48時間を超える屋内退避に意味はあるのか
4月1日、首相官邸で菅直人総理大臣の記者会見が行なわれた。官邸での会見に一部のフリーランス記者が参加できるようになったのは昨年3月26日。当時の鳩山由紀夫総理大臣の時だ。
それから一年が経つ。しかし、情報公開の基本中の基本である「記者会見の開放」は、いまだに進歩をみせていない。この記者会見に参加できるのは、記者クラブ所属の記者以外では一部の記者に限られているからだ。
記者会見場の椅子は123席ある。そこに参加するフリーランスの記者は約10名。約45分の会見で、質問の機会が回ってくることは稀だ。
記者クラブの記者たちは会見に出席することが仕事になる。しかし、フリーランスの記者にとって、会見に出ることは1円にもならない。むしろ電車賃を使い、原稿を書く時間を割き、他の仕事を断るなどして参加している。はっきりいって経済的には損失のほうが大きい。
それでも彼らは出席する。
質問をするためだ。
記者会見場を後ろから見ていればよくわかる。記者クラブの記者たちは全員が手をあげるわけではない。
一方、フリーランスの記者は間違いなく全員が手をあげる。彼らは記者会見という「公の場」で質問をし、少しでも国民のためになる情報を引き出そうとしているのだ。
しかし、官邸での記者会見で、フリーランスの記者が質問者として指名されることは稀だ。運良く当たったとしても10人に1人。45分間の会見で、全く当たらないこともある。
そんな官邸の会見で、4月1日(エイプリールフール)、私は運良く質問者として指名された。
私が総理に質問したのは福島第一・第二原子力発電所事故への対応である。とりわけ「48時間を超える屋内退避に意味はあるのか」という点について質したつもりだった。
私の質問と菅直人総理の答えは次のようなものだ。
畠山:「20〜30kmの範囲の屋内退避」についてうかがいます。IAEA、米国環境保護庁、フランス、欧州委員会の原子力事故に対する緊急事態対策マニュアルでは、木造建築物では外部被ばくの低減はほとんど期待できない、となっています。
また、「吸入」による内部被ばくを低減する屋内退避についても、許容時間を48時間程度と制限しており、それ以降は事態の収拾により退避措置が解除されるか、避難が決定されるとしています。
すでに3週間近く経ちますが、屋内退避圏内には現在も2万人の方々が残っており、退避圏内であるがゆえに、思うように物資も届かず、非常に不自由な暮らしをされています。
それでもなお、内部被曝の低減も期待できない屋内退避が解除されない理由をお聞かせいただければと思います。
菅総理:避難あるいは退避の判断をする場合には、原子力安全委員会の助言を求め、勿論それ以外の皆さんのいろいろな意見もお聞きをしておりますけれども、基本的にはそうした助言を尊重しながら対応いたしております。
今現在、基本的には20kmまでで安全であるけれども、20〜30km圏は、屋内にいていただく限りは、大丈夫だという、そういう判断の下に、そうしたことをお願いいたしております。
ただ、御指摘のように、安全性の問題と少し別な形で、生活をしていく上で、例えば物資の供給が20〜30kmの間について非常に困難であるとか、そういった問題が生じていることは、私たちも、その状態が生じていること自体は承知をいたしております。
それに対して、それぞれの自治体なり、あるいは対策本部の方で対応もいたしておりますけれども、その問題について、どのような形で対応すべきなのか。これも原子力安全委員会と同時に、社会的な便宜がどうであるかということも含めて、地元自治体ともいろいろ意見交換をいたしている。それが現状です。
私の質問のポイントは次のとおり。
・木造建築物の場合、屋内退避では外部被ばくの低減が期待できない。・吸入による内部被曝の低減についても各国機関は48時間が限度としている。・屋内退避が解除されないため、物資の運搬をためらう業者がいる。そのため屋内退避を強いられている人々の生活はますます困窮する。
外部被ばく、内部被曝ともに危険性がないのであれば、「20km〜30kmの屋内退避」はすぐに解除してもいいはずだ。そしてもし危険があるのなら、屋内退避ではなく退避勧告を発するべきだろう。
そのどちらもせず、住民の方々に不自由を強いる「3週間近い無意味な屋内退避(室内の空気は48時間で入れ替わってしまう)」を続ける理由はなんなのか。
政府は今日も「念のため」と繰り返す。
意味なく不安な気持ちで留め置かれている2万人の方々のためにも、一刻も早い決断をしてほしい。
- 2011.04.02 Saturday
- 記者会見
- 14:11
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- by 畠山理仁