2011年2月14日 7時59分 更新:2月14日 11時54分
【カイロ樋口直樹】ムバラク政権の崩壊で実権を掌握したエジプト軍最高評議会は13日、人民議会(国会)などを解散し、憲法を停止したと発表した。憲法改正委員会を発足させ、改憲案は国民投票で承認を得る。ムバラク前大統領を辞任に追い込んだ国民の民主化要求に応える措置で、新政権発足までの移行期間は今後6カ月間、または次期大統領選などが実施されるまでとした。
軍最高評議会が民政移管への大枠を示したことで、今後は、デモ参加者や野党勢力などの要求を政治プロセスに反映させるための具体策が焦点となる。
昨年11~12月の人民議会選挙では、ムバラク氏率いる与党・国民民主党(NDP)が大勝したが、野党側は不正があったとして選挙のやり直しを求めていた。また、5期約30年に及ぶムバラク政権を支えてきた制度上の問題点として、現憲法に定められた大統領選への厳しい立候補条件などの見直しが喫緊の課題になっている。
今後は、憲法改正委員会の草案に基づく国民投票などを経て、改正憲法下で次期大統領選が行われる見通し。大統領選は今年9月に予定されていたが、軍最高評議会の方針によって、8月に前倒しされる可能性もある。それまでの間は評議会議長のタンタウィ国防相が国家元首を務める。
また、シャフィク首相率いる暫定内閣は13日、ムバラク政権崩壊後初めて閣議を開いた。シャフィク氏は閣議後の記者会見で「内閣の主な関心事は治安の回復だ」と強調。国民生活の正常化に向け、「生活の糧や医療など国民の基本的要求」に応えることや、国民の権利の尊重や汚職対策の強化なども約束した。また、AP通信によると、首相はスレイマン副大統領の進退は軍が決めると述べた。
デモ参加者や野党勢力はこのほか、非常事態令の即時停止や政治犯の釈放、軍事裁判の廃止なども求めている。一方、反政府デモの拠点になってきた首都カイロ中心部のタハリール広場では13日、車の通行が再開されるなど正常化への動きが加速している。
国営放送は12日、検察当局がナジフ前首相、アドリ前内相らの海外渡航を禁止したと報じた。前内相は資産凍結も命じられた。前内相は警官・治安部隊を動員した市民の弾圧を主導したとされ、前首相には汚職の疑惑がもたれている。