科学の悪用:過去80年で国内500件超 サリン事件など

2011年2月13日 9時17分 更新:2月13日 9時43分

 細菌や化学物質、放射性物質など、科学技術の成果を誤用・悪用した事件や事故が、過去80年間に国内で500件以上起きていることが、科学技術振興機構社会技術研究開発センター(東京)の調査で分かった。研究者自身が起こすケースも少なくないことから、センターはこれらをデータベース化し、倫理教育などに活用する方針だ。

 1927年から現在までの新聞記事や白書、警察発表資料、論文などを対象に、CBRNE(シーバーン)と呼ばれる化学物質や放射性物質の悪用・誤用に絡む出来事を抽出。その結果、該当するケースは昨年10月20日現在で計546件あった。物質別内訳は▽化学剤129件▽生物剤・毒物37件▽核・放射性物質85件▽爆発物295件だった。

 オウム真理教事件(93~95年)は、医師や研究者志望の大学院生らが生物兵器やサリンなどの化学兵器を作り、死者22人を含む6000人以上が被害を受けた。医師が職場の電気ポットに毒物のアジ化ナトリウムを入れた事件(98年)、大学の研究者が放射性物質を無断で持ち出し、同僚を被ばくさせた事件(07年)など、研究者自らが事件を起こす場合も多い。

 CBRNE誤用・悪用データベースは、500件以上の事件・事故を発生年代、種類(テロ、事故、紛失など)、手段や状況から検索できるよう整備する。完成後は公開し、倫理教育などに活用するよう大学や研究機関に呼びかける。

 米国や韓国などでは、CBRNEによるテロを防ぐ観点から、研究機関や学会が協力し、研究費支給の可否を決める審査で悪用の危険性も評価している。センターの古川勝久フェローは「日本では科学技術の悪用に対する認識が低い。国民にはデータベースで危険性を知ってもらい、科学界は大学教育などに取り入れて対応すべきだ」と指摘する。【関東晋慈】

 ◇CBRNE(シーバーン)

 化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)、爆発物(Explosive)の頭文字。先進国でのテロ対策からこの概念が生まれた。90年代まで「CBRN」と記述していたが、05年7月のロンドン同時爆破テロなどを踏まえ、Eが加わった。

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