのですが、あいにく完成品は米国の展示会に出品中のものしかなく、そこから日本に運搬するとなると時間がかかってしまう。たまたま本社に62mアームの在庫があったので、それを贈ろうという話になったのです。
原発への注水となると改造が必要なのですか。
陳 生コンを流し込む通常の使い方ならば、ホースの先端は下向きになって切れていればいいのですが、今回のように水を勢いよく飛ばすとなると変更が必要になります。その改造作業をその日のうちに終えて、船積みする港がある上海に出発しました。そこで、陸送と同時並行で通関作業やポンプ車を日本の道路で走らせるための特別な許可申請などを進めました。19日(土)には、東京電力の清水正孝社長名義でお礼状をいただきました。
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